OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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一世一代の大決心だ。
心臓は喉の辺りまでせり上がり、瞳孔は開き切って夏の光がまぶしかった。
──ペル、ペル、聞いて。
──なんですか。
──あのね……もう、もう少ししゃがんで! 意地悪しないで!
──はいはいなんでしょう。
すっとしゃがみ込んだペルからふわりとサンダルウッドの香りがした。
ペルの部屋にいつも焚いてあるこれは深くて甘い。
──あのね、ペル、わたし──
言ってすぐ俯いて、しまったと思ったけど顔を上げられなかった。
だけどしまったと思ったのは俯いてしまったことだけで、一体どんな顔をして、どれだけ驚き、なんと言ってくれるのだろうと楽しみで仕方がなかった。
どきどきと胸は高鳴り心臓は飛び出しそうなのに、それはどこか緊張とはかけ離れていて、不思議な昂揚感だけが胸中をひたしていた。
──ありがとうございます。
顔を上げるとペルの顔がすぐ近くで、高い鼻が私のそれにくっついてしまうかと思ったほどだ。
ペルは切れ長の目をゆっくりと細くして、大きな口もいっぱいに広げて笑っていた。
──ビビ様、私もあなたが大好きですよ。
えっ、と思わず声に出す。
ペルは足を伸ばして立ち上がり、「そろそろ家庭教師の時間では? 先生が来てしまいますよ」と言ってさあさあと私を追いたてた。
その服の裾に追いすがりたくて手を伸ばすも、掴み損ねて中途半端に手が止まる。
──ペル、あの、
──ほら、ビビ様。イガラム様が呼んでいらっしゃる。
ポーチを抜けた玄関口で、イガラムが手を振って私を呼んでいた。
振り返ってペルを見上げてもにこりと笑うだけで、もう何も聞けなかった。
ちがうの、そうじゃなくて、と言いたかったけれど、なにが違うのか、そうじゃなければなんなのか、私にもわからなくてついに言えないままその場を立ち去った。
ぼんやりと授業を受け、お小言を聞き流し、呆れた顔で教師が帰った部屋でカルーと遊んでいたらぼろぼろと涙が止まらなくなって、その日は夕食の前まで泣いた。
その夜、腫れた目のまま浴室へ向かうところでペルとすれ違ったけれど、ペルはいつものように「ごゆっくりと」と笑って頭を下げただけだった。
そのとき、この恋はおわるのだと思った。
いつから始まったのかわからないように、いつのまにかきっと静かにおわるはずだ。
まっすぐで長い廊下をゆったりと遠ざかって行く背中を一度だけ見て、振り切るように風呂場へ駆けこんだ。
いつかおわるならそのときまで大事にしたい。
泣いてまで、惜しいと思った恋なのだから。
*
ひろい、でかい、信じられない、とひとしきりナミさんはひとりで騒いでいた。
ばっと手を広げて叫ぶ彼女は子どもみたいだ。
「あんたの部屋、うちのマンションワンフロアぶんくらいの広さよ!」
「郊外だから……」
「そういう問題じゃ、ない!」
いいなぁいいなぁとしきりにナミさんが言うから、気恥ずかしくて落ち着かない。
ナミさんと一緒にやってきたカヤさんとロビンさんも、物珍しげに家の中を眺めていた。
控えめにノックが響き、家のことを手伝ってもらっている女性が私の友だちのためにお茶とお菓子を持ってきたのには、彼女たちだけでなく私もすこし驚いた。
だってさっき夕食を食べ、今風呂から上がったばかりなのだ。
「お茶はともかく、こんな時間にケーキなんて」
「でも旦那様が」
「えーっうれしい、ありがとうございますいただきまーす!」
ナミさんが歯切れよく礼を言って、気をよくした彼女が部屋を出て行くとナミさんはにっこり笑顔を張り付けたまま私を振り返り、「どうなってんだか」と呟いた。
