OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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カリカチュアの朝1/2/昼1/2
※R-18
「迷った?」と訊いてみると、打って響くように「いや」と返される。
「だがここァどこだ」
「それ、迷ったって言うのじゃないかしら」
私たちはまたもや見知らぬ港町の見知らぬ路地にたたずんでいた。
あらぬ方向へ足を向ける彼を止めなかったのは私の意思で、とはいえクリーニングに衣類を預けてくれたのはナミだったので私も店の場所を確かに知っているわけではなく、彼よりは多少目星がつく程度だ。
思惑通りと言ってしまえば角が立つけれど、思惑通り、私たちは必要以上に街を歩き、薄暗く人通りも少ない路地へと迷い込んでいた。
メインストリートの祭囃子はどこか遠くへ伸びて消えてしまった。ここは港町によくある昼間の歓楽街のようだ。
薄いピンクの汚れた壁、石畳の目にびっしりと詰まる煙草の吸殻、明かりの灯らない剥き出しのネオン。
いつから酔いがさめていないのだろうというような酔っ払いの男が私たちをじろじろと無遠慮に眺めながら通り過ぎ、にやにや笑って背後から何か聞き取れない下品な言葉を叫んだ。
ゾロは男には目もくれず、がしがしと頭を掻いて「なんかここらへんにゃ店はなさそうだな」と口をひん曲げた。
「そうね、戻る?」
「あぁ」
歓楽街の入り口には大きなアーチが建っていて、夜になればぺかぺかとネオンで照らされるのだろうけど、少なくともそこが出入り口なのだとわかるようにはなっている。
私たちがくぐって来たアーチへ足を向けると、背後からばたばたと複数の足音が聞こえてきた。
「なんだありゃ」
ゾロが騒ぎの方を振り返り、怪訝そうに眉をすがめる。
私も振り返ると、「追えー!」「待てー!」とまるで寸劇みたいに男たちが手に持つ警棒を振り上げて走ってきた。
先頭にはひとり、必死の形相で追われている男がいる。
「なんだ物騒だな」
「他人事じゃないわゾロ、あれ海軍よ」
こっち、と彼の腕を引っ張って細い路地裏に滑り込む。
とばっちりの火の粉がふりかからないともかぎらなかった。ゾロも私も顔が割れている。
こちらへ向かってくる海軍から見えないところへいかなければ、と咄嗟に入り込んだはいいものの、路地裏は歓楽街の飲食店や宿場のゴミ捨て場と化していて、足を踏み入れた瞬間鋭い悪臭が鼻を突き抜けた。
「う、くっせェ」
「ひどい場所」
買ったばかりのスニーカーと包帯を巻いた足でゴミ袋を踏みしめて奥へと進む。
人ひとりがやっと通れるような壁と壁に挟まれて悪臭は逃げ場がなくもったりとそこに淀んでいた。
壁に手をついて先に進もうとしたら、「待て」と手を引かれた。
「動くな」
振り返ると、ゾロが足元のゴミ袋を二つ、来た道の方へ蹴り上げて積み上げた。
「しゃがめ」
言われたのとほぼ同時にしゃがみこむ。
荒々しいべた足の足音が私たちのいたところまでやってきて、こちらを覗き込んでいる気配があった。
どうやら追われていた男も私たちと同じように路地裏へ逃げ込んだらしい。
私たちの姿は、ゾロが積みあげたゴミ袋が壁になって見えないはずだ。
しゃがみ込んだ足元をネズミが走って行った。
やがて人の気配が遠のき、ゾロが「行ったか」と顔を上げる。
「待って、確認するわ」
目を閉じて表の路地に目を咲かしてみると、未だ歓楽街では泥棒だか海賊だか知らないが、あの男を探しているようだった。
ただしこの路地の近くにはいない。ゾロがゴミ袋を積み上げたおかげで、ここは行き止まりだと判断されたらしい。
「この辺りにはまだいるわね。少し様子を見て飛び出した方がいいかもしれない」
「早く出てェ」
しゃがみ込んだ私たちは膝と膝を突き合わせて向かい合っていた。
悪臭で鼻に皺を寄せたゾロの顔がすぐ間近にあり、ともすると彼の息まで感じられそうだった。
ということは彼にとっても同じ距離だということで、とても近い、とその通りのことを思う。
「まだか」
「もう少し」
「テメェよく平気だな」
「あら平気なわけないじゃない、いやよこんな場所」
「ナミならもっとぎゃーぎゃーうるせぇ」
いやー汚い、やだねずみ! ちょっと私を背負いなさいよこんなところ靴が汚れちゃう! と騒ぐ彼女の姿が容易に目に浮かび、笑ってしまう。
「あの子ほど可愛くなれないの」と言うと、ゾロは「面倒がなくてちょうどいい」とぶっきらぼうに言い捨てた。
「いいのか、足」
「え?」
「包帯、汚れてやがる」
「あぁ、えぇ平気よ。痛みは少ないし、汚れくらい」
不意にゾロが手を伸ばし、私の足首に触れた。
突然のことに驚いて身をすくめると、バランスを崩して後ろに倒れ込みそうになった。
