OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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エアコンのリモコンに部屋の気温が表示されている。31度。
蒸し暑く、座っているだけで胸の間を汗が流れる。Tシャツを肌に押し付けて汗を吸った。
UV対応のカーテンの隙間から良く晴れた空が見える。青く透き通っている。ちぎれた雲がさあっと流れていった。
安物の扇風機がしつこい音を立てて回り、生ぬるい風がときおり顔にぶつかる。
汗が今度は背中を伝った。アイスコーヒーのグラスが机の上をびたびたに濡らし、氷が溶けてからんと音を立てた。
サンジ君、と思ったけど思い浮かんだ顔は違う人だった。
好きで、好きで、どうしようもないとき、今みたいに熱い部屋でクーラーもつけず熱中症ぎりぎり手前で浮かされたみたいになるとき、助けてほしいとすがりたいのは別の人なのに実際助けてくれるのはいつもサンジ君で、申し訳なさよりもありがたさが先に立って私は飛びつくように助けてもらっていた。
不義理だとか、彼の気持ちを利用してだとか、そういういっさいの責め苦を私は飛び越えて「だってどうしようもなく好きだ」と思っていたし、サンジ君もきっとそうなのだろう。
薄いコーヒーを飲み干した時携帯が鳴り、「暑いね」とサンジ君からメッセージが届いた。
*
駅の改札前にあるパン屋で食パンを買っていたら後ろから声をかけられ、振り向いたらすっと背の高い男が私の定期入れを差し出して曖昧に笑っていた。
「あ、すみません」
「いえ」
定期入れを受けとり、店員からはパンを受け取る。振り返ってすれ違いざまさっきの男性に軽く会釈する。向こうも首を曲げて会釈を返した。まっすぐな金髪に隠れた片目がちらりと見えた。
再会したのは次の日の職場で、4月から新しい部署に異動になった私の取引先の担当者が彼だった。
嘘みたいな出会い方にあっけにとられていると、男は名乗り、私の名前を改めて尋ね、あろうことか手の甲を取って軽率に唇をつけた。
「げっ」
「よろしくね、ナミさん」
「あんたみんなにこんなことしてんの」
取引先にもかかわらず、彼の軽率さにつられて軽い口調で尋ねると、サンジ君は「いやいや」と首を振ったが嘘だとわかる。
初めて出会ったときの曖昧な笑みとは程遠い軽薄な印象に拍子抜けした。
なんとなく口づけられた手の甲をこすって、さっさと仕事の話に切り替えた。
彼と二人で外を回り、新しく開設予定のテナントを見に行ったりファミレスで資料を開いて打ち合わせをする日々が続いた。
サンジ君は飲食チェーンの本社に勤め、私は彼の会社が新しく手掛けるレストランのインテリアデザインを担当する。
「だからね、天井が高いでしょう。ここに窓があるんだからその前にカウンターを作っちゃうと人の動線で光が遮られちゃう」
「あーでも、やっぱ客席はこのエリアまで広げてぇんだよ」
私も大概気が強いと思うが、サンジ君も優しいようで折れることは少なかった。
こと仕事に関しては、というか、仕事の彼しか知りようがないのでもともとの性分なのか仕事の仕方なのかはわからない。
ただまっすぐなやり方には好感が持てたし、取引相手として信頼できると思っていた。
打ち合わせが行き詰まり、二人で頭を突き合わせ資料に目を落として数分が立とうとしている。
ふと息を吐き出して顔を上げたら、サンジ君が私を見ていたので驚いた。
「わ、なに」
「いんや、新しいコーヒー頼もうか」
「あ、待って私もうおなかたぷたぷ。ちょっと歩かない、もう一度テナントも見に行きたいし」
熱心だね、と彼は嬉しそうに笑った。
どうもと言って同時に立ち上がる。会計はサンジ君がいつも持ってくれる。コーヒーくらいで領収書を切ることはなかった。
春の夕方はまだ涼しく、カーディガンの生地を通して冷たい空気が腕にぶつかった。
「見に行ったあと会社に戻るの?」と唐突にサンジ君が訊いた。
「んー、今日はもう直帰するって言ってある。明日朝から会議があるから今日は早めに帰りたいし」
「あーそっか、そっか」
たははとサンジ君が気まずそうに笑うので何かと思って彼を見上げたら、視線に気付いた彼は隣を歩く私を見下ろし、初めて会ったときと同じ曖昧な笑みを浮かべて言った。
「や、ちょっと飲みにいかねーかなと思って。おれも直帰だから」
「あ、なんだ、いいわよ」
「でも明日早いんじゃ」
「そんなに遅くならなきゃ大丈夫」
サンジ君はぱっと顔を明るくして、「駅の近くにうめーところがあって」とハリのある声でその方向を指差した。
ふーんと相槌を打ったときに私の携帯が震え、ちらりと視線を落として画面を確かめた。
会社でも、家族でも、友達でもないその名前にぐらんと立ちくらみのように心が揺れた。
「ごめん、サンジ君。今日先約あるんだった」
「あ、あーそっか、じゃあしゃーねぇな」
残念、とサンジ君はまた曖昧に笑い、きっと得意になってしまったのだろうその顔を隠すように煙草を咥えて火をつけた。
私は携帯をぎゅっと握りしめ、彼と別れた後のことにもう心が走って行ってしまったことに気付いている。
「ほんとごめん。一度いいよって言ったのに」
「いーのいーの。どうせ今週また会うしな」
数秒の間を開けて、サンジ君はゆっくりと「彼氏?」と訊いた。
「ううん」
「あ、そう、よかった。あ、よかったって言っちゃった」
ハハッと彼が笑うので、つい私もつられて笑ってしまう。
彼氏って、彼氏って、そういうのはきっとサンジ君の方が得意だろうと思った。
「じゃ、そういうわけでおれはナミさんと飲みにいきてぇと思ってるので、空いてたら教えてください」
駅の改札前で、サンジ君は馬鹿丁寧にそう言って自分の携帯をこつこつと指差した。
うん、と私は頷く。
「電車乗る?」
「ううん、今日は乗らない」
「そか、じゃあ」
おつかれさま、と言い合って私たちは別れた。サンジ君だけが改札を通り抜けて人の多いホームへと階段を上って行った。
私はそのまま駅と直結の百貨店へ向かい、そこの化粧室で化粧直しをした。
緊張していた。
会うのは久しぶりだったし、よく冷静にサンジ君の誘いを断れたものだと思う。
セックスするかな、と考えて、今日の下着を思い出そうとする。個室に入って確認しようかとまで考えて、どっちにしろ着替えが必要になるかもしれないと思って百貨店の下着売り場で新品を買った。
今日一日で一番楽しく、胸が躍り、また一番悲しい時間が来ることも、本当はわかっていた。
*
6月になり、初めてサンジ君と仕事終わりに飲みに行った。
私の様子を窺って、誘おうかどうか迷っているのが手に取るようにわかるのがおかしくて私の方から誘ったのだった。
二人で進めている仕事の方は順調といえば順調で、夏の始まりには着工されるだろう。
よくある暗めの照明の中、飾られたグリーンだけが照らされて浮かび上がっている。その光を見ながら私とサンジ君は仕事のこと、休みの日のこと、学生時代のことなんかをべらべらと喋りまくった。
サンジ君はげらげらと笑った。上品な仕立ての服に似合わず口調は荒いし不良っぽいなと思っていたらやっぱり「高校生のころが一番バカで頭悪いことしかしなかった」と彼が白状したので私もげらげらと笑った。
「ナミさんよく飲むね、いーね」
「つられて飲んでると潰れるわよ」
「潰れたらお持ち帰りしてくれる?」
それ私に何の得もないじゃない、と笑ってロックグラスを傾けた。小さくなった氷が唇にあたる。
グラスを顔から離すと、思いがけずサンジ君が真剣な目で私を見ているので私も思わず口元を引き締めた。
「ナミさん、おれ、仕事以外でもナミさんと会いてぇと思ってる」
今もすげぇ楽しいから、とサンジ君はさっと私の手に手を重ねた。
グラスのせいで冷えた手にサンジ君のそれが被さると、じんと熱さが伝わった。
「私も、楽しいけど」
けど、というのは便利なもので、すべて言わなくてもそのあとの言葉を物語ってくれることがある。
今回の場合もサンジ君は私の「けど」のあとを汲んでぎゅっと唇を噛んだ。
手は離れないまま、「おれじゃだめ?」と彼が訊いた。
「ごめん」
「はは、全然悩まねぇのな」
彼の手が少し身じろぎ、離されるかと思いきやぎゅっと強く握られる。
「じゃあ、いや?」
思わず彼の目を見るとじっとのぞき返されるので慌てて逸らす。
嫌じゃなくてもその気がないなら嫌だと言わなきゃいけないことを知っていたけど、返事をするには遅すぎたので諦めて「いやじゃないし、サンジ君のことは嫌いじゃない」と正直に言った。
うん、とわかっていたように彼が頷く。
「彼氏が、いるとか」
問いかけるように彼が言うのに、私はまたもや言葉を詰まらす。
そういう確固たる資格を持った男の人はわたしのためにいやしないけど、キスをしたり、セックスをしたり、そういうことをしたいと思う人なら確かにいた。
「好きな人が、いる」
サンジ君は表情を動かさなかったけど、その目がざっくりと傷ついたのがわかった。
彼氏がいると言った方がまだよかったのかもしれない。
「付き合ってねーの」
「うん」
「もったいねー。ナミさんみたいな人ほっとくなんて」
「結婚してるから、多分」
サンジ君が軽く息を吸い、「多分?」とおそるおそるというように尋ねた。
「たぶん。してるとも、してないとも聞いたことないけどたぶんしてる」
「知りたくないんだ」
わかったような言い方に顔が熱くなる。返事をしないでいたら「ふたりで会うの?」と重ねて尋ねられた。
一気に話したくない気になって、口を閉ざす。グラスを掴んだが中は空だった。
「好きな時に会えるの? 呼ばれたら会いに行くの?」
「やめて。もういいでしょ私の話は」
「よくねぇし、好きな子がしちめんどくせぇ恋愛してたらおれにしろよって言いてェだろ」
重ねられた手の下から自分の手を引っこ抜いた。
今になって酔いが回ったのか、手の先が少し震えるように痺れていた。思わずサンジ君の手を掴みそうになって、怖くて離したのだ。
「ごめん」
サンジ君が急にしゅんと頭を垂れて謝った。
「急に踏み込んで。無礼でした」
サンジ君もテーブルから手をおろし、私を上目づかいに見た。
「怒った?」
「ううん、大丈夫」
「出ようか」
いつの間にか終電間近になっていて、会計が一緒になった8人ほどの団体と一緒に私たちはするりと夜気にまぎれこんだ。
外の空気はむわっと暑く、店内に冷房が効いていたことにそこで気付く。
サンジ君は来たときと同じ距離間で、駅までの短い時間私の隣を歩いた。
その日は金曜日だったので、別れ際サンジ君は「じゃ、また月曜日に」とあの笑い方をして言った。
「うん、今日ありがとね」
「や、あ、ナミさん、休みの日とか連絡しても大丈夫?」
「え、うん」
即答したら、サンジ君は何故だかぽかんと私を見て、すぐさまにっこり笑って「連絡する」と言った。
おやすみと言って別れた私はすぐに携帯を確認し、何の連絡もないことに肩を落とすけれど、別れ際のサンジ君の笑顔が少し私の心を軽くして、同時にちくりと胸を刺した。
→
蒸し暑く、座っているだけで胸の間を汗が流れる。Tシャツを肌に押し付けて汗を吸った。
UV対応のカーテンの隙間から良く晴れた空が見える。青く透き通っている。ちぎれた雲がさあっと流れていった。
安物の扇風機がしつこい音を立てて回り、生ぬるい風がときおり顔にぶつかる。
汗が今度は背中を伝った。アイスコーヒーのグラスが机の上をびたびたに濡らし、氷が溶けてからんと音を立てた。