「想像以上のお嬢様ね」とロビンさんまで追い打ちをかける。
否定するほどのことでもなく我が家が仰々しいのは事実なので、諦めてケーキとお茶の乗ったワゴンをがらがらと部屋の中に引き入れた。
「そういううちが見たいってあなたたちが言ったんじゃないの」
「そうよ、そうだけど、予想以上」
ホットパンツの裾がくるりとめくれているのを指先で直しながら、ナミさんが「楽しい夜ねー」と素直な声で言う。
パジャマパーティーがしたい、とカヤさんが神妙な声で言いださなければ実現しなかった夜の集まりだ。
それならビビの家に行きたいと言い出したのは言わずもがなのナミさんで、みんな自分の寝巻を持ってうちに集まった。
友達を呼ぶわ、と言ったら張り切ったのはイガラムとうちのコックで、それなら夕食もうちで食べろ大浴場も使えと世話を焼くこと仕方なかった。
さっきまで仕事で父もペルもチャカも家を空けていたはずだけど、23時近くなって帰ってきたようだ。
「コーヒーと紅茶があるけどどっちにする?」
「わざわざふたつ淹れてくれたのかしら。お店みたいね」
私コーヒー、じゃあ私は紅茶を、と口々に言ってから、みんな自分の分は自分でカップに注いだ。
ケーキは銀のプレートに小さく切り分けて乗せられていたので、ソファで囲んだローテーブルに置いて取り皿だけ配る。
「夜更けのケーキ、最高ね」
たまらない様子でナミさんが呟くのに対し、カヤさんは背徳感で若干青ざめている。
「ビビさんの家はパティシエまでいるの?」
「まさか。父がお土産に買ってきたんじゃないかしら。あぁそういえば」
「これ」
かぶり気味に呟いたナミさんは、ケーキに落としていた視線を私に向けたかと思えばすぐに決まり悪そうに目を反らした。
あまりに可愛らしいので、つい吹き出してしまう。
「父に言ってあったの。おいしいレストランが、夜遅くまでパティスリーもやってるわって」
「……あそう」
「ここはベイクドチーズが定番人気だって言ってたわね」
ロビンさんがフォークを伸ばし、小さく切り分けた薄茶色のケーキを小皿に乗せた。
「ロビンさん食べたことあるの?」
「前にナミが買ってきてくれてそのときに」
「あら」
あらあらあらとカヤさんとふたりニヤつけば、「うるっさいなぁ」とナミさんはカップで隠すようにコーヒーを飲んだ。
「お酒じゃなくて、こういうのもいいわね」
ロビンさんが一口サイズのチーズケーキでコーヒー一杯をつなぎながら言う。
部屋は甘いにおいで満ちていて、話すみんなの口調もどこかしっとりと甘い。
「そろそろお酒も欲しくなってきた? 買ってあるわよ」
ナミさんが足元のビニール袋をがさりと持ち上げる。
「スーパーで買ってきたのと、あとノジコがなんかいいブランデーうちに置いてったから持って来ちゃった」
「ブランデーなら甘いのにも合うかも」
「ビビ、グラスある?」
「あるある」
酒好きふたりがお酒の気配を前に目に見えてそわそわし始める。
小ぶりのグラスを一応四つ手に取った。
「カヤさんも飲む?」
「あ、私きついのは」
「ビビは?」
「うーんどうしようかなー。私もお酒強くないし」
「紅茶に少し落としてもおいしいわよ」
あ、じゃあ、と言うとすかさず金色の液体がたぷんとほんの数滴私のカップに落とされた。
*
中庭に続く扉をバーンと開け放ち、夜風に身体を放りだすみたいな気持ちで中庭にまろびでた。
バルコニーを支える白い柱に身体を寄せるとひんやりと熱を奪われる。
真上にある部屋から、途切れ途切れにナミさんとロビンさんの声が聞こえた。
ブランデーのボトルはすっかり空になりかけているのに、彼女たちは顔色一つ変わらない。
カヤさんは日付が変わって1時間経ったところでソファのクッションに埋まって眠ってしまった。