咄嗟にゾロが反対の手を伸ばし、私の背中を受け止める。
足首と背中に彼の手を感じ、その瞬間脈拍が走り出す。海軍から逃げる時以上に息を詰め、やっとのことで「なに」と絞り出した。
「チョッパーが熱持ってるっつってだろ。熱いのかと思って」
「そ、んな好奇心で急に触らないで頂戴……」
ゾロが顔を上げた。至近距離で目が合う。
覗き込むように視線で掬い上げられて、目を逸らすことができない。
「熱いな」
ぎゅ、と軽く足首を握られた。
ほのかな痛みが走り、顔をしかめるより早く唇が触れた。
背中に回った手に力がこもり、引き寄せられる。
薄く目を開けると視界はぼんやりとかすんで、薄暗さの中ゾロの顔すら見えなかった。
重なっていただけの唇がじれったく、薄く唇を開いた。応えるように舌が唇に触れるも、ほんの少し舐めるように動いただけですぐに離れた。
ゾロ、と頼りない声で囁くとゾロは険しい真顔で「静かにしろ」と言った。
「こんなところで呑気にやってる場合じゃねェだろ」
「あなたからしたくせに」
「しょうがねぇだろ」
鼻先が触れ合う。
一体何がしょうがないのか、聞く間もなくゾロが「そろそろいいだろ」と短く言った。
「そうね、行ったみたい」
「畜生、巻き込みやがって悪党が」
よっぽどあなたの方が悪党的な顔をしている、と思ったけれど言わなかった。
ゾロは立ち上がり、足元のゴミ袋を蹴散らしてから私の腕を引いて引き上げた。
ぐんと身体が持ち上がり、勢いよく立ちあがった、
が、踏みしめたはずの地面は有象無象のゴミが転がっていて、それらにひっかかった私の脚はたたらを踏んで立ち上がった勢いのまま真正面からゾロにぶつかった。
「うお」
ゾロが小さくよろめく。彼が後ろに一歩引いた足で踏みとどまってくれるはずだった。普通なら。
しかし後ろには積み上げたゴミ袋があり、ゾロの引いた踵が袋にぶつかったのか大仰にがさっと音が鳴った。
「うお、ちょ、待っ……」
彼が背後に倒れていく。洩れなく私も。
珍しく焦った彼の顔を間近で見ながら、いけない、と思った。
ビニール袋とその中身がぶつかり合い、ばしゃんと大きな音を立てて崩れ落ちた。
その中心にゾロと私が折れ重なって倒れ込む。
比較にならない悪臭が、自分たちから瞬間的に立ち上った。
液状化した生ごみが下から染みだしている。
「く、くっそ……最悪だ」
「ひどいわね」
「ひどいわね、じゃねーだろうが! お前だけおれの上に乗って助かりやがって」
背中が冷たェ、と心底嫌そうな顔で、ゾロは私を乗せたまま上体を起こした。
くせぇ、きたねぇ、ともどかしそうに自分の身体を見渡している。
と、どこかに消えたはずの足音がまた近づいてくる。地面が揺れるように感じた。
「戻って来たわ」
「こんだけ大騒ぎすりゃあ聞こえちまうだろうよ、ったく」
最悪だ、と再び彼はいい、素早く立ち上がると同時に私を左脇に抱え込んだ。
「え」
「落とされんなよ」
ゾロは四つ足の獣のように散乱したゴミ袋を一足とびに跨ぎ越し、一気に路地裏を走り抜けて表へ飛び出した。
急に視界が明るくなり、ぎゅっと目を閉じる。
次に開くと、左右から先程の海軍たちがこちらに走ってくるところだった。
ち、と癖のように舌を打ってゾロは左へ走り出す。
真正面と背後から追ってくる海軍は私たちの正体に気付き始めたようで、ちらほら名前を呼ばれるのが聞こえてきた。
「ゾロ、どこに」
「いいから大人しく担がれてろ」
丸太のように抱えられてうつ伏せになった私の右側で、ひらりと刀の身頃が閃く。
音もなく刀を抜いた彼は、真正面の敵の中をつむじ風のように通り過ぎて、そして斬っていた。
キン、と最後にひとつ鋭い音をたて、刀は何事もなかったかのように彼の右腰に収まった。
彼は止まらず走り続ける。
「ゾロ、キリがないわ、まだ追ってくる」
「んじゃあどこいきゃいいんだ。全員のしちまうか」
「それでもいいけど」
少し考えて、私たちのすぐ背後に大量の腕を咲かせて壁を作った。
どよめきが一瞬聞こえるも、すぐにその壁に遮られて小さくなる。
「そこに入って」
そばにあった建物を咄嗟に指差す。
ゾロは迷わず駆けこんだ。
壁とはいえ私の腕であることに変わりはないので、撃たれたり斬られたりしてはたまらない、とすぐに散らした。
宿場は開いたばかりのようで、けだるそうに開店の準備をしていた宿の主人が飛びこんできた汚い二人組を見てぎょっと目を瞠った。
「部屋あいてるか」
「あ、あぁ、どの部屋が」
「どこでもいい、早く鍵よこせ!」
ゾロの気迫に押されて主人が慌てて小部屋に引っ込み、受付の窓から鍵をこちらに投げてよこした。
受け取ったゾロが大股で奥の廊下を進み、階段を駆けあがる。
「ゾロ、部屋番号は」
「301」
「3階ね、右よ」
案内表示の通り指示を出す。