サンジ君、と思ったけど思い浮かんだ顔は違う人だった。
好きで、好きで、どうしようもないとき、今みたいに熱い部屋でクーラーもつけず熱中症ぎりぎり手前で浮かされたみたいになるとき、助けてほしいとすがりたいのは別の人なのに実際助けてくれるのはいつもサンジ君で、申し訳なさよりもありがたさが先に立って私は飛びつくように助けてもらっていた。
不義理だとか、彼の気持ちを利用してだとか、そういういっさいの責め苦を私は飛び越えて「だってどうしようもなく好きだ」と思っていたし、サンジ君もきっとそうなのだろう。
薄いコーヒーを飲み干した時携帯が鳴り、「暑いね」とサンジ君からメッセージが届いた。
*
駅の改札前にあるパン屋で食パンを買っていたら後ろから声をかけられ、振り向いたらすっと背の高い男が私の定期入れを差し出して曖昧に笑っていた。
「あ、すみません」
「いえ」
定期入れを受けとり、店員からはパンを受け取る。振り返ってすれ違いざまさっきの男性に軽く会釈する。向こうも首を曲げて会釈を返した。まっすぐな金髪に隠れた片目がちらりと見えた。
再会したのは次の日の職場で、4月から新しい部署に異動になった私の取引先の担当者が彼だった。
嘘みたいな出会い方にあっけにとられていると、男は名乗り、私の名前を改めて尋ね、あろうことか手の甲を取って軽率に唇をつけた。
「げっ」
「よろしくね、ナミさん」
「あんたみんなにこんなことしてんの」
取引先にもかかわらず、彼の軽率さにつられて軽い口調で尋ねると、サンジ君は「いやいや」と首を振ったが嘘だとわかる。
初めて出会ったときの曖昧な笑みとは程遠い軽薄な印象に拍子抜けした。
なんとなく口づけられた手の甲をこすって、さっさと仕事の話に切り替えた。
彼と二人で外を回り、新しく開設予定のテナントを見に行ったりファミレスで資料を開いて打ち合わせをする日々が続いた。
サンジ君は飲食チェーンの本社に勤め、私は彼の会社が新しく手掛けるレストランのインテリアデザインを担当する。
「だからね、天井が高いでしょう。ここに窓があるんだからその前にカウンターを作っちゃうと人の動線で光が遮られちゃう」
「あーでも、やっぱ客席はこのエリアまで広げてぇんだよ」
私も大概気が強いと思うが、サンジ君も優しいようで折れることは少なかった。
こと仕事に関しては、というか、仕事の彼しか知りようがないのでもともとの性分なのか仕事の仕方なのかはわからない。
ただまっすぐなやり方には好感が持てたし、取引相手として信頼できると思っていた。
打ち合わせが行き詰まり、二人で頭を突き合わせ資料に目を落として数分が立とうとしている。
ふと息を吐き出して顔を上げたら、サンジ君が私を見ていたので驚いた。
「わ、なに」
「いんや、新しいコーヒー頼もうか」
「あ、待って私もうおなかたぷたぷ。ちょっと歩かない、もう一度テナントも見に行きたいし」
熱心だね、と彼は嬉しそうに笑った。
どうもと言って同時に立ち上がる。会計はサンジ君がいつも持ってくれる。コーヒーくらいで領収書を切ることはなかった。
春の夕方はまだ涼しく、カーディガンの生地を通して冷たい空気が腕にぶつかった。
「見に行ったあと会社に戻るの?」と唐突にサンジ君が訊いた。
「んー、今日はもう直帰するって言ってある。明日朝から会議があるから今日は早めに帰りたいし」
「あーそっか、そっか」
たははとサンジ君が気まずそうに笑うので何かと思って彼を見上げたら、視線に気付いた彼は隣を歩く私を見下ろし、初めて会ったときと同じ曖昧な笑みを浮かべて言った。
「や、ちょっと飲みにいかねーかなと思って。おれも直帰だから」
「あ、なんだ、いいわよ」
「でも明日早いんじゃ」
「そんなに遅くならなきゃ大丈夫」
サンジ君はぱっと顔を明るくして、「駅の近くにうめーところがあって」とハリのある声でその方向を指差した。
ふーんと相槌を打ったときに私の携帯が震え、ちらりと視線を落として画面を確かめた。
会社でも、家族でも、友達でもないその名前にぐらんと立ちくらみのように心が揺れた。
「ごめん、サンジ君。今日先約あるんだった」
「あ、あーそっか、じゃあしゃーねぇな」
残念、とサンジ君はまた曖昧に笑い、きっと得意になってしまったのだろうその顔を隠すように煙草を咥えて火をつけた。
私は携帯をぎゅっと握りしめ、彼と別れた後のことにもう心が走って行ってしまったことに気付いている。
「ほんとごめん。一度いいよって言ったのに」
「いーのいーの。どうせ今週また会うしな」
数秒の間を開けて、サンジ君はゆっくりと「彼氏?」と訊いた。
「ううん」
「あ、そう、よかった。あ、よかったって言っちゃった」
ハハッと彼が笑うので、つい私もつられて笑ってしまう。
彼氏って、彼氏って、そういうのはきっとサンジ君の方が得意だろうと思った。
「じゃ、そういうわけでおれはナミさんと飲みにいきてぇと思ってるので、空いてたら教えてください」
駅の改札前で、サンジ君は馬鹿丁寧にそう言って自分の携帯をこつこつと指差した。
うん、と私は頷く。
「電車乗る?」
「ううん、今日は乗らない」
「そか、じゃあ」
おつかれさま、と言い合って私たちは別れた。サンジ君だけが改札を通り抜けて人の多いホームへと階段を上って行った。
私はそのまま駅と直結の百貨店へ向かい、そこの化粧室で化粧直しをした。
緊張していた。
会うのは久しぶりだったし、よく冷静にサンジ君の誘いを断れたものだと思う。
セックスするかな、と考えて、今日の下着を思い出そうとする。個室に入って確認しようかとまで考えて、どっちにしろ着替えが必要になるかもしれないと思って百貨店の下着売り場で新品を買った。
今日一日で一番楽しく、胸が躍り、また一番悲しい時間が来ることも、本当はわかっていた。
*
6月になり、初めてサンジ君と仕事終わりに飲みに行った。
私の様子を窺って、誘おうかどうか迷っているのが手に取るようにわかるのがおかしくて私の方から誘ったのだった。
二人で進めている仕事の方は順調といえば順調で、夏の始まりには着工されるだろう。
よくある暗めの照明の中、飾られたグリーンだけが照らされて浮かび上がっている。その光を見ながら私とサンジ君は仕事のこと、休みの日のこと、学生時代のことなんかをべらべらと喋りまくった。
サンジ君はげらげらと笑った。上品な仕立ての服に似合わず口調は荒いし不良っぽいなと思っていたらやっぱり「高校生のころが一番バカで頭悪いことしかしなかった」と彼が白状したので私もげらげらと笑った。
「ナミさんよく飲むね、いーね」
「つられて飲んでると潰れるわよ」
「潰れたらお持ち帰りしてくれる?」
それ私に何の得もないじゃない、と笑ってロックグラスを傾けた。小さくなった氷が唇にあたる。
グラスを顔から離すと、思いがけずサンジ君が真剣な目で私を見ているので私も思わず口元を引き締めた。
「ナミさん、おれ、仕事以外でもナミさんと会いてぇと思ってる」
今もすげぇ楽しいから、とサンジ君はさっと私の手に手を重ねた。
グラスのせいで冷えた手にサンジ君のそれが被さると、じんと熱さが伝わった。
「私も、楽しいけど」
けど、というのは便利なもので、すべて言わなくてもそのあとの言葉を物語ってくれることがある。
今回の場合もサンジ君は私の「けど」のあとを汲んでぎゅっと唇を噛んだ。
手は離れないまま、「おれじゃだめ?」と彼が訊いた。
「ごめん」
「はは、全然悩まねぇのな」
彼の手が少し身じろぎ、離されるかと思いきやぎゅっと強く握られる。
「じゃあ、いや?」
思わず彼の目を見るとじっとのぞき返されるので慌てて逸らす。
嫌じゃなくてもその気がないなら嫌だと言わなきゃいけないことを知っていたけど、返事をするには遅すぎたので諦めて「いやじゃないし、サンジ君のことは嫌いじゃない」と正直に言った。
うん、とわかっていたように彼が頷く。
「彼氏が、いるとか」
問いかけるように彼が言うのに、私はまたもや言葉を詰まらす。
そういう確固たる資格を持った男の人はわたしのためにいやしないけど、キスをしたり、セックスをしたり、そういうことをしたいと思う人なら確かにいた。
「好きな人が、いる」
サンジ君は表情を動かさなかったけど、その目がざっくりと傷ついたのがわかった。
彼氏がいると言った方がまだよかったのかもしれない。
「付き合ってねーの」
「うん」
「もったいねー。ナミさんみたいな人ほっとくなんて」
「結婚してるから、多分」
サンジ君が軽く息を吸い、「多分?」とおそるおそるというように尋ねた。
「たぶん。してるとも、してないとも聞いたことないけどたぶんしてる」
「知りたくないんだ」
わかったような言い方に顔が熱くなる。返事をしないでいたら「ふたりで会うの?」と重ねて尋ねられた。
一気に話したくない気になって、口を閉ざす。グラスを掴んだが中は空だった。
「好きな時に会えるの? 呼ばれたら会いに行くの?」
「やめて。もういいでしょ私の話は」
「よくねぇし、好きな子がしちめんどくせぇ恋愛してたらおれにしろよって言いてェだろ」
重ねられた手の下から自分の手を引っこ抜いた。
今になって酔いが回ったのか、手の先が少し震えるように痺れていた。思わずサンジ君の手を掴みそうになって、怖くて離したのだ。
「ごめん」
サンジ君が急にしゅんと頭を垂れて謝った。
「急に踏み込んで。無礼でした」
サンジ君もテーブルから手をおろし、私を上目づかいに見た。
「怒った?」
「ううん、大丈夫」
「出ようか」
いつの間にか終電間近になっていて、会計が一緒になった8人ほどの団体と一緒に私たちはするりと夜気にまぎれこんだ。
外の空気はむわっと暑く、店内に冷房が効いていたことにそこで気付く。
サンジ君は来たときと同じ距離間で、駅までの短い時間私の隣を歩いた。
その日は金曜日だったので、別れ際サンジ君は「じゃ、また月曜日に」とあの笑い方をして言った。
「うん、今日ありがとね」
「や、あ、ナミさん、休みの日とか連絡しても大丈夫?」
「え、うん」
即答したら、サンジ君は何故だかぽかんと私を見て、すぐさまにっこり笑って「連絡する」と言った。
おやすみと言って別れた私はすぐに携帯を確認し、何の連絡もないことに肩を落とすけれど、別れ際のサンジ君の笑顔が少し私の心を軽くして、同時にちくりと胸を刺した。
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サンジの海賊レストラン 及び ワンピースプレミアショー
いってきました。
もう、ぜんぶぜんぶ素晴らしかったのだけどいちばんいちばんだったプレショから。
去年のストーリーにがっかりしてたのもあって正直期待してなかったんです。
ただキャストさんにわーきゃーできたらなあって。
ところがどっこいひっくりかえされてもみくちゃにされた気分。
丸裸にされてわけわからんうちに楽しいところに連れていかれて気付いたら終わってて広い草原にいたみたいな。
以下ネタバレ注意です。
前座、いつも敵方の子分がやってるやつ。
あれ楽しくて大好きで、いつもワイワイ踊って歌って満喫する。
今回も楽しみにしていて、ストーリーをまったく知らなかったから敵もどんなかなあと思ってた。
そーしたら可愛いアフロガールたちとまさかのフランキーアニキで、えええええあええ前座豪華!!!
しかもしかも手前のアフロガール、去年サンレスでお世話になったナミさん役されてたモコちゃんなるキャストさん!!!
