OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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カリカチュアの朝1/2/昼1/
この店に寄ると言うと、彼は外で待っていると言った。口ごもって彼を見つめると、不躾とも言える目で「なんだ」と尋ねてくる。
先に行っててもいいわよ、という一言を言い淀んで、結局言わずに店に入った。
小さな生活用品店。背の高い棚には細々と石鹸や歯磨き粉やその他もろもろの必需品が並び、目移りする間もなく私は必要なものをどんどん袋に放り込んだ。
ゾロが待っている、と思うと急ぐ気持ちもあり、私を待つゾロ、というのに心躍るような気持ちもある。
ガラス戸越しに出口の方を見てみると、彼は腕を組んで壁にもたれ大あくびをしたところだった。
折れてしまった櫛の代用品を探して店内を行ったり来たりしながら、あのまま先に行っててもいいと言っていたら彼はどうしただろうと考える。
棚の上を目は滑るだけで、私はずっとそんなことを考えている。
もし彼が本当に行ってしまったら、私は一度店に入るも買い物もそこそこに慌てて彼を追いかけるだろう。だって彼が一人で船に帰れるだなんて私は微塵も信じていない。
とはいえこうして彼を待たせて一人買い物をするというのはとびきり新鮮で、というか慣れなくて、そわそわと落ち着かなかった。
誰かが待っているということに私はまだ慣れていないのだと気付く。
それがゾロであれ、誰であれ。
結局どちらだって同じことだと思う。
私はいつだって落ち着いているふりをして落ち着きがなく、困ったように辺りを見渡してなんとなく周囲に同調する術ばかり上手くなった。
「あ」
手元が狂い、手に取ろうとした木櫛を取りこぼした。
カツンと細い音が鳴り、硬い床を櫛が滑った。
いけない、と下に手を伸ばしたら、向かいから同じように武骨な手が伸びてきて私よりも早くそれを拾った。
「ん」
「ありがとう。退屈した?」
「あぁ」
思ったことを思った通り口にして、彼は真顔で「飽きた」と同じ意味のことを言った。
「貸せ」と彼が手を差し出すので一体何のことかと思えば、私の答えも聞かずに彼は商品の放り込まれた袋を私の手から奪い取った。
「まだ買うのかよ」
「あ、えぇ、あと歯ブラシの予備と、オイルと、ナミに頼まれたリムーバーも探さないと」
ふうん、と彼は子供のようにつぶやいて、私の袋を持ったまま陳列棚の間をすたすたと歩き始めた。
なんとなく後を追う。
「おれも歯ブラシ買いてェ」
「なら一緒に買うから、そこにいれるといいわ」
「どこだ」
こっち、とケア用品の方を指差すが、彼は頷いたくせにすぐ次の角を曲がろうとした。
どういうことなの、と笑いそうになりながら「ちがうわゾロ」とその腕を取る。
腕を引かれて彼は大人しく踵を返した。
大きさの違う歯ブラシを二本袋に入れる。
なんでもないその行為にちらりとなにかしらの意味がよぎって、妙に緊張した。
買う予定の他の品を私が物色し始めると、ゾロは退屈しのぎなのか私のあとをつけてきた。
身体を洗うスポンジを指差して「これはウソップが使ってる」だとか、たくさん並ぶ男性用の整髪料に対して「胸糞悪いにおいがする」だとか(彼はきっとサンジのことを思い出していた)好き勝手コメントするゾロに、私は「えぇ」だとか「そう」だとか答える。
楽しいのかしら、と言う考えが不意に降りてきて、気付いたら「楽しいのかしら」と口に出していた。
「あ?」
「楽しい?」
振り向いてそう尋ねると、ゾロは不可解そうに一瞬眉をすがめて、「いや」と口にする。
「別に」
「なんだ、そうなの」とその答えに肩を落として、私はまた前を向いた。
「楽しくもねぇけど、つまらなくもねェ」
「回りくどい言い方をするのね」
「大人だからな」
驚いて彼をもう一度振り返る。大人だなんて、彼の口から飛び出すとは思わなかった。
彼は何故か顔をしかめて、「言っとくけどな」と妙にハリのある声で言う。
「おめーはいつもおれをガキ扱いしすぎだ」
かつん、とつま先が棚にぶつかる。
陳列棚のよくわからないチューブ状のものがひとつ、ぱたりと横に倒れた。
それをもとに戻しながら、「そんなつもりじゃなかったけれど」と口答えするように私は呟く。