階段の一番近くにその部屋はあり、ゾロは私を抱えたまま飛び込んですぐさま後ろ手に鍵を閉めた。
激しい呼吸に、担がれる私もろとも揺れる。
「下ろして、ゾロ」
思い出したように彼は私を離した。
床に降り立ち、すぐさま小さな窓のカーテンを閉める。隙間から外の様子を見下ろすと、未だあの制服の何人かが通りを走っていた。
「しばらくは隠れられるだろ」
未だ整わない息のまま、ゾロが腰に手をあてて言う。
「そうね。ここの主人がお金でも積まれて口を割らなければ」
「あぁ、じゃあ口封じでもしてくるか」
ちょっと待ってろ、と言いゾロは部屋を出ていった。
こちらに向けた背中はぐっしょりと耐えがたい生ごみの汚れで濡れていて、申し訳ない気持ちになる。
大丈夫かしら、と思うも、意外と早くゾロは戻ってきてすぐにまた鍵を閉めた。
「大丈夫?」
「あぁ」
具体的に何をどうしたのかわからないが、訊くのもためらわれて結局何も言わなかった。
思い出したように悪臭が部屋に立ち込めてくる。
はー、と長い息をついて、彼も不快そうに自分のにおいを嗅いでいた。
「とりあえず風呂入りてェ」
「そうね、服も洗った方がいいわ」
「着替えがねぇな」
「外が落ち着いたら私が買ってくるわ」
多少変装して出る必要があるだろう。大通りの方へ戻ってしまえば、今日は特に祭りの様なので人ごみに紛れてしまえるだろう。
ゾロはその場で上に消えていたシャツをもぎ取るように脱ぎ、「風呂場はここか」とそれらしき扉を開けた。
「湯が張ってある」
「え」
彼の背後から覗き込むように風呂場を見ると、脱衣所の向こうでなんと浴槽が暖かく湯気を立てている。
浴槽があることにも驚いたが、空いたばかりの宿屋で既に湯が張られているというのはよくわからない。
「不思議。なぜ?」
「そういう店だからじゃねェのか」
「──成程」
ようするにここは娼婦たちの仕事場なのだ。てっとり早く客を洗ってことに運べるように、全室温かい湯が初めから張ってあるのかもしれない。
「知らなかった。面白いわね」
「どっちにしろありがてェ」
ゾロが浴室の床に脱いだシャツを放り投げたので、私は部屋に戻った。
換気扇を回して、少しでも悪臭を外に掻きだす。
靴を脱ぎ、床に直接座り込んだ。汚れた包帯をとってごみ箱に捨てた。
チョッパーが巻いてくれたテーピングは外してしまうと自分では元に戻せないので、そのままにしておく。
キャミソールを引き上げて鼻に近付ける。彼ほどではないけれどやっぱり少し匂いは移っている。
パンツの裾には生ごみが飛び跳ねただろうし、洗わなければならない。
ぐるりと部屋を見渡した。
薄いベージュの安っぽい壁紙。天井近くはひび割れて、お粗末にも飾ってある絵画は傾いていた。
ベッドは部屋の真ん中にどんと一つあるだけで、それ以外の家具はなにもない。ローテーブルの一つすらなく、ただ狭い通路がベッドの足元にあるだけだ。
勿論椅子もないので汚れた身体ではこうして床に座るしかなく、床は硬くて冷たかった。
「おい」
突然ひょこりと脱衣所からゾロが顔を出す。
そちらに目を遣ると、「入るか」と真顔で訊かれる。
「えぇ。早いわね」
「おれぁまだだ。先にシャツ洗った」
「そうなの。じゃあ先入って頂戴。後でいいわ」
ゾロは少し考えるようにどこかに視線をやると、また私の目をまっすぐに見た。
「言っとくけどな、おめーも結構におうぞ」
「まぁ」
わざとらしく目を丸めてみせると、ゾロは顎でしゃくって風呂場を示す。
「来い、さっさと洗っちまえ」
えぇ、と戸惑いながら立ち上がる。
風呂場へ行くと、ゾロは浴室の真ん中で洗ったシャツをぎゅっと絞っていた。
ぼたぼたと激しい水音が響く。
「そのズボンも洗わなきゃ」
「今から洗う」
「なら私は後でいいと」
ん、と唐突にゾロが手招く。
珍しい仕草に少し驚きながら、ついふらりと近寄ったらぐいと腰を引き寄せられた。
「こんなおあつらえ向きの場所でひとりで入れってか」
首筋に唇をつけて囁かれる。
う、と呻きそうになりながら彼の肩にしがみついた。
「そんな、場合じゃないでしょう」
「硬ェこと言うな。おら」
キャミソールをめくりあげられ、あっというまに剥かれてしまった。
「ちょっと」と声をあげるも同時に下着を外され、取り去られた。
「ゾロ、待って」
「うるせぇな」
「先にシャワー浴びて頂戴。あなたこそ、すごくにおうんだもの」
顔を上げたゾロはむっと顔をしかめて、なにか言い募ろうと口を開いたが事実その通りだと思ったのか、「仕方ねェな」と納得しない顔で呟いた。
ゾロは私の腰を抱いたまま浴室に入った。
そしてシャワーコックを掴むので、えっと私は声をあげる。
「待ってゾロ私まだ」
「どうせ洗うんだろ」
頭上から、ざっと水が降る。
その冷たさに首をすくめたが、徐々に水は熱いお湯へと変わって行く。その温度変化に鳥肌が立った。