か、か、かわああああ〜〜
かわいか〜〜〜
アニキも相変わらずで本当に嬉しい。
前座アニキのダンス講習で、そらもうノリッノリに踊る。
いかんせん私、この日まだ声が出なくて。
一週間以上前から声を失って、前日から少し出るようになっていたのだけどガスッガスの汚い声で。
叫べば悪くなるのはわかっていたけど、黙ってなんていられなかった。
アニキを呼びたかった。
スゥウウパァアって叫びたかった。
アニキが去ると、次は敵役の子分的なのが二人現れて、いつもの前座ね、あれね、水をぶっかけるやつ。
敵ボスは白が嫌いだとかなんかそんな設定でわちゃわちゃと楽しく観客も巻き込んでどたばたやりました。
今回のストーリーはざっとまとめると、
白ひげ海賊団のおとしまえ戦争でマルコ率いる白ひげの残党たちが敗退、消息不明となる。
一方、エースの2番隊に所属していた隊員の故郷のとある島は、エースが残した火によってエースの縄張りとして守られていたのだけど、黒ひげ海賊団の傘下?になるのかな、今回の敵方海賊団(なまえ失念)が白ひげの残党狩りにその島へとやってくる。そこに麦わらの一味も居合わせ、お互いにエースの弟、エースの仲間てなことで共闘することに。
ちょいちょい回想を挟みながら、白ひげ海賊団がその島を縄張りとしたときの過去編から麦わらの一味が戦う現在に場面は移行する。
回想はやっぱりあの頂上戦争編、エースの死の場面をやったのだけど、わかってても、泣かせようとしてくるのはわかってても、鼻ガツンとならずにはいられなかったよね〜まんまと。
思いがとっちらかって何も上手くログれないのだけど、いちばんドンときたのは白ひげ海賊団の登場。
オ、オ、オヤジーーーーー!!
マルコにビスタにジョズ、そんでもってイゾウさん、まさかのまさかのイゾウーーー!!!
は、は、初めて見た三次元イゾウめっちゃかっこいいい衣装もまんまで髪の後れ毛の再現度( ; ; )
ステージエリアには来たものの遠くて、でもずっと見てた……このタイミングでイゾウ出ると思わなくて心の目が泣いた。
でもそれはエースがティーチを追いに行く前の話だから、その後サッチが殺されて…とモノローグが語られたらヴゥッとなった。サッチ……
んで、ストーリーは麦わらの一味がエースの仲間のために一緒に戦うんだけど、敵方の子分の悪魔の実がぽちゃぽちゃの実()とかで、みんな太るわけ。肉襦袢を着て現れるの。ソーキュート。
でさ、彼らの肉を落とすためにここで前座でやったフランキー兄貴のダンスが入るの。それを麦わらの一味がぽちゃぽちゃの身体で踊るの。クッソ可愛い。
たくみくんルフィの腰の動きが激しくて、いやセクシーな腰の動きでは全くなく、もうひたっすら小刻みにダムダムしてるの。めっちゃかわいい。ルフィダンス適当すぎ。
見なけりゃ伝わらないのは承知の上で、反芻する私だけが楽しいのも承知しているので意味が分からないのは目をつぶってください。
で、麦わら一味の活躍はというといつものとおりみんなに見せ場があって、やっぱり三強のところは盛り上がる。
ゾロがたしか去年のサンレスで見たキャストさんで、少し背は低いけど腰から下ががっちりしてて、安心感がある。
JUJUさんサンジはお顔が神サンジ。背が高くて、肩幅が広い。そのぶんパフォーマンスがド派手で、ステージの右端でブレイクダンスではないけどそれに近い逆立ちパフォーマンスをしてくれて、客席の片側だけドッと沸いた。あまさず見た。
そしてあの方のルフィは本当に安定してる。まんまルフィ―!
はじめてみたまっちゃんルフィに心持ってかれた私は、いつまでもあの人の帰りを待ち続けて入るんだけど、たくみくんルフィの大きな黒い瞳がランランしているのを見ると本当に心現れるし元気になる。
MIKIナミさんは腰がほっそーーいのに動きがきびきびしていて、男共を引っぺがしたりげんこつくらわせたり、いつも通りの彼女で、観客に向ける笑顔はもう目が潰れそうに眩しい。どうしたらあんなふうに笑えるんだろう。
なにより、一島民役で出てきたキャストのモコちゃんとるんらるんら手を繋いで踊ってたのが「ハァァッ」て声出るくらいかわいかった。
そのモコちゃん扮する島民を、サンジが常に狙ってるわけ。ずっと見てるの。
すきあらばすり寄っていって、モコちゃんがびっくりしてさっと逃げるけどめげないサンジ。
ステージに腹ばいになって肘ついて、手に顎置いてモコちゃんをながめたり、長い足をきゅっと折りたたんで体育座りしてモコちゃんをながめたり、おいサンジそれかわいいな、ナミさんにそれしてくれ、とずっと思ってた。
キャストさんの個性というかJUJUMIKIさんサンナミだったから、ビジュアルは本当にすんばらしいのだけど、そっかサンナミでアドリブのいちゃいちゃはしてくれないんだね・・・
ストーリー上もサンナミの絡みはほぼ皆無でしたね。
でもぜんぜん気にならなかった。もう心は白ひげ海賊団に奪われていたから。
そういう意味でも、ワンピの原作を楽しめるお友達と行けたのは本当に良かったなぁ。
で、ま、麦わらの一味が敵を倒し、島は救われ、宴だー!
このグリを待ってた待ってた!なかなか近くを通ってくれないもどかしさもいいんだよねー。
お席は前から3列目、ベンチの端を取っていただいていたので、サンジにハイタッチもしてもらえた!ナミさんは通らなかったよ~;;
宴のあと、水上のステージで再度白ひげ海賊団(オヤジ、マルコ、ビスタ、ジョズ、エース、イゾウさんいたかな? このあと別の誰かに扮したようで、このときにはもう消えていた気がする)が現れて、歌を歌って、古川さんの渋声が沁みた~
エースがオヤジを見上げて去っていく背中が、本当に切なかった。
マルコがオヤジを見上げて頷いたのも本当に胸に来た。
あーーーここに白ひげ海賊団持ってきてくれたの本当に嬉しかった。
原作で見なくなって、自分も二次で彼らに触れることがとんと少なくなったけど、ああやっぱり好きだー!だいすきー!って再確認できたのがこのプレショで一番の収穫だと思った。
そ、ん、で!
このあと敵キャラのステージ前挨拶で拍手した後、なんの前情報もなかった私たちにとってサプライズだったのが、イチジとニジの登場!!
え、え、え!?!?!?!?となってたら、そのあとプレショ10周年記念のスペシャルグリーティング!
同伴だったタマさんがイチジニジに完全に心奪われている隙にどんどん出てくるキャラ達。
タマさん「出るだけだしとけって感じ」
こまつな「なんかもう衣装ある人みんな出したみたいな」
バギー、ボンちゃん、ハンコック、サボ、コアラ(この2人はショーでも登場)、イチジ、ニジ、白ひげ海賊団のオヤジ、エース、マルコ、ジョズ、ビスタ、そして麦わらの一味に敵役たち。
ああ~~ああ~~ああ~~ってガスッガスの声で叫んで何度も名前を呼んで、何人かに近くを通ってハイタッチもしてもらえた・・・昇天。
オヤジがこちらへ向いて来たとき、もちろん「オヤジ――――!」って叫んだし、このガスガスの声では多分聞こえてなかったけれど、オヤジは立ち止まって目の前でグラグラの実のポーズをとってくれた。外国人さんキャストで、お顔はエドワード・ニューゲートそのものだった・・・目頭熱くなる。
本当は近くでマルコを、マルコを見たかったのだけど、反対側のステージ近くにしかいらっしゃらなかったので遠くからそっと眺めた。眺めつづけた。舐めるように。
抜けだらけというか、本当に私の琴線に触れたところだけをピックアップしたレポですが、プレショについて言いたいことは以上でっす。
今年のショーは、本当に本当に私にとってはよかった。ストーリーも掴みやすかったし白ひげ海賊団も出たし(要するにそれが全て)。
usjめぐり自体ももちろん楽しく過ごしました。
タマさんとふたりだったので、アトラクションもふたつ乗り、待ち時間はひたすら語り合い。
文字書き同士なので、二次に関わらず文字書くことについての話もたくさんできたし、もちろんワンピの話も盛り上がった。
しかしいちばん盛り上がったのがサンナミではなく、
ドフヴァイ。
初めはかるーく、「あのふたりもちょっと気になるんですよねー」って話題に出たくらいだったのが、二人で話すうちにZUBONと沼に落ちた感じ。ずぶずぶ。
1時間近く、どうしたら彼らは! いったい! なぜ! と特に結論も出ない思いつきの彼らの関係性を吐き出し続けた。
ちょうたのしかったです。
ドフヴァイ、書こうと思います。
サンレスの出待ちも一度だけして、ルフィにぱぁんと手をたたいてもらえた。田中君ルフィ。会いたかった。うれしい。少し痛い。
サンレスについてもレポをしようかと思いましたが、上記のプレショレポを書いてああめっちゃくちゃ。と思ったのでやめておきます。
タマさんがだいすきだというしんいちろうさんサンジに、会いたかった田中くんルフィ、名無しさんというめちゃくちゃかっこいいゾロと、顔は原作よりイケメンなのに動きが残念すぎるデュバルとフレンドリーなバルトロメオ、みんなみんなとっても素敵でした。
以上、書きたいとこだけワンピサマーログでした!
ほんと、近々ドフヴァイ書くので好きな人がいたら挙手ーー!!挙手ーーーー!!!!
アッアッアーーー
85巻読みました。以下感想はしりがきです。
表紙のソウルキングちょーかっこいい~84巻から今回に掛けてソウルキングの活躍目覚ましすぎない?
「サンジのため想いは一つ」っていう触れ書きの中央にいるレイジュが、85巻を読み終わった後どれだけ効いてきたことか。
チョニキとキャロットの冒険ちょうかわいい。かわいいとかわいいで最強可愛い。
でも二人とも強いってのがみそだよなー。
キャロットはなんのために戦ってるつもりなんだろう。
多分動物的直感となんとなく楽しくなりそうな見通しのうえで一緒に戦ってくれてるんだろな。
サンジがプリンちゃんのために用意したバラ、なんとも力を入れて描かれている・・・フルボディとジャンゴがヒナ嬢のために用意したお花とは大違いじゃないか。
麦わらたちの消息と現状を伝える報告を遮ったサンジの「もういい」にさんじがいっしょけんめいルフィたちへの思いを断ち切ろうとしてるのが伝わるよなーそんなに眉間にしわ寄せてさ。つらいなら帰ろうぜ!
この衛兵はなんなの?なんでそんな猫背なの?ナスがなに?
プリンちゃんのために夜食を用意するサンジの気遣いがつらい。
でもさ、これでサンジが女好きじゃなかったら本当に絶望の絶望の結婚だったわけで、そういう意味では彼の性格が一種好反応起こしてるとも言える気がする。超ポジティブに考えたら。
レイジュの血まみれの姿衝撃的すぎた。
なに!?なにがあったのやめてーーーー
ところでこのコマのレイジュさんの手指とか太腿とか、まるでサンジやナミさんがカリファにつるぴかにされたときみたいな丸みを帯びちゃってるんだけど何かあったの。
妙に肉感あふれる丸みなんだけど、他意はないんだろうな、たぶん。
サンジが作ったお弁当ぉおおおお肉にハンバーガーサンドイッチさんま、パッと見だけで一味の好物詰め込まれてるのが丸わかりだよおおおおおおお「まあいい」の前後に挟まれた「・・・」にサンジの葛藤と後悔が滲んでてつらい。チョコとみかんはチョッパーとナミさんのだね。
ルフィが手を引きちぎって牢から出ようとするの、本当にやりかねないからほんまやめておくれ。
ゼフといいキュロスといいリトルガーデンでのゾロと言い、身体の一部落としても生きてられる思考の人が多すぎて怖いんだよー
ナミさんの「あんたの手がちぎれるのも見たくないわよ」っていう一般人の考えにほっとする。
ゼポ・・・?ゼポ!?ぜったいベポの親族じゃないか~~~熊だし!