雲が多くて蒸し暑い。
庭の植木からうぃんうぃんと得体のしれない虫が鳴いていた。
それなのにお酒の力か楽しい時間の余韻のせいか、浮足立つような気持ちがおさまらない。
「酔っちゃった……」
「随分と楽しそうで」
家の中から聞こえた声に重たい頭を動かす。
一瞬誰の姿も見えなかったけれど、暗がりの中目を凝らすと黒いスーツ姿のままペルが立っていた。
「まだ休んでなかったの?」
「なにかとすることがありまして」
「お父様に言っておくわ、ペルが過労で死んじゃう」
「ご進言ありがたいですが、それよりあなたこそこんな時間まで」
ペルが一歩進みでる。
暗がりには変わりなかったが、中庭の警備灯に照らされてその姿がよく見えるようになった。
「うるさかった?」
「いえ、気になりませんが……ケーキを食べていたのでは?」
「そうよ。あとブランデー」
ペルは一瞬目を丸めてからくしゃくしゃと笑った。
「随分大人な楽しみ方をするようになりましたね」
それには答えず、背を向けて庭先のベンチに腰かけた。
ぬるい夜風がふわふわと頼りなく髪先を揺らす。
「座る? もう行っちゃう?」
「──では、失礼します」
よいしょと跨いでペルが隣に腰かけた。
なんでこんなところにベンチがあるんだろうと、昔からあるそれをちっとも不思議に思っていなかったのに、不意にそんなことが気になった。
「疲れてる?」
「いいえ」
「嘘、こんな時間までお風呂にも入れないのに」
「入ろうと思えば入れましたが、少しダラダラしてしまって」
「ダラダラしてるペルなんて見たことない」
はて、とペルは首をかしげるそぶりをした。
「そうでもありませんよ」
「そうかしら」
ビビ様はご存じでないかもしれませんが、と妙に含みを持たせてペルは言う。
「私はだらけることもありますし」
「へぇ」
「面倒くさがり屋ですし」
「ふぅん」
「そしていくじなしです」
意外にも、とペルはみずから付け足した。
「……根に持ってる?」
「ちっとも」
「うそばっかり」
はははとペルが笑うとサンダルウッドの香りがした。
一日仕事で疲れたその身体から立ちのぼるように、彼の香りは今でも深くて甘い。
こみ上げる何かに耐え切れず、俯いた。
「──こんなの不毛だわ」
おわらせることなんでできなかった。
おわりを大人しく待っていることもできなくて、どうにかしてやりたいのにそう思うことしかできない。
いくじがないのは私だ。
「そうでしょうか」
「ペルが一番わかってるでしょう……!」
「私から身動き取れるはずがないということをあなたもわかっている」
ビビ様、と一言呼んでペルは立ち上がった。
「あまりお友達を放っておいてはいけません。それに夜更かししすぎると疲れますよ」
顔を上げた。
こちらが座っていると、立ち上がったペルの顔はあまりに遠いように思えた。
そうね、と放心して答える。
ためらいなく差し出された手を取って腰を上げたら、不意に強く引かれて足を一歩踏み出した。
ふっと濃くなる香りに脳髄が揺さぶられる。
額の辺りに囁かれた声が頭の奥に染みていく。
「なにを命じるか決めましたか?」
「──まだ」
「そうですか」
唐突にペルが離れた。ふわりとベンチを跨ぎ越し、バルコニーの下の影へさっと入り込む。
「ゆっくりでいいですよ。私はずっとお側にいますから」
おやすみなさいという言葉と一緒にペルの姿が消えると、引き潮みたいに香りも掻き消えた。
こんなことで喜ぶなと自分に言い聞かせながら、パントリーを漁ってとびきり良さそうなお酒を一本部屋に持ち帰った。
ナミさんたちは夜中の3時とは思えない歓声を上げた。
きっと彼にも聞こえたことだろう。
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