濡れた髪が頬に、肩に、首筋に張り付く。
顔を流れる水が目に入り、ぎゅっと目を瞑る。
そして開くと少し下方でゾロが顔を撫で上げたところだった。
不意に後頭部に手が回り、引き寄せられて唇が重なる。
私たちの頭上からひっきりなしに降り注ぐお湯が口の中に入り、それすら飲み込むみたいにぬるりと触れた。
「ん」
責めたてるみたいに追い込んでくる舌から、逃げるつもりもないのに上体が後ろに沿っていく。
その度に私の後頭部を支える手に力が加わり、頭を引き戻される。
反対の手がパンツの後ろから無理やり侵入して来て、丸みに沿って指が動く。
目を開けるとすかさず水が目に入り、水彩画に水をぶちまけたみたいな歪んだ景色しか見えない。
浴室に立ち込める蒸気が身体を熱して、頭の中までその蒸気で蒸されてしまったみたいにぼんやりとする。
肩に置いていた手を滑らせてこちらからも彼の腰を引き寄せると、張りつめた筋肉に力が加わったのがわかってどきりとした。
唐突に彼が湯を止めた。ぎゅ、とコックを回した音がやけに大きく響く。
それを合図に唇が離れ、なぜかほっとした。
厚くて硬い親指が私の頬を辿り唇を拭うように撫で、首筋を通り過ぎて肩を掴む。
すぐそこに彼の耳が見えて、ふと思いつきで咥えた。
「おい」
「ふふ」
耳のくぼみに舌をあてがう。
思いのほか彼の反応がなくて、つまらないと思ったのも束の間、ざっとパンツを下着ごと下ろされた。
「や、ちょっ」
「濡れてっと気持ち悪ィだろ」
「脱ぐ間もなく濡らしたのはあなたじゃな、あ」
鷲掴むように臀部を持ち上げられる。鎖骨から胸の中心に向かって舌が這う。
よろめいてたたらを踏むと、足元の水がパシャンと跳ねて室内に響いた。
でもそれよりも、私たちの息の方がずっと強く響いている。
背後に回った手が臀部の丸みに沿って動き、後ろから熱い場所に触れた。
なんのひっかかりもなく、指が一本ぬるっと入り込む。
「ああ、いや」
「準備万端じゃねェか」
掻きだすように出し入れされると膝が震えた。
しがみつく指すら痺れるみたいにじんじんして、「ゾロ、だめ、やめて」と懇願する。
下から胸を持ち上げられて、指で先端を弾かれる。そのたびに「だめ、やめて」と繰り返した。
答えは返ってこず、代わりに最初のものより数倍優しく唇が重なった。
無言で水音だけのキスが続く。
脚を辿って水ではないとろみを帯びた粘膜が落ちていく。私の鼓動に従って、どくどくと流れていくようだった。
「はぁ、脚が、疲れたわ」
「ばか言え、しっかり立ってろ」
片手で彼がハーフパンツを下へ落とした。手を伸ばすと硬いものに触れた。そのまま辿るように動かすが、すぐに手首を掴まれる。
「いい、しなくて」
「でも」
いいから、というように手を払われて、代わりにすぐ脚の間にあてがわれる。
そのまま押されるように壁際に詰め寄られ、冷たいタイルに背中が触れた。
熱した身体が一瞬で冷やされて、でも今度は応戦するように触れたタイルが熱くなっていくのがわかる。
おもむろにぐいと左足を持ち上げられた。
「や、ゾ」
なぞるように出入り口をこすられる。それも一瞬で、あっという間に飲みこまれるみたいに入ってきた。
一気に、頭のてっぺんまで脊髄を伝って電気が走る。
はっと浅い呼吸が漏れ、つかみどころのないタイルに手を這わせるとぺたんと頼りない音が鳴った。
奥の方まで一度で入ってきて、ゾロは私の肩に額を預けて深く息をついた。
動いてもいないのに、あぁと声が漏れる。
突然、ずっと引き抜かれた。
「あっ」
「はー、くそ」
ゾロは私の肩にこめかみの辺りをあて、力を抜いて寄りかかる。
思うままに彼の髪に触れると、短い毛から細かい水が跳ねた。
「ゾロ?」
「なんでもねェ」
頭を上げたゾロは、もう一度私の足を持ち上げて、今度こそ最奥まで一気に突き上げた。
「あぁっ」
く、と歯を噛み締める声が顔のすぐそばで聞こえる。
引き抜かれて次に突き上げられるたび、どんどん奥に当たる気がする。
そのたびに洩れる声が低い天井に当たり、反響して私たちの上に降ってきた。
彼の肩にしがみつき、遠慮なく響く声をふるえる手で押しとどめるように口元に当てた。
気付いたゾロが空いている方の手で私の腕を強く押さえ、呆気なく口元から離れてしまう。
「や、あぁ」
「は、口元、押さえんな」
遮るものなく飛び出した声を、ゾロは愉しむみたいに見えた。
彼の息遣いに耳を澄ますも、そんな余裕はとうになく、あっという間に何もかも訳が分からなくなる。
何をしにここに来たのか、どうして二人でこんなことをしているのか、そのすべてが他愛もない些事に思われて、一瞬ですべて真っ白に塗りつぶされた。
ただここにゾロがいて、私に触れて、そのせいで眉間にしわを寄せ、荒い息を吐いている。
ぐっと胸が押しつぶされて、光みたいな火花みたいな細かい粒が頭の奥の方で弾けた。