ファンキーなくまさんだね、でも死んでしまったの? 今後ペドロとの関係ももっと詳しく明らかになるといいな。
「世界の夜明け」といい、ペドロ→ネコマムシの旦那→坂本竜馬みがしびれる。
ア~~~~~やっぱか~~~~
信じたかったよープリンちゃん君のこと本当に信じたかったよ~~~
三つ目なのはいいよそんなの本質に関係ないからでもその黒い顔はあれだもうだめだ。嫌いじゃないけど思いのほか言うこと言うこと切れ味ある。
そしてそれを外で聞いてるサンジの身体がどんどん冷えてくね。しっかり抱いてる花束がつらい。もうつらいしか言えない。
でも思うにプリンちゃんのいう「空想の世界に生きてなさいマヌケ共」って、ジェルマが憎い人にとっていつか言いたい言葉だろうな~のちでレイジュも言ってるけど過去の栄光にすがってる感ありありだし、おとぎ話の中でも栄華を誇ってる自分たちに酔ってる雰囲気はあるなぁと思っていたのでこの言葉に溜飲が下がる思いがしたのも確か。
しかしンアアアアアアアアアアだめだこのサンジの顔はだめだ。
ナミさんの助けての泣き顔級にフラッシュバックするやつだ。
ここから読み進められなくて一回本を閉じた。
あああああ彼女にだけは言われたくなかったよね一筋の光だったんだよね落ちこぼれ扱いされて家族にもなれなくてこっちから願い下げだと思ってても一人は淋しかったよねそこで「地獄にはさせませんよ」って言ってくれたプリンちゃんがどれだけ希望だったことか。なのにその彼女にここまで言われて、このサンジの泣き顔はたぶんこれまでで一番幼くてさみしい。
食いしばった口元といい、泣きたくなんてないんだよね結婚を断られたのがつらいんじゃなくて、やっぱりどこにもなかった居場所を実感して耐えられんと思ったのよね。
サンジが煙草に火をつけるのは、心を落ち着けたり覚悟を決めたりする心情描写を含むことが多いと思うと、この泣き顔の前に雨の中付くはずのないライターをこすりつづけるむなしさが胸に来る。
正味85巻はここで力尽きる。力尽きたよ・・・でもよんだよ。
メモメモか~三つ目だけじゃなくて能力者だったの。ずるい。
アーーーーージンベイーーーーー親分ーーーー胸熱!!!
ここからちょっと展開が勢いづくよね好転好転!!
ナミさんのニューファッションかわいい!表紙を見ると鮮やかな青色なのか。
レイジュが思いのほか冷静で、いい意味でどきどきする。ジェルマについての見解がレイジュを境にこうもはっきり分かれているのなら希望はあるもんね。
サンジよりもレイジュの方が今後の展開への期待値は大きいのかもしれない。
思うに、どうにかしたい又は滅んでしまえっていう気持ちは結構前からレイジュの中で育ってたのかなぁ。
彼女の中にある情は、それを持たない兄弟たちと育つうえでレイジュにとっていいことばかりではなかっただろうなぁむしろ邪魔でさえあったかも。冷酷になり切れたら辛い思いもしなかったし。でも自分の中にあるひとつぶの情のおかげで世界のどこかであの優しい弟が生きているということも、レイジュを生かしつづけたんじゃないかと思う。
「父と母の大ゲンカ」・・・ソラさんやっぱり反対してくれたんだ、お母さんなんだ、4人を4人とも普通の人間の子にしたかったんだーあたりまえやないかな。
だめだめルージュさんといい子を守るために自分の命を賭しすぎ!!!でもありがとう!ありがとう!!!!
「おかしいですな・・・サンジ様だけ・・・」のコマの幼児サンジ!!!かわいすぎか~~~~~~~!!!!
屈託のない笑顔!みたことある!その顔見たことあるよ!!船でいっつもそんな顔してたじゃないか~~~~~
レイジュはずっと近くでこの顔を見てたんだな。そんでレイジュもお母さんのこと大好きなんだなー。イチジたちは父さんを機械的に尊敬してるみたいだけど母親のことはどう思ってたんだろ。既に遺伝子的操作で母親への情さえもないのかもなあ。
「だからあなたは 誰よりも優しいのよ」
知ってた!!めっちゃ知ってた~~~!!
あーーよかった私たちの他にもそう思ってる人が本当にいて!!!!
サンジの優しみはこれまでなんどもさりげなく描かれててじわじわと読者の中に浸透していたし、仲間たちも今回の話をきっかけに「サンジは優しいから」「自分を犠牲にして」って言っていたけど、本人にこうしてはっきりと言ってくれて本当にお姉ちゃんありがとう。
サンジの優しさってルフィの優しさとかナミさんの優しさとか、「いい人」の代名詞であるコラさんとかの優しさとも種類が違う気がしている。
どう違うって、ルフィは人に共感して寄り添ってあげられるやさしさで、ナミさんは自分よりもしくは自分と同じ弱い人とかに強くあれといってあげられるやさしさで、コラさんはアガペー。あれはアガペー。
しかしサンジについては、なんだろ、自分を世界から切り取って見ていて、何か自分がその世界に働きかけることで人を助けようとするんじゃなくて自分がその世界から切り取られてすっぱ抜けることで変わらない世界を守ろうとするというか、あー全然意味わからんくなってきたけど、とりあえず自己犠牲の精神では片付けられない優しさ。わからなくてあたりまえだよそんな人いないもの理解不能だよやさしすぎるよサンジ君。
レイジュにこの台詞を言われた後絶句している顔を見るに、自分では思っても見なかったんだろうなぁこれが優しさだなんて気付かずに優しさをばらまける人なんだと思う。
そしてレイジュさんもう初めからあの手この手でサンジのことを救ってくれてたんだなぁこんなにも味方に付いてくれるキャラだとは思わなかった。
ほんっとーに呆れるくらいキャラをそのときそのときの表情そのままに読み込むタイプなのでプリンちゃんもいい子だと信じてたしレイジュさんは登場時色気のある悪の女王みたいに思ってた。
そんでルフィあんたはやっぱり約束を果たさんと気がすまんのね。どうかするとうやむやになってしまいそうなこのしっちゃかめっちゃかな陰謀渦巻く展開でよく貫けるよなぁ。
ルフィのこういう愚直さって直面するたびに何度でもハッとするわ。
そしてそれに応えるサンジ~~~~~サンジおまえってやつも~~~~!!
ルフィの腹の音が彼の目ざましなんだね腹を空かせたルフィをこんなに嬉しそうに見る顔ってないよ!!!
ルフィもルフィで数時間で飢えすぎ!泣き笑いだよ!!!
ぐちゃぐちゃのお弁当をうめぇうめぇと食うルフィにサンジは「うそつけ」って言ってるけどその昔ソラさんがへたくそなサンジのお弁当を美味し~って言ってくれたのをそのまま信じた幼いころの自分にばかやろうな気持ちがあるのかも。大人になった今は言葉を素直に受け取ったりしないぜとでも思ってる様子も見えつつ、でも誰よりもサンジがルフィがうまくないものをうまいと言ったりしないことを知ってるんだろうな。
ああよかった、帰りたいって言った!
サンジの弱音初めてでたねよかったよかった、もう帰れるよ!!帰れるよ!!
今回サンジは自分ひとりじゃどうにもならない強大な力に直面して、根こそぎ自分の根本をへし折られただろうけど、だからこそ新しく作れるものもあるわけで、それをルフィたちと一緒にまた作って行けばいいよレイジュさんの言うとおりバラティエのことは逃げられてから考えればいいよ怖がって足元掬われるよりとりあえず現状逃げおおせてから考えたほうがいい案あるはず。
あーーちょぱたちもサンジと会話できたしひとまず仲間内は手の中に揃ったわけだとめちゃくちゃ安心した。
「みんなを・・・いや ナミさんを」って言い直したのはなんで?ほんとなんで?サンジは自分の女好きキャラをどういうふうに位置づけてるの?
「ナミさんを・・・いや みんなを」って言うならナミさんを危険にさらしたくないほうが第一の意思だと思えるけど、「みんなを」って言った後に「ナミさんを」って言うのはなに?「みんな」のことを考えてると思われるのが恥ずかしいの? ナミさんとロビンちゃんが無事ならよし!野郎共は知らん!っていうスタンスをここでも貫こうとしてるのかな~そのキャラ設定好きだけどサンジ自身は無理しなくていいのに~
でもでもサンジとナミさんの電伝虫でのやりとりはほんっっっと期待したもちろんサンナミ的な意味で!!
サンジもずっとナミさんへのあの対応を気にしてたんだなぁ彼の性格からしたら当たり前のようにも思えるけど。
ありがとう!絶対に許さないでくれてありがとう!絶対に許さないで!そしたらナミさんはサンジにせびりつづけられるし、サンジはずっとナミさんに頭が上がらないよ、そんなサンナミが好きだよ。そういう関係性が一生続くことがこの台詞で約束された気がしている。
ナミさんの言う「恐怖のどん底」ってどこだ。
サンジに睨まれたあの瞬間? ルフィにコンカッセ決めたあの瞬間? 背中向けて行っちゃったとき?
いずれ落ち着いて再会した時、この「恐怖のどん底」と「絶対に許さない」の回収をおねがいします。おねがいしまーす。
ところで歯が欠けてるルフィかわいいな。
牛乳で治っちゃうんだ。ブルックはともかく。
あーーーー楽しくなってきました!よかった!よかった!!
84巻先が見えなくて、いろんな意味でどきどきと心臓に悪かったけれど、85巻は「いいぞやれやれー!!」という見通しで先を楽しみにしていられる!!
多分また何度も窮地に落とされて私の胃と心臓はギリギリ締め付けられることだろうけど、望むところである。
興奮のあまり右手がしびれて、しびれてというか硬直して、はさみを何時間も使い続けた時とかボールを投げ続けた時とか痙攣するあの感覚になっている。何も持っていないのに。
ぶるぶるしながらこれを書きました。
ほんっと揺さぶられるー揺さぶられるわーサンジイヤー始まってどうなることかと思ってもう1年半が経とうとしているけど、ようやく光が見えた気がする。
改めてサンジだいすき、だいすきだよ。
お友達と話してるとき好きなキャラランクで言えばサンジは何位くらい?って訊かれて「13位くらい」とか言った気がするけど推しメンランクで言えば堂々の一位だよ。
小学生の私のハートを盗んだまま未だ返してもらっていません。
夢的な要素とはまた違うサンジの魅力があるのだよなぁ。そういう要素がないとは言い切れないけど。ビジュアル好きだし。
とにかく原作ありがとうございました。ファンでよかった。
明日もう一回読もうと思う。
おわり。
85巻読みました。以下感想はしりがきです。
表紙のソウルキングちょーかっこいい~84巻から今回に掛けてソウルキングの活躍目覚ましすぎない?
「サンジのため想いは一つ」っていう触れ書きの中央にいるレイジュが、85巻を読み終わった後どれだけ効いてきたことか。
チョニキとキャロットの冒険ちょうかわいい。かわいいとかわいいで最強可愛い。
でも二人とも強いってのがみそだよなー。
キャロットはなんのために戦ってるつもりなんだろう。
多分動物的直感となんとなく楽しくなりそうな見通しのうえで一緒に戦ってくれてるんだろな。
サンジがプリンちゃんのために用意したバラ、なんとも力を入れて描かれている・・・フルボディとジャンゴがヒナ嬢のために用意したお花とは大違いじゃないか。
麦わらたちの消息と現状を伝える報告を遮ったサンジの「もういい」にさんじがいっしょけんめいルフィたちへの思いを断ち切ろうとしてるのが伝わるよなーそんなに眉間にしわ寄せてさ。つらいなら帰ろうぜ!