「いや、してる。ガキを見るみてェな目をしやがる」
「気を付けるわ」
「ほれ、それだその顔」
イッと歯を向いて彼が私の顔を指差す。
目を丸めて突きつけられた指先を見下ろすと、彼はフンと息をついて指を下ろした。
「たまには気の抜けた顔の一つでもしてみやがれ」
「そんなまた、難しいこと」
顔の向きを戻して陳列棚を見上げると、一番上に目当てのオイルが並べてあった。
「ゾロ。あれ」
「あ?」
「取って」
ゾロは悩む間もなく手を伸ばしてひょいとそれを取った。
ありがとう、と受け取る。
「頼ってみたけどどうかしら」
「おう、悪くねェな」
偉そうなゾロの口調にふふっと笑み零れた。
案外簡単ね、と口にするとまた大人ぶんなと怒られそうで、私は黙ってオイルをゾロの提げる袋の中に放り込んだ。
ナミのおつかいも無事すませ、会計を終えて外に出るとあんなにも晴れていた空に薄く雲が伸びていた。
日差しがやわらいで、景色の角が取れてほんのりと全体的に丸くなる。
風が吹くと温まった石畳から細かい砂が舞い、足元をさらさらと流れていった。
「買いもんは終わりか」
「えぇ、あとはクリーニングを回収して任務完了」
「わざわざ店で洗うったぁ珍しいな」
「ナミと私の服と、女部屋のカーテンよ。カーテンは珈琲をこぼしてしまったの」
彼が迷わず店を出て右に歩き出したので、私も後に続いた。
クリーニング屋はおそらく左なのだけど、もう何度目かになるかわからない言葉を飲みこんで、ゾロの短く尖った襟足を見つめて追いかける。
「疲れた?」と訊いてみるが、思った通り「まさか」と返ってきた。
よどみない足取りで彼はどこかにあるはずのクリーニング屋へずんずん進んで行く。
地図も何も確認しないのに、背中からは自信が溢れている。
こうしてぐるぐるとあてどなく街を歩いていれば、少しでも最短距離から正反対の時間をかけて歩くことができる。
私は自分がこんなにも意地悪いずるができるだなんて、今の今まで知らなかった。
彼の片手に買い物の荷物を持たせて、空いている方の手を私に貸して欲しいだなんて図々しいことまで考える。
望みはどこまでも果てがなく、欲しいと言えばもしかしたら手に入るのかもしれないけれど、私にはまだ少し遠かった。
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この店に寄ると言うと、彼は外で待っていると言った。口ごもって彼を見つめると、不躾とも言える目で「なんだ」と尋ねてくる。
先に行っててもいいわよ、という一言を言い淀んで、結局言わずに店に入った。
小さな生活用品店。背の高い棚には細々と石鹸や歯磨き粉やその他もろもろの必需品が並び、目移りする間もなく私は必要なものをどんどん袋に放り込んだ。
ゾロが待っている、と思うと急ぐ気持ちもあり、私を待つゾロ、というのに心躍るような気持ちもある。
ガラス戸越しに出口の方を見てみると、彼は腕を組んで壁にもたれ大あくびをしたところだった。
折れてしまった櫛の代用品を探して店内を行ったり来たりしながら、あのまま先に行っててもいいと言っていたら彼はどうしただろうと考える。
棚の上を目は滑るだけで、私はずっとそんなことを考えている。
もし彼が本当に行ってしまったら、私は一度店に入るも買い物もそこそこに慌てて彼を追いかけるだろう。だって彼が一人で船に帰れるだなんて私は微塵も信じていない。
とはいえこうして彼を待たせて一人買い物をするというのはとびきり新鮮で、というか慣れなくて、そわそわと落ち着かなかった。
誰かが待っているということに私はまだ慣れていないのだと気付く。
それがゾロであれ、誰であれ。
結局どちらだって同じことだと思う。
私はいつだって落ち着いているふりをして落ち着きがなく、困ったように辺りを見渡してなんとなく周囲に同調する術ばかり上手くなった。
「あ」
手元が狂い、手に取ろうとした木櫛を取りこぼした。
カツンと細い音が鳴り、硬い床を櫛が滑った。
いけない、と下に手を伸ばしたら、向かいから同じように武骨な手が伸びてきて私よりも早くそれを拾った。
「ん」
「ありがとう。退屈した?」
「あぁ」
思ったことを思った通り口にして、彼は真顔で「飽きた」と同じ意味のことを言った。