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※R-18
「迷った?」と訊いてみると、打って響くように「いや」と返される。
「だがここァどこだ」
「それ、迷ったって言うのじゃないかしら」
私たちはまたもや見知らぬ港町の見知らぬ路地にたたずんでいた。
あらぬ方向へ足を向ける彼を止めなかったのは私の意思で、とはいえクリーニングに衣類を預けてくれたのはナミだったので私も店の場所を確かに知っているわけではなく、彼よりは多少目星がつく程度だ。
思惑通りと言ってしまえば角が立つけれど、思惑通り、私たちは必要以上に街を歩き、薄暗く人通りも少ない路地へと迷い込んでいた。
メインストリートの祭囃子はどこか遠くへ伸びて消えてしまった。ここは港町によくある昼間の歓楽街のようだ。
薄いピンクの汚れた壁、石畳の目にびっしりと詰まる煙草の吸殻、明かりの灯らない剥き出しのネオン。
いつから酔いがさめていないのだろうというような酔っ払いの男が私たちをじろじろと無遠慮に眺めながら通り過ぎ、にやにや笑って背後から何か聞き取れない下品な言葉を叫んだ。
ゾロは男には目もくれず、がしがしと頭を掻いて「なんかここらへんにゃ店はなさそうだな」と口をひん曲げた。
「そうね、戻る?」
「あぁ」
歓楽街の入り口には大きなアーチが建っていて、夜になればぺかぺかとネオンで照らされるのだろうけど、少なくともそこが出入り口なのだとわかるようにはなっている。
私たちがくぐって来たアーチへ足を向けると、背後からばたばたと複数の足音が聞こえてきた。
「なんだありゃ」
ゾロが騒ぎの方を振り返り、怪訝そうに眉をすがめる。
私も振り返ると、「追えー!」「待てー!」とまるで寸劇みたいに男たちが手に持つ警棒を振り上げて走ってきた。
先頭にはひとり、必死の形相で追われている男がいる。
「なんだ物騒だな」
「他人事じゃないわゾロ、あれ海軍よ」
こっち、と彼の腕を引っ張って細い路地裏に滑り込む。
とばっちりの火の粉がふりかからないともかぎらなかった。ゾロも私も顔が割れている。
こちらへ向かってくる海軍から見えないところへいかなければ、と咄嗟に入り込んだはいいものの、路地裏は歓楽街の飲食店や宿場のゴミ捨て場と化していて、足を踏み入れた瞬間鋭い悪臭が鼻を突き抜けた。
「う、くっせェ」
「ひどい場所」
買ったばかりのスニーカーと包帯を巻いた足でゴミ袋を踏みしめて奥へと進む。
人ひとりがやっと通れるような壁と壁に挟まれて悪臭は逃げ場がなくもったりとそこに淀んでいた。
壁に手をついて先に進もうとしたら、「待て」と手を引かれた。
「動くな」
振り返ると、ゾロが足元のゴミ袋を二つ、来た道の方へ蹴り上げて積み上げた。
「しゃがめ」
言われたのとほぼ同時にしゃがみこむ。
荒々しいべた足の足音が私たちのいたところまでやってきて、こちらを覗き込んでいる気配があった。
どうやら追われていた男も私たちと同じように路地裏へ逃げ込んだらしい。
私たちの姿は、ゾロが積みあげたゴミ袋が壁になって見えないはずだ。
しゃがみ込んだ足元をネズミが走って行った。
やがて人の気配が遠のき、ゾロが「行ったか」と顔を上げる。
「待って、確認するわ」
目を閉じて表の路地に目を咲かしてみると、未だ歓楽街では泥棒だか海賊だか知らないが、あの男を探しているようだった。
ただしこの路地の近くにはいない。ゾロがゴミ袋を積み上げたおかげで、ここは行き止まりだと判断されたらしい。
「この辺りにはまだいるわね。少し様子を見て飛び出した方がいいかもしれない」
「早く出てェ」
しゃがみ込んだ私たちは膝と膝を突き合わせて向かい合っていた。
悪臭で鼻に皺を寄せたゾロの顔がすぐ間近にあり、ともすると彼の息まで感じられそうだった。
ということは彼にとっても同じ距離だということで、とても近い、とその通りのことを思う。
「まだか」
「もう少し」
「テメェよく平気だな」
「あら平気なわけないじゃない、いやよこんな場所」
「ナミならもっとぎゃーぎゃーうるせぇ」
いやー汚い、やだねずみ! ちょっと私を背負いなさいよこんなところ靴が汚れちゃう! と騒ぐ彼女の姿が容易に目に浮かび、笑ってしまう。
「あの子ほど可愛くなれないの」と言うと、ゾロは「面倒がなくてちょうどいい」とぶっきらぼうに言い捨てた。
「いいのか、足」
「え?」
「包帯、汚れてやがる」
「あぁ、えぇ平気よ。痛みは少ないし、汚れくらい」
不意にゾロが手を伸ばし、私の足首に触れた。
突然のことに驚いて身をすくめると、バランスを崩して後ろに倒れ込みそうになった。
咄嗟にゾロが反対の手を伸ばし、私の背中を受け止める。
足首と背中に彼の手を感じ、その瞬間脈拍が走り出す。海軍から逃げる時以上に息を詰め、やっとのことで「なに」と絞り出した。