この衛兵はなんなの?なんでそんな猫背なの?ナスがなに?
プリンちゃんのために夜食を用意するサンジの気遣いがつらい。
でもさ、これでサンジが女好きじゃなかったら本当に絶望の絶望の結婚だったわけで、そういう意味では彼の性格が一種好反応起こしてるとも言える気がする。超ポジティブに考えたら。
レイジュの血まみれの姿衝撃的すぎた。
なに!?なにがあったのやめてーーーー
ところでこのコマのレイジュさんの手指とか太腿とか、まるでサンジやナミさんがカリファにつるぴかにされたときみたいな丸みを帯びちゃってるんだけど何かあったの。
妙に肉感あふれる丸みなんだけど、他意はないんだろうな、たぶん。
サンジが作ったお弁当ぉおおおお肉にハンバーガーサンドイッチさんま、パッと見だけで一味の好物詰め込まれてるのが丸わかりだよおおおおおおお「まあいい」の前後に挟まれた「・・・」にサンジの葛藤と後悔が滲んでてつらい。チョコとみかんはチョッパーとナミさんのだね。
ルフィが手を引きちぎって牢から出ようとするの、本当にやりかねないからほんまやめておくれ。
ゼフといいキュロスといいリトルガーデンでのゾロと言い、身体の一部落としても生きてられる思考の人が多すぎて怖いんだよー
ナミさんの「あんたの手がちぎれるのも見たくないわよ」っていう一般人の考えにほっとする。
ゼポ・・・?ゼポ!?ぜったいベポの親族じゃないか~~~熊だし!
ファンキーなくまさんだね、でも死んでしまったの? 今後ペドロとの関係ももっと詳しく明らかになるといいな。
「世界の夜明け」といい、ペドロ→ネコマムシの旦那→坂本竜馬みがしびれる。
ア~~~~~やっぱか~~~~
信じたかったよープリンちゃん君のこと本当に信じたかったよ~~~
三つ目なのはいいよそんなの本質に関係ないからでもその黒い顔はあれだもうだめだ。嫌いじゃないけど思いのほか言うこと言うこと切れ味ある。
そしてそれを外で聞いてるサンジの身体がどんどん冷えてくね。しっかり抱いてる花束がつらい。もうつらいしか言えない。
でも思うにプリンちゃんのいう「空想の世界に生きてなさいマヌケ共」って、ジェルマが憎い人にとっていつか言いたい言葉だろうな~のちでレイジュも言ってるけど過去の栄光にすがってる感ありありだし、おとぎ話の中でも栄華を誇ってる自分たちに酔ってる雰囲気はあるなぁと思っていたのでこの言葉に溜飲が下がる思いがしたのも確か。
しかしンアアアアアアアアアアだめだこのサンジの顔はだめだ。
ナミさんの助けての泣き顔級にフラッシュバックするやつだ。
ここから読み進められなくて一回本を閉じた。
あああああ彼女にだけは言われたくなかったよね一筋の光だったんだよね落ちこぼれ扱いされて家族にもなれなくてこっちから願い下げだと思ってても一人は淋しかったよねそこで「地獄にはさせませんよ」って言ってくれたプリンちゃんがどれだけ希望だったことか。なのにその彼女にここまで言われて、このサンジの泣き顔はたぶんこれまでで一番幼くてさみしい。
食いしばった口元といい、泣きたくなんてないんだよね結婚を断られたのがつらいんじゃなくて、やっぱりどこにもなかった居場所を実感して耐えられんと思ったのよね。
サンジが煙草に火をつけるのは、心を落ち着けたり覚悟を決めたりする心情描写を含むことが多いと思うと、この泣き顔の前に雨の中付くはずのないライターをこすりつづけるむなしさが胸に来る。
正味85巻はここで力尽きる。力尽きたよ・・・でもよんだよ。
メモメモか~三つ目だけじゃなくて能力者だったの。ずるい。
アーーーーージンベイーーーーー親分ーーーー胸熱!!!
ここからちょっと展開が勢いづくよね好転好転!!
ナミさんのニューファッションかわいい!表紙を見ると鮮やかな青色なのか。
レイジュが思いのほか冷静で、いい意味でどきどきする。ジェルマについての見解がレイジュを境にこうもはっきり分かれているのなら希望はあるもんね。
サンジよりもレイジュの方が今後の展開への期待値は大きいのかもしれない。
思うに、どうにかしたい又は滅んでしまえっていう気持ちは結構前からレイジュの中で育ってたのかなぁ。
彼女の中にある情は、それを持たない兄弟たちと育つうえでレイジュにとっていいことばかりではなかっただろうなぁむしろ邪魔でさえあったかも。冷酷になり切れたら辛い思いもしなかったし。でも自分の中にあるひとつぶの情のおかげで世界のどこかであの優しい弟が生きているということも、レイジュを生かしつづけたんじゃないかと思う。
「父と母の大ゲンカ」・・・ソラさんやっぱり反対してくれたんだ、お母さんなんだ、4人を4人とも普通の人間の子にしたかったんだーあたりまえやないかな。
だめだめルージュさんといい子を守るために自分の命を賭しすぎ!!!でもありがとう!ありがとう!!!!
「おかしいですな・・・サンジ様だけ・・・」のコマの幼児サンジ!!!かわいすぎか~~~~~~~!!!!
屈託のない笑顔!みたことある!その顔見たことあるよ!!船でいっつもそんな顔してたじゃないか~~~~~
レイジュはずっと近くでこの顔を見てたんだな。そんでレイジュもお母さんのこと大好きなんだなー。イチジたちは父さんを機械的に尊敬してるみたいだけど母親のことはどう思ってたんだろ。既に遺伝子的操作で母親への情さえもないのかもなあ。
「だからあなたは 誰よりも優しいのよ」
知ってた!!めっちゃ知ってた~~~!!
あーーよかった私たちの他にもそう思ってる人が本当にいて!!!!
サンジの優しみはこれまでなんどもさりげなく描かれててじわじわと読者の中に浸透していたし、仲間たちも今回の話をきっかけに「サンジは優しいから」「自分を犠牲にして」って言っていたけど、本人にこうしてはっきりと言ってくれて本当にお姉ちゃんありがとう。
サンジの優しさってルフィの優しさとかナミさんの優しさとか、「いい人」の代名詞であるコラさんとかの優しさとも種類が違う気がしている。
どう違うって、ルフィは人に共感して寄り添ってあげられるやさしさで、ナミさんは自分よりもしくは自分と同じ弱い人とかに強くあれといってあげられるやさしさで、コラさんはアガペー。あれはアガペー。
しかしサンジについては、なんだろ、自分を世界から切り取って見ていて、何か自分がその世界に働きかけることで人を助けようとするんじゃなくて自分がその世界から切り取られてすっぱ抜けることで変わらない世界を守ろうとするというか、あー全然意味わからんくなってきたけど、とりあえず自己犠牲の精神では片付けられない優しさ。わからなくてあたりまえだよそんな人いないもの理解不能だよやさしすぎるよサンジ君。
レイジュにこの台詞を言われた後絶句している顔を見るに、自分では思っても見なかったんだろうなぁこれが優しさだなんて気付かずに優しさをばらまける人なんだと思う。
そしてレイジュさんもう初めからあの手この手でサンジのことを救ってくれてたんだなぁこんなにも味方に付いてくれるキャラだとは思わなかった。
ほんっとーに呆れるくらいキャラをそのときそのときの表情そのままに読み込むタイプなのでプリンちゃんもいい子だと信じてたしレイジュさんは登場時色気のある悪の女王みたいに思ってた。
そんでルフィあんたはやっぱり約束を果たさんと気がすまんのね。どうかするとうやむやになってしまいそうなこのしっちゃかめっちゃかな陰謀渦巻く展開でよく貫けるよなぁ。
ルフィのこういう愚直さって直面するたびに何度でもハッとするわ。
そしてそれに応えるサンジ~~~~~サンジおまえってやつも~~~~!!
ルフィの腹の音が彼の目ざましなんだね腹を空かせたルフィをこんなに嬉しそうに見る顔ってないよ!!!
ルフィもルフィで数時間で飢えすぎ!泣き笑いだよ!!!
ぐちゃぐちゃのお弁当をうめぇうめぇと食うルフィにサンジは「うそつけ」って言ってるけどその昔ソラさんがへたくそなサンジのお弁当を美味し~って言ってくれたのをそのまま信じた幼いころの自分にばかやろうな気持ちがあるのかも。大人になった今は言葉を素直に受け取ったりしないぜとでも思ってる様子も見えつつ、でも誰よりもサンジがルフィがうまくないものをうまいと言ったりしないことを知ってるんだろうな。
ああよかった、帰りたいって言った!
サンジの弱音初めてでたねよかったよかった、もう帰れるよ!!帰れるよ!!
今回サンジは自分ひとりじゃどうにもならない強大な力に直面して、根こそぎ自分の根本をへし折られただろうけど、だからこそ新しく作れるものもあるわけで、それをルフィたちと一緒にまた作って行けばいいよレイジュさんの言うとおりバラティエのことは逃げられてから考えればいいよ怖がって足元掬われるよりとりあえず現状逃げおおせてから考えたほうがいい案あるはず。
あーーちょぱたちもサンジと会話できたしひとまず仲間内は手の中に揃ったわけだとめちゃくちゃ安心した。
「みんなを・・・いや ナミさんを」って言い直したのはなんで?ほんとなんで?サンジは自分の女好きキャラをどういうふうに位置づけてるの?
「ナミさんを・・・いや みんなを」って言うならナミさんを危険にさらしたくないほうが第一の意思だと思えるけど、「みんなを」って言った後に「ナミさんを」って言うのはなに?「みんな」のことを考えてると思われるのが恥ずかしいの? ナミさんとロビンちゃんが無事ならよし!野郎共は知らん!っていうスタンスをここでも貫こうとしてるのかな~そのキャラ設定好きだけどサンジ自身は無理しなくていいのに~
でもでもサンジとナミさんの電伝虫でのやりとりはほんっっっと期待したもちろんサンナミ的な意味で!!
サンジもずっとナミさんへのあの対応を気にしてたんだなぁ彼の性格からしたら当たり前のようにも思えるけど。
ありがとう!絶対に許さないでくれてありがとう!絶対に許さないで!そしたらナミさんはサンジにせびりつづけられるし、サンジはずっとナミさんに頭が上がらないよ、そんなサンナミが好きだよ。そういう関係性が一生続くことがこの台詞で約束された気がしている。
ナミさんの言う「恐怖のどん底」ってどこだ。
サンジに睨まれたあの瞬間? ルフィにコンカッセ決めたあの瞬間? 背中向けて行っちゃったとき?
いずれ落ち着いて再会した時、この「恐怖のどん底」と「絶対に許さない」の回収をおねがいします。おねがいしまーす。
ところで歯が欠けてるルフィかわいいな。
牛乳で治っちゃうんだ。ブルックはともかく。
あーーーー楽しくなってきました!よかった!よかった!!
84巻先が見えなくて、いろんな意味でどきどきと心臓に悪かったけれど、85巻は「いいぞやれやれー!!」という見通しで先を楽しみにしていられる!!