「貸せ」と彼が手を差し出すので一体何のことかと思えば、私の答えも聞かずに彼は商品の放り込まれた袋を私の手から奪い取った。
「まだ買うのかよ」
「あ、えぇ、あと歯ブラシの予備と、オイルと、ナミに頼まれたリムーバーも探さないと」
ふうん、と彼は子供のようにつぶやいて、私の袋を持ったまま陳列棚の間をすたすたと歩き始めた。
なんとなく後を追う。
「おれも歯ブラシ買いてェ」
「なら一緒に買うから、そこにいれるといいわ」
「どこだ」
こっち、とケア用品の方を指差すが、彼は頷いたくせにすぐ次の角を曲がろうとした。
どういうことなの、と笑いそうになりながら「ちがうわゾロ」とその腕を取る。
腕を引かれて彼は大人しく踵を返した。
大きさの違う歯ブラシを二本袋に入れる。
なんでもないその行為にちらりとなにかしらの意味がよぎって、妙に緊張した。
買う予定の他の品を私が物色し始めると、ゾロは退屈しのぎなのか私のあとをつけてきた。
身体を洗うスポンジを指差して「これはウソップが使ってる」だとか、たくさん並ぶ男性用の整髪料に対して「胸糞悪いにおいがする」だとか(彼はきっとサンジのことを思い出していた)好き勝手コメントするゾロに、私は「えぇ」だとか「そう」だとか答える。
楽しいのかしら、と言う考えが不意に降りてきて、気付いたら「楽しいのかしら」と口に出していた。
「あ?」
「楽しい?」
振り向いてそう尋ねると、ゾロは不可解そうに一瞬眉をすがめて、「いや」と口にする。
「別に」
「なんだ、そうなの」とその答えに肩を落として、私はまた前を向いた。
「楽しくもねぇけど、つまらなくもねェ」
「回りくどい言い方をするのね」
「大人だからな」
驚いて彼をもう一度振り返る。大人だなんて、彼の口から飛び出すとは思わなかった。
彼は何故か顔をしかめて、「言っとくけどな」と妙にハリのある声で言う。
「おめーはいつもおれをガキ扱いしすぎだ」
かつん、とつま先が棚にぶつかる。
陳列棚のよくわからないチューブ状のものがひとつ、ぱたりと横に倒れた。
それをもとに戻しながら、「そんなつもりじゃなかったけれど」と口答えするように私は呟く。
「いや、してる。ガキを見るみてェな目をしやがる」
「気を付けるわ」
「ほれ、それだその顔」
イッと歯を向いて彼が私の顔を指差す。
目を丸めて突きつけられた指先を見下ろすと、彼はフンと息をついて指を下ろした。
「たまには気の抜けた顔の一つでもしてみやがれ」
「そんなまた、難しいこと」
顔の向きを戻して陳列棚を見上げると、一番上に目当てのオイルが並べてあった。
「ゾロ。あれ」
「あ?」
「取って」
ゾロは悩む間もなく手を伸ばしてひょいとそれを取った。
ありがとう、と受け取る。
「頼ってみたけどどうかしら」
「おう、悪くねェな」
偉そうなゾロの口調にふふっと笑み零れた。
案外簡単ね、と口にするとまた大人ぶんなと怒られそうで、私は黙ってオイルをゾロの提げる袋の中に放り込んだ。
ナミのおつかいも無事すませ、会計を終えて外に出るとあんなにも晴れていた空に薄く雲が伸びていた。
日差しがやわらいで、景色の角が取れてほんのりと全体的に丸くなる。
風が吹くと温まった石畳から細かい砂が舞い、足元をさらさらと流れていった。
「買いもんは終わりか」
「えぇ、あとはクリーニングを回収して任務完了」
「わざわざ店で洗うったぁ珍しいな」
「ナミと私の服と、女部屋のカーテンよ。カーテンは珈琲をこぼしてしまったの」
彼が迷わず店を出て右に歩き出したので、私も後に続いた。
クリーニング屋はおそらく左なのだけど、もう何度目かになるかわからない言葉を飲みこんで、ゾロの短く尖った襟足を見つめて追いかける。
「疲れた?」と訊いてみるが、思った通り「まさか」と返ってきた。
よどみない足取りで彼はどこかにあるはずのクリーニング屋へずんずん進んで行く。
地図も何も確認しないのに、背中からは自信が溢れている。
こうしてぐるぐるとあてどなく街を歩いていれば、少しでも最短距離から正反対の時間をかけて歩くことができる。
私は自分がこんなにも意地悪いずるができるだなんて、今の今まで知らなかった。
彼の片手に買い物の荷物を持たせて、空いている方の手を私に貸して欲しいだなんて図々しいことまで考える。
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