「チョッパーが熱持ってるっつってだろ。熱いのかと思って」
「そ、んな好奇心で急に触らないで頂戴……」
ゾロが顔を上げた。至近距離で目が合う。
覗き込むように視線で掬い上げられて、目を逸らすことができない。
「熱いな」
ぎゅ、と軽く足首を握られた。
ほのかな痛みが走り、顔をしかめるより早く唇が触れた。
背中に回った手に力がこもり、引き寄せられる。
薄く目を開けると視界はぼんやりとかすんで、薄暗さの中ゾロの顔すら見えなかった。
重なっていただけの唇がじれったく、薄く唇を開いた。応えるように舌が唇に触れるも、ほんの少し舐めるように動いただけですぐに離れた。
ゾロ、と頼りない声で囁くとゾロは険しい真顔で「静かにしろ」と言った。
「こんなところで呑気にやってる場合じゃねェだろ」
「あなたからしたくせに」
「しょうがねぇだろ」
鼻先が触れ合う。
一体何がしょうがないのか、聞く間もなくゾロが「そろそろいいだろ」と短く言った。
「そうね、行ったみたい」
「畜生、巻き込みやがって悪党が」
よっぽどあなたの方が悪党的な顔をしている、と思ったけれど言わなかった。
ゾロは立ち上がり、足元のゴミ袋を蹴散らしてから私の腕を引いて引き上げた。
ぐんと身体が持ち上がり、勢いよく立ちあがった、
が、踏みしめたはずの地面は有象無象のゴミが転がっていて、それらにひっかかった私の脚はたたらを踏んで立ち上がった勢いのまま真正面からゾロにぶつかった。
「うお」
ゾロが小さくよろめく。彼が後ろに一歩引いた足で踏みとどまってくれるはずだった。普通なら。
しかし後ろには積み上げたゴミ袋があり、ゾロの引いた踵が袋にぶつかったのか大仰にがさっと音が鳴った。
「うお、ちょ、待っ……」
彼が背後に倒れていく。洩れなく私も。
珍しく焦った彼の顔を間近で見ながら、いけない、と思った。
ビニール袋とその中身がぶつかり合い、ばしゃんと大きな音を立てて崩れ落ちた。
その中心にゾロと私が折れ重なって倒れ込む。
比較にならない悪臭が、自分たちから瞬間的に立ち上った。
液状化した生ごみが下から染みだしている。
「く、くっそ……最悪だ」
「ひどいわね」
「ひどいわね、じゃねーだろうが! お前だけおれの上に乗って助かりやがって」
背中が冷たェ、と心底嫌そうな顔で、ゾロは私を乗せたまま上体を起こした。
くせぇ、きたねぇ、ともどかしそうに自分の身体を見渡している。
と、どこかに消えたはずの足音がまた近づいてくる。地面が揺れるように感じた。
「戻って来たわ」
「こんだけ大騒ぎすりゃあ聞こえちまうだろうよ、ったく」
最悪だ、と再び彼はいい、素早く立ち上がると同時に私を左脇に抱え込んだ。
「え」
「落とされんなよ」
ゾロは四つ足の獣のように散乱したゴミ袋を一足とびに跨ぎ越し、一気に路地裏を走り抜けて表へ飛び出した。
急に視界が明るくなり、ぎゅっと目を閉じる。
次に開くと、左右から先程の海軍たちがこちらに走ってくるところだった。
ち、と癖のように舌を打ってゾロは左へ走り出す。
真正面と背後から追ってくる海軍は私たちの正体に気付き始めたようで、ちらほら名前を呼ばれるのが聞こえてきた。
「ゾロ、どこに」
「いいから大人しく担がれてろ」
丸太のように抱えられてうつ伏せになった私の右側で、ひらりと刀の身頃が閃く。
音もなく刀を抜いた彼は、真正面の敵の中をつむじ風のように通り過ぎて、そして斬っていた。
キン、と最後にひとつ鋭い音をたて、刀は何事もなかったかのように彼の右腰に収まった。
彼は止まらず走り続ける。
「ゾロ、キリがないわ、まだ追ってくる」
「んじゃあどこいきゃいいんだ。全員のしちまうか」
「それでもいいけど」
少し考えて、私たちのすぐ背後に大量の腕を咲かせて壁を作った。
どよめきが一瞬聞こえるも、すぐにその壁に遮られて小さくなる。
「そこに入って」
そばにあった建物を咄嗟に指差す。
ゾロは迷わず駆けこんだ。
壁とはいえ私の腕であることに変わりはないので、撃たれたり斬られたりしてはたまらない、とすぐに散らした。
宿場は開いたばかりのようで、けだるそうに開店の準備をしていた宿の主人が飛びこんできた汚い二人組を見てぎょっと目を瞠った。
「部屋あいてるか」
「あ、あぁ、どの部屋が」
「どこでもいい、早く鍵よこせ!」
ゾロの気迫に押されて主人が慌てて小部屋に引っ込み、受付の窓から鍵をこちらに投げてよこした。
受け取ったゾロが大股で奥の廊下を進み、階段を駆けあがる。
「ゾロ、部屋番号は」
「301」
「3階ね、右よ」
案内表示の通り指示を出す。
階段の一番近くにその部屋はあり、ゾロは私を抱えたまま飛び込んですぐさま後ろ手に鍵を閉めた。
激しい呼吸に、担がれる私もろとも揺れる。
「下ろして、ゾロ」