多分また何度も窮地に落とされて私の胃と心臓はギリギリ締め付けられることだろうけど、望むところである。
興奮のあまり右手がしびれて、しびれてというか硬直して、はさみを何時間も使い続けた時とかボールを投げ続けた時とか痙攣するあの感覚になっている。何も持っていないのに。
ぶるぶるしながらこれを書きました。
ほんっと揺さぶられるー揺さぶられるわーサンジイヤー始まってどうなることかと思ってもう1年半が経とうとしているけど、ようやく光が見えた気がする。
改めてサンジだいすき、だいすきだよ。
お友達と話してるとき好きなキャラランクで言えばサンジは何位くらい?って訊かれて「13位くらい」とか言った気がするけど推しメンランクで言えば堂々の一位だよ。
小学生の私のハートを盗んだまま未だ返してもらっていません。
夢的な要素とはまた違うサンジの魅力があるのだよなぁ。そういう要素がないとは言い切れないけど。ビジュアル好きだし。
とにかく原作ありがとうございました。ファンでよかった。
明日もう一回読もうと思う。
おわり。
5.9発行予定のペルビビ小説本のご案内です。
「 私の小鳥 」 / 文庫サイズ86ページ / 400円
シンプルーーーーー
始まりはペルの生還。
復興の進むアラバスタで王女として生きるビビが
帰ってきたペルへ思いをがつがつぶつけるも、
あっさりと「そのようなことは言ってはなりません」と一蹴される。
落ち込む暇もなく舞い込む王宮での仕事や
新聞で見る麦わらの一味の様子に心揺さぶられながら、
それでも抑えきれないペルへの思いに、どうにかして関係を変えてやろうと
奮闘する王女のお話。
サンナミに比べてずっと需要が少ないことをほんのり気にしつつも
ずっと書きたかったペルビビを始めて本にしたので、
長期休暇中にでもぜひ読んでもらえたらと思いまして、
本文の半分をpixivで公開しています。
→サンプルページ(pixivへ飛びます)
ペルビビはあんまり興味なくても、
ビビちゃんが好きだとかアラバスタ編が好きだという方には
ぜひ半分だけでも読んでもらいたいと思い、二分の一公開とさせていただきました。
もう、ほんと、手前味噌で恐縮なんですが、
是非読んでほしいと思っています。
書き上げたとき、もしかすると書き上げる前から、
あぁなんていい話なんだろうとずっとずっと思いながら書けたことが
もうそれだけで十分なくらい、私の中で大きくて、
こんなにも私が好きだと思える話なら他の人にも読んでもらいたいのは道理だなと。
私が書いているから私の好みドンピシャなのは当然なんですが。
良ければ、ぜひ、お願いします、読んでください。
けっこうおもしろいよ!
通販ページはこちらから。準備出来次第リンクします。
が、いつもよりさらに小部数での発行であることと
発行日が平日で(凡ミス!)慌ただしいおそれありということから、
もし、もし今の時点でご注文するお気持ちの方がいらっしゃれば
ご連絡いただけたらGW中先に発送の準備をさせてもらおうと思っています。
その場合は、通販ページのメールフォームにてご連絡ください。
また、ご希望の方には手作り感あふれる帯をつけさせていただこうと考えています。
デザインは届いてのお楽しみ。
上手に出来なかったらなにも付きません。まことに遺憾ながら。
あっ通販のみでの取り扱いとなる予定で、イベント等に持ち込むことは
おそらく一切ありませんのでご了承ください。
よろしくお願いします!
「 私の小鳥 」 / 文庫サイズ86ページ / 400円
シンプルーーーーー
始まりはペルの生還。
復興の進むアラバスタで王女として生きるビビが
帰ってきたペルへ思いをがつがつぶつけるも、
あっさりと「そのようなことは言ってはなりません」と一蹴される。
落ち込む暇もなく舞い込む王宮での仕事や
新聞で見る麦わらの一味の様子に心揺さぶられながら、
それでも抑えきれないペルへの思いに、どうにかして関係を変えてやろうと
奮闘する王女のお話。
サンナミに比べてずっと需要が少ないことをほんのり気にしつつも
ずっと書きたかったペルビビを始めて本にしたので、
長期休暇中にでもぜひ読んでもらえたらと思いまして、
本文の半分をpixivで公開しています。
→サンプルページ(pixivへ飛びます)
ペルビビはあんまり興味なくても、
ビビちゃんが好きだとかアラバスタ編が好きだという方には
ぜひ半分だけでも読んでもらいたいと思い、二分の一公開とさせていただきました。
もう、ほんと、手前味噌で恐縮なんですが、
是非読んでほしいと思っています。
書き上げたとき、もしかすると書き上げる前から、
あぁなんていい話なんだろうとずっとずっと思いながら書けたことが
もうそれだけで十分なくらい、私の中で大きくて、
こんなにも私が好きだと思える話なら他の人にも読んでもらいたいのは道理だなと。
私が書いているから私の好みドンピシャなのは当然なんですが。
良ければ、ぜひ、お願いします、読んでください。
けっこうおもしろいよ!
通販ページはこちらから。準備出来次第リンクします。
が、いつもよりさらに小部数での発行であることと
発行日が平日で(凡ミス!)慌ただしいおそれありということから、
もし、もし今の時点でご注文するお気持ちの方がいらっしゃれば
ご連絡いただけたらGW中先に発送の準備をさせてもらおうと思っています。
その場合は、通販ページのメールフォームにてご連絡ください。
また、ご希望の方には手作り感あふれる帯をつけさせていただこうと考えています。
デザインは届いてのお楽しみ。
上手に出来なかったらなにも付きません。まことに遺憾ながら。
あっ通販のみでの取り扱いとなる予定で、イベント等に持ち込むことは
おそらく一切ありませんのでご了承ください。
よろしくお願いします!
←
※他のキャラとの絡みを若干匂わせる表現があります。苦手な方はご注意ください。
頭が痛い。
どうんどうんと鉄球が後頭部のあたりで跳ねている。重い痛みの機嫌を取りながらゆっくりと身体を起こした。
枕元の携帯を引き寄せて時間を確かめると朝の十時。シーツはまだぴんと張って真新しいが、自分のベッドに潜り込んだ記憶がなかった。
カーテンのない窓からさんさんと日がさして、緑の影が揺れている。のどかな午前がこの部屋の外で静かに進行していて、自分だけが取り残されて頭痛を抱えているように思えた。
はたと、ナミさん、と女性の名前が口に出た。
ナミさん、そうだ、ナミさんは。
下半身の倦怠感がじわっとせりあがってきて、昨夜の出来事を断片的に思い出させる。
灯りの消えたリビングで服を脱がせた。舌を絡めて、ソファに押し倒した。
細くてやわらかい彼女の腕がおれの身体にぴったり絡み付いて引き寄せる。
越してきて一日目のおれが周囲の状況に不慣れなのに対し、彼女だけが見知った場所でてきぱきとおれを誘導してすんなりと事を進行させた。
めがねをはずし、挑戦的におれを見上げたこげ茶の瞳を思い出す。
あれからどうしたっけ。
ぬるぬると記憶が少しずつよみがえる。
事を成し、ぐったり重なり合ったまま息を整え、そうだおれたちはそれから「それじゃあおやすみ」と別れて各々の部屋に戻ったのだった。
久しぶりにしたな、セックス。
あけすけな感想と裏腹に、やわらかくて温度の高い彼女の身体は思い出すだけで坐骨の辺りが痺れた。
着替えていたらコミカルな音で腹が鳴り、そういや買い出しから始めねばならんのだったとげんなりする。
調理器具だけあったところで食材がなければ手も足も出ない。
仕事の時間までまだ半日あるので出かけることにして、未だ殺風景な部屋を出た。
三階から二階に下りたところで、ちょうど二階の廊下から階段に差し掛かろうとしている黒髪の女性とはちあった。
ふとこちらに顔を向けたレディは、目を疑うほどの美女である。
「あら」
「こりゃびっくりだ。引っ越し早々家の中でこんな美人に巡り合うなんて」
あらあら、と彼女は言葉を続け、ふふっと短く笑って先に階段を降り始めた。
「あなたが引っ越してきた人ね。昨日」
「あぁ。サンジと言います。麗しの君は?」
「ニコ・ロビンよ。あなたの部屋の斜め下に住んでいるの」
「あぁロビンちゃん、僕はなんて幸運なんだ。君のような美しい人とひとつ屋根の下で暮らせるなんて」
彼女が階段を降りたったところでさっと前に回り、その手を取ってそっと口づける。
ロビンちゃんは慣れた様子で依然として「あらあら」と口ずさむように言ってから、「よろしくね」と笑った。
「今からお出かけかい?」
「いえ、私は珈琲のお湯を沸かしに」
階段を降りてすぐのリビングを、ロビンちゃんがひょいと覗き込む。
そして部屋の中にいるらしい誰かへ「おはよう」と声をかけた。
「おはよー」と闊達としたこの声はナミさんだ。
「会った? サンジ君」
「えぇ。面白い人」
ロビンちゃんがおれを放ってリビングキッチンへと入って行くので、おれもなんとなくあとへ続く。
ソファの、昨日おれたちが絡まり合ったソファの、L字の角の部分でナミさんは昨日のように足を伸ばして座っていた。
脚の上にはノートパソコン。
「おはよ」
ナミさんが言う。
「おはようナミさん。──あぁこの部屋には太陽がふたつもあるね」
眩しくて目が開かないよ、といえば「しっかり開いてるじゃない」とナミさんは笑った。
シュンシュンと、ロビンちゃんが火を入れたケトルが音をたてはじめる。
「どこか行くの?」
「え、あぁ、買い出しに。食料とか家具とかいろいろ、なんにもねぇからさ」
「そ、大事ね」
「いってらっしゃい」とナミさんとロビンちゃんに口を揃えて言われてしまい、おれはガキのように小さな声で「行ってきます」と呟く。
リビングを出かけたところで「あそうだ待ってサンジ君」と今度は呼び止められた。
「今夜たまたまここの住人みんな揃うみたい。顔合わせもかねて、一緒に夕食とらない? サンジ君の料理、また食べたいなぁ。なんて、ゲストはあんたなんだけど」
どう? と可愛く首を傾げられたが、おれは「あー」と不明瞭な声を出した。
夜は仕事だ。
「ごめん、今日も仕事で」
「あそっか。あんたこれからなんだったわね。んーじゃあ昼過ぎからいるやつだけで始めましょうよ。実は歓迎会しようと思って、お酒とかいろいろ注文しちゃったのよね」
ナミったら気が早いのね、とロビンちゃんが遠くで笑う。
「だってルフィが宴だー! って昨日うるさくて。ね、サンジ君どう?」
「あーそりゃ嬉しいよ。喜んで」
「やった。仕事前に騒いで悪いけど、今日だけね」
私も飲む口実ができてうれしい、とナミさんは眼鏡の下で屈託なく笑った。
昨夜おれの首に腕を回した時の魔物的な熱っぽさは微塵もない。
「じゃ、そゆことで。呼び止めてごめんね」
改めていってらっしゃいと送りだされ、きゃらきゃらと続くレディ達のお喋りを背中に受けてアパートを出た。
外の日差しは歌うようにやわらかく、白く空気の中でほどけている。意識を吸い取られそうな気持ちよさに春を感じながら、それと似通う別の種類の気持ちよさを思い出す。彼女の肌の感触は春の空気に似ていた。
昨夜のあれは、夢だったんだろうか。
夢だったとしたらそれはそれで、
「ラッキーだな」
*
買い込んだのは最寄りのスーパーで食材を数日分。携帯で近所を検索すると商店街があったのでそちらへ向かい、肉は肉屋で、野菜は八百屋で、魚は魚屋でといった具合に買い出しを済ませていけばあっという間に両手は重い荷物で塞がってしまった。