思い出したように彼は私を離した。
床に降り立ち、すぐさま小さな窓のカーテンを閉める。隙間から外の様子を見下ろすと、未だあの制服の何人かが通りを走っていた。
「しばらくは隠れられるだろ」
未だ整わない息のまま、ゾロが腰に手をあてて言う。
「そうね。ここの主人がお金でも積まれて口を割らなければ」
「あぁ、じゃあ口封じでもしてくるか」
ちょっと待ってろ、と言いゾロは部屋を出ていった。
こちらに向けた背中はぐっしょりと耐えがたい生ごみの汚れで濡れていて、申し訳ない気持ちになる。
大丈夫かしら、と思うも、意外と早くゾロは戻ってきてすぐにまた鍵を閉めた。
「大丈夫?」
「あぁ」
具体的に何をどうしたのかわからないが、訊くのもためらわれて結局何も言わなかった。
思い出したように悪臭が部屋に立ち込めてくる。
はー、と長い息をついて、彼も不快そうに自分のにおいを嗅いでいた。
「とりあえず風呂入りてェ」
「そうね、服も洗った方がいいわ」
「着替えがねぇな」
「外が落ち着いたら私が買ってくるわ」
多少変装して出る必要があるだろう。大通りの方へ戻ってしまえば、今日は特に祭りの様なので人ごみに紛れてしまえるだろう。
ゾロはその場で上に消えていたシャツをもぎ取るように脱ぎ、「風呂場はここか」とそれらしき扉を開けた。
「湯が張ってある」
「え」
彼の背後から覗き込むように風呂場を見ると、脱衣所の向こうでなんと浴槽が暖かく湯気を立てている。
浴槽があることにも驚いたが、空いたばかりの宿屋で既に湯が張られているというのはよくわからない。
「不思議。なぜ?」
「そういう店だからじゃねェのか」
「──成程」
ようするにここは娼婦たちの仕事場なのだ。てっとり早く客を洗ってことに運べるように、全室温かい湯が初めから張ってあるのかもしれない。
「知らなかった。面白いわね」
「どっちにしろありがてェ」
ゾロが浴室の床に脱いだシャツを放り投げたので、私は部屋に戻った。
換気扇を回して、少しでも悪臭を外に掻きだす。
靴を脱ぎ、床に直接座り込んだ。汚れた包帯をとってごみ箱に捨てた。
チョッパーが巻いてくれたテーピングは外してしまうと自分では元に戻せないので、そのままにしておく。
キャミソールを引き上げて鼻に近付ける。彼ほどではないけれどやっぱり少し匂いは移っている。
パンツの裾には生ごみが飛び跳ねただろうし、洗わなければならない。
ぐるりと部屋を見渡した。
薄いベージュの安っぽい壁紙。天井近くはひび割れて、お粗末にも飾ってある絵画は傾いていた。
ベッドは部屋の真ん中にどんと一つあるだけで、それ以外の家具はなにもない。ローテーブルの一つすらなく、ただ狭い通路がベッドの足元にあるだけだ。
勿論椅子もないので汚れた身体ではこうして床に座るしかなく、床は硬くて冷たかった。
「おい」
突然ひょこりと脱衣所からゾロが顔を出す。
そちらに目を遣ると、「入るか」と真顔で訊かれる。
「えぇ。早いわね」
「おれぁまだだ。先にシャツ洗った」
「そうなの。じゃあ先入って頂戴。後でいいわ」
ゾロは少し考えるようにどこかに視線をやると、また私の目をまっすぐに見た。
「言っとくけどな、おめーも結構におうぞ」
「まぁ」
わざとらしく目を丸めてみせると、ゾロは顎でしゃくって風呂場を示す。
「来い、さっさと洗っちまえ」
えぇ、と戸惑いながら立ち上がる。
風呂場へ行くと、ゾロは浴室の真ん中で洗ったシャツをぎゅっと絞っていた。
ぼたぼたと激しい水音が響く。
「そのズボンも洗わなきゃ」
「今から洗う」
「なら私は後でいいと」
ん、と唐突にゾロが手招く。
珍しい仕草に少し驚きながら、ついふらりと近寄ったらぐいと腰を引き寄せられた。
「こんなおあつらえ向きの場所でひとりで入れってか」
首筋に唇をつけて囁かれる。
う、と呻きそうになりながら彼の肩にしがみついた。
「そんな、場合じゃないでしょう」
「硬ェこと言うな。おら」
キャミソールをめくりあげられ、あっというまに剥かれてしまった。
「ちょっと」と声をあげるも同時に下着を外され、取り去られた。
「ゾロ、待って」
「うるせぇな」
「先にシャワー浴びて頂戴。あなたこそ、すごくにおうんだもの」
顔を上げたゾロはむっと顔をしかめて、なにか言い募ろうと口を開いたが事実その通りだと思ったのか、「仕方ねェな」と納得しない顔で呟いた。
ゾロは私の腰を抱いたまま浴室に入った。
そしてシャワーコックを掴むので、えっと私は声をあげる。
「待ってゾロ私まだ」
「どうせ洗うんだろ」
頭上から、ざっと水が降る。
その冷たさに首をすくめたが、徐々に水は熱いお湯へと変わって行く。その温度変化に鳥肌が立った。
濡れた髪が頬に、肩に、首筋に張り付く。
顔を流れる水が目に入り、ぎゅっと目を瞑る。
そして開くと少し下方でゾロが顔を撫で上げたところだった。
不意に後頭部に手が回り、引き寄せられて唇が重なる。
私たちの頭上からひっきりなしに降り注ぐお湯が口の中に入り、それすら飲み込むみたいにぬるりと触れた。
「ん」
責めたてるみたいに追い込んでくる舌から、逃げるつもりもないのに上体が後ろに沿っていく。
その度に私の後頭部を支える手に力が加わり、頭を引き戻される。
反対の手がパンツの後ろから無理やり侵入して来て、丸みに沿って指が動く。
目を開けるとすかさず水が目に入り、水彩画に水をぶちまけたみたいな歪んだ景色しか見えない。
浴室に立ち込める蒸気が身体を熱して、頭の中までその蒸気で蒸されてしまったみたいにぼんやりとする。
肩に置いていた手を滑らせてこちらからも彼の腰を引き寄せると、張りつめた筋肉に力が加わったのがわかってどきりとした。
唐突に彼が湯を止めた。ぎゅ、とコックを回した音がやけに大きく響く。
それを合図に唇が離れ、なぜかほっとした。
厚くて硬い親指が私の頬を辿り唇を拭うように撫で、首筋を通り過ぎて肩を掴む。
すぐそこに彼の耳が見えて、ふと思いつきで咥えた。
「おい」
「ふふ」
耳のくぼみに舌をあてがう。
思いのほか彼の反応がなくて、つまらないと思ったのも束の間、ざっとパンツを下着ごと下ろされた。
「や、ちょっ」
「濡れてっと気持ち悪ィだろ」
「脱ぐ間もなく濡らしたのはあなたじゃな、あ」
鷲掴むように臀部を持ち上げられる。鎖骨から胸の中心に向かって舌が這う。
よろめいてたたらを踏むと、足元の水がパシャンと跳ねて室内に響いた。
でもそれよりも、私たちの息の方がずっと強く響いている。
背後に回った手が臀部の丸みに沿って動き、後ろから熱い場所に触れた。
なんのひっかかりもなく、指が一本ぬるっと入り込む。
「ああ、いや」
「準備万端じゃねェか」
掻きだすように出し入れされると膝が震えた。
しがみつく指すら痺れるみたいにじんじんして、「ゾロ、だめ、やめて」と懇願する。
下から胸を持ち上げられて、指で先端を弾かれる。そのたびに「だめ、やめて」と繰り返した。
答えは返ってこず、代わりに最初のものより数倍優しく唇が重なった。
無言で水音だけのキスが続く。
脚を辿って水ではないとろみを帯びた粘膜が落ちていく。私の鼓動に従って、どくどくと流れていくようだった。
「はぁ、脚が、疲れたわ」
「ばか言え、しっかり立ってろ」
片手で彼がハーフパンツを下へ落とした。手を伸ばすと硬いものに触れた。そのまま辿るように動かすが、すぐに手首を掴まれる。
「いい、しなくて」
「でも」
いいから、というように手を払われて、代わりにすぐ脚の間にあてがわれる。
そのまま押されるように壁際に詰め寄られ、冷たいタイルに背中が触れた。
熱した身体が一瞬で冷やされて、でも今度は応戦するように触れたタイルが熱くなっていくのがわかる。
おもむろにぐいと左足を持ち上げられた。
「や、ゾ」
なぞるように出入り口をこすられる。それも一瞬で、あっという間に飲みこまれるみたいに入ってきた。
一気に、頭のてっぺんまで脊髄を伝って電気が走る。
はっと浅い呼吸が漏れ、つかみどころのないタイルに手を這わせるとぺたんと頼りない音が鳴った。
奥の方まで一度で入ってきて、ゾロは私の肩に額を預けて深く息をついた。
動いてもいないのに、あぁと声が漏れる。
突然、ずっと引き抜かれた。
「あっ」
「はー、くそ」
ゾロは私の肩にこめかみの辺りをあて、力を抜いて寄りかかる。
思うままに彼の髪に触れると、短い毛から細かい水が跳ねた。
「ゾロ?」
「なんでもねェ」
頭を上げたゾロは、もう一度私の足を持ち上げて、今度こそ最奥まで一気に突き上げた。
「あぁっ」
く、と歯を噛み締める声が顔のすぐそばで聞こえる。
引き抜かれて次に突き上げられるたび、どんどん奥に当たる気がする。
そのたびに洩れる声が低い天井に当たり、反響して私たちの上に降ってきた。
彼の肩にしがみつき、遠慮なく響く声をふるえる手で押しとどめるように口元に当てた。
気付いたゾロが空いている方の手で私の腕を強く押さえ、呆気なく口元から離れてしまう。
「や、あぁ」
「は、口元、押さえんな」
遮るものなく飛び出した声を、ゾロは愉しむみたいに見えた。
彼の息遣いに耳を澄ますも、そんな余裕はとうになく、あっという間に何もかも訳が分からなくなる。
何をしにここに来たのか、どうして二人でこんなことをしているのか、そのすべてが他愛もない些事に思われて、一瞬ですべて真っ白に塗りつぶされた。
ただここにゾロがいて、私に触れて、そのせいで眉間にしわを寄せ、荒い息を吐いている。
ぐっと胸が押しつぶされて、光みたいな火花みたいな細かい粒が頭の奥の方で弾けた。
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