まだ煙草のストックも買いたかったのだがもう持てそうにない。アパートのドアを開けるのも難儀なくらいだった。
身体で押し開けるようにして中に入ると、なにやらリビングの方がにぎやかだ。
なにはともあれ食材をしまわないといけないので入って行くと、真正面にいたルフィが机越しに「よーっす!」とおれに手を上げてみせた。
「サンジ! おけーり!」
ただいま、というのを一瞬ためらううちに、立て続けにナミさんとロビンちゃんが「おかえりなさい」と声を揃えてこちらを向いた。
「スーパーの場所分かった?」
「あぁ。商店街も近くていいな」
「そっちの方までいったの? 随分な荷物」
日用品だけ部屋に上げて来るよと言って、食材を置いてリビングを出た。やけに階段がぴかぴかと光ってみえて、おれが出かけている間に掃除をしてくれたんだろうかと思う。管理人だというナミさんがしてくれたのか、ハウスキーピングでも入ってるんだろうかと考えながら部屋に適当に買い出しの品を放り込み、すぐにリビングへ戻った。
ダイニングテーブルにはたくさんの酒やジュースが並び、いくつかはすでに開いているようだった。
ソファの方へ目を遣ると、見知らぬ顔がひとつ増えている。おれと目が合うと「お」という具合に目を丸くして「よっす」と男は言った。
「新入りよろしくな。おれウソップ」
「あぁ、よろしく」
人好きのする顔でにっと笑った鼻の長い男は、「ほんじゃまー主役も戻ったしもう一度乾杯しようぜ」と手元のグラスを握った。
「ばか、もう一度って言ったら先に始めてたことばれるじゃない」
「今更だろうが。ほらサンジもなんか飲めよ」
ナミさんに脇腹をつつかれながら、ウソップが顎で机の上を指し示す。ごったがえしているそこから適当にスミノフの瓶を抜き取った。
ルフィが「おれもサンジと同じのがいい」と言ってポテトチップスの大袋を抱えながらテーブルの方までやってくる。色違いのスミノフを手渡してやると、さんきゅーと言ってがりっと栓を開けた。
ロビンちゃんが大きな皿にピザ一枚をまるまる乗せてテーブルに運んできてくれた、それを見てルフィがうひょーと歓声を上げる。
ウソップが乾杯の音頭を取った。
「改めまして、はじめましてサンジ君。ようこそおれたちの城へ。仲良くやろうぜ!」
がつん、と勢いよくグラスとボトルがぶつかりあい、ぱんと弾けるみたいに心地よく宴が始まった。
ルフィは始まった途端、手にしていたスミノフのボトルをさっと逆さにしてするすると喉へと流し込んだ。
子どものようなあどけない顔のくせにいける口かよ、と内心驚いていると、しばらくがははがははと笑いながら大口を開けて吸い込むみたいに食べていたかと思えば、三十分もしないうちにソファにこつんと倒れ込んだ。
「おい、おまえ」
慌ててルフィの肩に手をかけて身体をひっくり返す。店でこんなふうに急性アルコール中毒を起こす奴を何度か見たことがある。しかしルフィはすこやかな顔で、口元からよだれは垂らしているものの至って健康そうに少し顔を赤らめて寝ていた。
「いーのよサンジ君ほっといて」
ナミさんがおれの手から空瓶を取り去り、代わりに冷えて結露した缶ビールを持たせた。
「いつもこうなの。人一倍酒に弱いくせに人一倍楽しくなって飲んじゃうから、すぐ潰れるの。転がしといて大丈夫よ」
「へえ」
そういえば随分気の知れた仲間のようだが、いつから一緒に住んでいるのだろうか。浮かんだ疑問をそのまま口にすると、ナミさんが「どうだっけ」というように周りを見渡した。
「私がサンジの次に新入りなのよね。ちょうど3か月前にここへ来たの」とロビンちゃんが手の内のグラスをかわいがるみたいにころころと揺らして言う。
「もともとここ、ルフィのおじいさんの家なの。だから家主の直系はルフィにあたるんだけど、一番初めに住み始めたのは私なの。ルフィのおじいさんがここを破格で貸しにだしてね。初めは姉と二人で住んでたんだけど、姉が仕事の関係で出て行ったからひとりになっちゃって。改修したから今はきれいだけど、当時は相当ぼろかったのよここ。だから私も出ようかなって思ったときに、ルフィのおじいさんがそれならアパート管理しないかって提案してくれて。改修費用とかもだすから、管理人になってくれって」
ほら私、ハウスワーカーだから、とナミさんはごきゅごきゅ喉を鳴らしておれに渡したのと同じ銘柄のビールを飲んだ。酒のせいか随分饒舌だ。
「そしたらおじいさんの孫のルフィがまず入ることが決まって、次にゾロ、ウソップ、ロビンとやってきたってわけ。だから私が一番古株で、5年くらい前から住んでる」
「元から知り合いってわけじゃねぇんだ」
「そ。誰一人として知り合いだったわけじゃないの。みんなここで初めましてしたのよ」
「ね」とロビンちゃんと視線を交わし合うナミさんは、上機嫌な様子でソファに腰かけ、ルフィを邪魔そうに押しのけた。
「せっかくだから自己紹介しておく?」
とてもいい悪戯を思いついたみたいな魅惑的な顔でナミさんが顔を上げたとき、ガツンバタンと玄関扉が開く乱暴な音が響いた。足元を揺るがして、また扉が閉まる。みんなが一斉にそちらへ顔を向けた。
あぁ、とロビンちゃんが全てを悟ったみたいな声を洩らすが、なんのことだかさっぱりわからない。
すぐに玄関先に続くドアから姿を現したのは、今この場にいなかったゾロだった。
昨日の昼間初めて出会ったときよりも数倍人相を悪くして、しかもどうやら息を切らしているような切羽詰まった空気さえまとい、ゾロは無言でリビングの入り口に立つと何かを探すようにおれたちを見渡した。
「おけーり」とウソップが小さく声をかける。
ナミさんが「ゾロ」とこぼした。
するとゾロの視線の焦点が、ぱっとナミさんに合わさる。
ナミ、とゾロの口が動いた。
「来い」
唸るようにそう言うと、ゾロは黙って階段の方へと消えた。あんなに乱暴な音を立てて入ってきたくせに、階段を上る足音はほとんどしなかった。
ナミさんがすっと立ち上がる。
「もー命令すんなっての」
軽い口調とは裏腹に、ナミさんの唇がきゅっと締まる。同時にじわっと茶色い目から滲む熱がちりっと空気中に漏れ出して、息を呑んだ。
「ごめんねー、ちょっと」と言って、ナミさんはゾロを追いかけて部屋を出ていった。
彼女が消えた部屋は、一瞬忘れられたみたいにしんと静まり返った。
「お、あっと、すまねぇな、ゾロが勝手言ってよぉ」
ウソップが場を取り持つみたいに必要以上に手をばたつかせて声をあげる。
ロビンちゃんは黙って肩をすくめて、「仕方がないのよ」と身振りで示した。
一体何が仕方がないのかおれにはさっぱりで、彼女が座っていたソファのスペースがぽかりと空いていることにばかり意識が向かう。
「あのふたり、なんかあんのか」
聞きたくもないくせに口をついていた。たぶんものすごく、聞きたかったんだ。
ウソップは「やー、知らん、ほんと、知らね」ともごもご口ごもり、ロビンちゃんも「はっきりと聞いたことがないから」とまたもや肩をすくめる。
「なんかごめんなー、空気こわしちまって」
ウソップが諦めるみたいに肩を落とすので、なぜかおれが慰める形になって「気にすんな」と言った。
相変わらずルフィは部屋の空気を意にも介さず口をあけて寝こけている。
「ほんとにおれたちあのふたりがどうとか、知らねぇんだ。おれは昼間仕事で外に出てるし、ナミは一日家だし。ゾロは日雇いみてぇな仕事で食いつないでるから不規則でさ。おれら仲いいけど、生活リズムは誰一人合わねェんだよ」
「ふーん」
なんの仕事してんの、とウソップに聞いてみる。
「おれ? おれ市役所。そこの公園に入ってるプレハブの仮設図書館。今はあそこにいんだ」
「へぇ。服務規程とかねぇの。そのパーマいいのかよ」
「うっせ、こりゃ地毛だ」
じゃれるみたいにウソップがおれに蹴りを入れ笑うので、ロビンちゃんもおれも笑う。場の空気が少しほどけて、おれはナミさんに渡されたまま開けていないビールをテーブルに置いた。
「飲まないの?」
「夜から仕事でしこたま飲まなきゃなんねェんだ。節制するわけじゃねぇけど、身体もたねぇから」
「もしかして、ホストクラブ?」
耳慣れない単語を舌先に乗せるみたいにロビンちゃんが言う。
おれはにっこり笑い、「店に遊びに来てくれる? ロビンちゃんなら指名がなくてもとんでいくよ」と胸に手をあて一礼する。
ふふ、と鼻先で笑った彼女は「今度連れて行ってほしい」とまんざらお愛想ではなさそうな口調で言った。
そのままおれたちはゆるゆると会話して、結局始まった時みたいな和気藹々とした弾む空気は取り戻せなかったが、三人でのらくらと話すのは案外楽しかった。
「そろそろ行かねえと」
頃合いを見計らって立ち上がる。
ナミさんは戻ってこなかった。
3階の自分の部屋まで行くのに、奴らがどの部屋にいるのか耳を澄ましてしまう下世話なじぶんに嫌悪感を感じる。
ネクタイを締めて階下へ降りると、リビングから挽きたてのコーヒーの香りがした。
顔を覗かせると、律儀に机の上を片した2人が向かい合ってコーヒーを飲んでいる。
「行ってらっしゃい」
ロビンちゃんが怪しく微笑んで、ウソップが爽やかな朝の顔で俺に手を振った。
「がんばれよー」
家を出て、まだ明るい空の下駅まで歩いていると、いつも感じる仕事への億劫さがなぜか上塗りされたようにぼやけて見えた。
それ以上に、「ナミ」と鋭くまっすぐに飛び込んできたゾロの声と、それより早く「ゾロ」と呟いた彼女の声がいつまでもいつまでも耳にこびりついて嫌な余韻を残していた。
一度抱いたくらいで、とナミさんは鼻で笑うかもしれない。
肩をすぼめて笑われるだけの自分が妙にはっきりと想像できて、ますます嫌な気分になった。
一九時の開店と同時にお得意さんがどばっと押し寄せて、彼女たちの隣に座りながら今日のメールを返せなかった言い訳を何度も何度も口にした。
仕事前に送らなければいけない営業用のメールは、彼女たちにとって自分の男からの愛の知らせに他ならない。
それを怠っては、捨てられるのはこちらに決まっているのだ。
お詫びと言ってポケットマネーでボトルを空けるのを数人に繰り返した。二本目からは客の支払いになるものの、数人分ともなればそこそこ大きな金額になる。
メール1つや2つがおれの数週間ぶんの生活費をあっという間に食い尽くして、穴だらけになった身体をおれは彼女たちに笑顔で提供する。
いつかふさがるのだろうかと、あてどない未来を夢想する。
ちっとも具体的な想像がつかないじぶんに、きっと案外今がしあわせなのだと納得するのをここ数年繰り返している。
「サンジくん」
するっと太ももの上を滑った薄い手のひらにハッとした。
その手から腕をたどって顔を見上げると、思い浮かんだ顔とは似ても似つかない別の女性で、一瞬あれ、と戸惑う。
勘違いしたのはその声と薄い手のひらが似ていたというただそれだけで、隣の彼女は太ももからするするとおれの身体を撫であげてぴたりと身を寄せた。
「お店、一時で終わりでしょ? 今日こそ付き合ってよ」
「うん? あー、うん、そうだね、どこ行こっか」
彼女はそんなの決まってると言わんばかりにうふふと笑うだけだった。
早く店じまいになんねーかなーと思う。
それまでにあと半分残ったこのボトルを空けさせて、次のボトルキープの札に名前を書かせ、程よく気持ちよくなった彼女がおれとの約束なんて忘れて店を出て行くのを笑顔で見送る算段をつける。
レディは好きだ。
すごく好きだ。
柔らかく、しなやかでしたたかで、欲望を満たすまでの緻密な駆け引きを楽しむ軽やかな身の施しには惚れ惚れする。
空きそうなグラスに氷を足し、酒を注ぎ、ころんと音を立ててステアリングするその一連の動作に心がこもらないのは、そんなレディが好きだという気持ちとは別の階層に属しているような気がしている。
そしてまた、この数日胸を浸した新しい生活とそこで出会った彼女へのむず痒い思いもまた、同じところにはないのだろう。
→
※他のキャラとの絡みを若干匂わせる表現があります。苦手な方はご注意ください。
頭が痛い。
どうんどうんと鉄球が後頭部のあたりで跳ねている。重い痛みの機嫌を取りながらゆっくりと身体を起こした。
枕元の携帯を引き寄せて時間を確かめると朝の十時。シーツはまだぴんと張って真新しいが、自分のベッドに潜り込んだ記憶がなかった。
カーテンのない窓からさんさんと日がさして、緑の影が揺れている。のどかな午前がこの部屋の外で静かに進行していて、自分だけが取り残されて頭痛を抱えているように思えた。
はたと、ナミさん、と女性の名前が口に出た。
ナミさん、そうだ、ナミさんは。
下半身の倦怠感がじわっとせりあがってきて、昨夜の出来事を断片的に思い出させる。
灯りの消えたリビングで服を脱がせた。舌を絡めて、ソファに押し倒した。
細くてやわらかい彼女の腕がおれの身体にぴったり絡み付いて引き寄せる。
越してきて一日目のおれが周囲の状況に不慣れなのに対し、彼女だけが見知った場所でてきぱきとおれを誘導してすんなりと事を進行させた。
めがねをはずし、挑戦的におれを見上げたこげ茶の瞳を思い出す。
あれからどうしたっけ。
ぬるぬると記憶が少しずつよみがえる。
事を成し、ぐったり重なり合ったまま息を整え、そうだおれたちはそれから「それじゃあおやすみ」と別れて各々の部屋に戻ったのだった。
久しぶりにしたな、セックス。
あけすけな感想と裏腹に、やわらかくて温度の高い彼女の身体は思い出すだけで坐骨の辺りが痺れた。
着替えていたらコミカルな音で腹が鳴り、そういや買い出しから始めねばならんのだったとげんなりする。
調理器具だけあったところで食材がなければ手も足も出ない。
仕事の時間までまだ半日あるので出かけることにして、未だ殺風景な部屋を出た。
三階から二階に下りたところで、ちょうど二階の廊下から階段に差し掛かろうとしている黒髪の女性とはちあった。
ふとこちらに顔を向けたレディは、目を疑うほどの美女である。
「あら」
「こりゃびっくりだ。引っ越し早々家の中でこんな美人に巡り合うなんて」
あらあら、と彼女は言葉を続け、ふふっと短く笑って先に階段を降り始めた。
「あなたが引っ越してきた人ね。昨日」
「あぁ。サンジと言います。麗しの君は?」
「ニコ・ロビンよ。あなたの部屋の斜め下に住んでいるの」
「あぁロビンちゃん、僕はなんて幸運なんだ。君のような美しい人とひとつ屋根の下で暮らせるなんて」
彼女が階段を降りたったところでさっと前に回り、その手を取ってそっと口づける。
ロビンちゃんは慣れた様子で依然として「あらあら」と口ずさむように言ってから、「よろしくね」と笑った。
「今からお出かけかい?」
「いえ、私は珈琲のお湯を沸かしに」
階段を降りてすぐのリビングを、ロビンちゃんがひょいと覗き込む。
そして部屋の中にいるらしい誰かへ「おはよう」と声をかけた。
「おはよー」と闊達としたこの声はナミさんだ。
「会った? サンジ君」
「えぇ。面白い人」
ロビンちゃんがおれを放ってリビングキッチンへと入って行くので、おれもなんとなくあとへ続く。
ソファの、昨日おれたちが絡まり合ったソファの、L字の角の部分でナミさんは昨日のように足を伸ばして座っていた。
脚の上にはノートパソコン。
「おはよ」
ナミさんが言う。
「おはようナミさん。──あぁこの部屋には太陽がふたつもあるね」
眩しくて目が開かないよ、といえば「しっかり開いてるじゃない」とナミさんは笑った。
シュンシュンと、ロビンちゃんが火を入れたケトルが音をたてはじめる。
「どこか行くの?」
「え、あぁ、買い出しに。食料とか家具とかいろいろ、なんにもねぇからさ」
「そ、大事ね」
「いってらっしゃい」とナミさんとロビンちゃんに口を揃えて言われてしまい、おれはガキのように小さな声で「行ってきます」と呟く。
リビングを出かけたところで「あそうだ待ってサンジ君」と今度は呼び止められた。
「今夜たまたまここの住人みんな揃うみたい。顔合わせもかねて、一緒に夕食とらない? サンジ君の料理、また食べたいなぁ。なんて、ゲストはあんたなんだけど」
どう? と可愛く首を傾げられたが、おれは「あー」と不明瞭な声を出した。
夜は仕事だ。
「ごめん、今日も仕事で」
「あそっか。あんたこれからなんだったわね。んーじゃあ昼過ぎからいるやつだけで始めましょうよ。実は歓迎会しようと思って、お酒とかいろいろ注文しちゃったのよね」
ナミったら気が早いのね、とロビンちゃんが遠くで笑う。
「だってルフィが宴だー! って昨日うるさくて。ね、サンジ君どう?」
「あーそりゃ嬉しいよ。喜んで」
「やった。仕事前に騒いで悪いけど、今日だけね」
私も飲む口実ができてうれしい、とナミさんは眼鏡の下で屈託なく笑った。
昨夜おれの首に腕を回した時の魔物的な熱っぽさは微塵もない。
「じゃ、そゆことで。呼び止めてごめんね」
改めていってらっしゃいと送りだされ、きゃらきゃらと続くレディ達のお喋りを背中に受けてアパートを出た。
外の日差しは歌うようにやわらかく、白く空気の中でほどけている。意識を吸い取られそうな気持ちよさに春を感じながら、それと似通う別の種類の気持ちよさを思い出す。彼女の肌の感触は春の空気に似ていた。
昨夜のあれは、夢だったんだろうか。
夢だったとしたらそれはそれで、
「ラッキーだな」
*
買い込んだのは最寄りのスーパーで食材を数日分。携帯で近所を検索すると商店街があったのでそちらへ向かい、肉は肉屋で、野菜は八百屋で、魚は魚屋でといった具合に買い出しを済ませていけばあっという間に両手は重い荷物で塞がってしまった。
まだ煙草のストックも買いたかったのだがもう持てそうにない。アパートのドアを開けるのも難儀なくらいだった。
身体で押し開けるようにして中に入ると、なにやらリビングの方がにぎやかだ。
なにはともあれ食材をしまわないといけないので入って行くと、真正面にいたルフィが机越しに「よーっす!」とおれに手を上げてみせた。
「サンジ! おけーり!」
ただいま、というのを一瞬ためらううちに、立て続けにナミさんとロビンちゃんが「おかえりなさい」と声を揃えてこちらを向いた。
「スーパーの場所分かった?」
「あぁ。商店街も近くていいな」
「そっちの方までいったの? 随分な荷物」
日用品だけ部屋に上げて来るよと言って、食材を置いてリビングを出た。やけに階段がぴかぴかと光ってみえて、おれが出かけている間に掃除をしてくれたんだろうかと思う。管理人だというナミさんがしてくれたのか、ハウスキーピングでも入ってるんだろうかと考えながら部屋に適当に買い出しの品を放り込み、すぐにリビングへ戻った。
ダイニングテーブルにはたくさんの酒やジュースが並び、いくつかはすでに開いているようだった。
ソファの方へ目を遣ると、見知らぬ顔がひとつ増えている。おれと目が合うと「お」という具合に目を丸くして「よっす」と男は言った。
「新入りよろしくな。おれウソップ」
「あぁ、よろしく」
人好きのする顔でにっと笑った鼻の長い男は、「ほんじゃまー主役も戻ったしもう一度乾杯しようぜ」と手元のグラスを握った。
「ばか、もう一度って言ったら先に始めてたことばれるじゃない」
「今更だろうが。ほらサンジもなんか飲めよ」
ナミさんに脇腹をつつかれながら、ウソップが顎で机の上を指し示す。ごったがえしているそこから適当にスミノフの瓶を抜き取った。
ルフィが「おれもサンジと同じのがいい」と言ってポテトチップスの大袋を抱えながらテーブルの方までやってくる。色違いのスミノフを手渡してやると、さんきゅーと言ってがりっと栓を開けた。
ロビンちゃんが大きな皿にピザ一枚をまるまる乗せてテーブルに運んできてくれた、それを見てルフィがうひょーと歓声を上げる。
ウソップが乾杯の音頭を取った。
「改めまして、はじめましてサンジ君。ようこそおれたちの城へ。仲良くやろうぜ!」
がつん、と勢いよくグラスとボトルがぶつかりあい、ぱんと弾けるみたいに心地よく宴が始まった。
ルフィは始まった途端、手にしていたスミノフのボトルをさっと逆さにしてするすると喉へと流し込んだ。
子どものようなあどけない顔のくせにいける口かよ、と内心驚いていると、しばらくがははがははと笑いながら大口を開けて吸い込むみたいに食べていたかと思えば、三十分もしないうちにソファにこつんと倒れ込んだ。
「おい、おまえ」
慌ててルフィの肩に手をかけて身体をひっくり返す。店でこんなふうに急性アルコール中毒を起こす奴を何度か見たことがある。しかしルフィはすこやかな顔で、口元からよだれは垂らしているものの至って健康そうに少し顔を赤らめて寝ていた。
「いーのよサンジ君ほっといて」
ナミさんがおれの手から空瓶を取り去り、代わりに冷えて結露した缶ビールを持たせた。
「いつもこうなの。人一倍酒に弱いくせに人一倍楽しくなって飲んじゃうから、すぐ潰れるの。転がしといて大丈夫よ」
「へえ」
そういえば随分気の知れた仲間のようだが、いつから一緒に住んでいるのだろうか。浮かんだ疑問をそのまま口にすると、ナミさんが「どうだっけ」というように周りを見渡した。
「私がサンジの次に新入りなのよね。ちょうど3か月前にここへ来たの」とロビンちゃんが手の内のグラスをかわいがるみたいにころころと揺らして言う。
「もともとここ、ルフィのおじいさんの家なの。だから家主の直系はルフィにあたるんだけど、一番初めに住み始めたのは私なの。ルフィのおじいさんがここを破格で貸しにだしてね。初めは姉と二人で住んでたんだけど、姉が仕事の関係で出て行ったからひとりになっちゃって。改修したから今はきれいだけど、当時は相当ぼろかったのよここ。だから私も出ようかなって思ったときに、ルフィのおじいさんがそれならアパート管理しないかって提案してくれて。改修費用とかもだすから、管理人になってくれって」
ほら私、ハウスワーカーだから、とナミさんはごきゅごきゅ喉を鳴らしておれに渡したのと同じ銘柄のビールを飲んだ。酒のせいか随分饒舌だ。
「そしたらおじいさんの孫のルフィがまず入ることが決まって、次にゾロ、ウソップ、ロビンとやってきたってわけ。だから私が一番古株で、5年くらい前から住んでる」
「元から知り合いってわけじゃねぇんだ」
「そ。誰一人として知り合いだったわけじゃないの。みんなここで初めましてしたのよ」
「ね」とロビンちゃんと視線を交わし合うナミさんは、上機嫌な様子でソファに腰かけ、ルフィを邪魔そうに押しのけた。
「せっかくだから自己紹介しておく?」
とてもいい悪戯を思いついたみたいな魅惑的な顔でナミさんが顔を上げたとき、ガツンバタンと玄関扉が開く乱暴な音が響いた。足元を揺るがして、また扉が閉まる。みんなが一斉にそちらへ顔を向けた。
あぁ、とロビンちゃんが全てを悟ったみたいな声を洩らすが、なんのことだかさっぱりわからない。
すぐに玄関先に続くドアから姿を現したのは、今この場にいなかったゾロだった。
昨日の昼間初めて出会ったときよりも数倍人相を悪くして、しかもどうやら息を切らしているような切羽詰まった空気さえまとい、ゾロは無言でリビングの入り口に立つと何かを探すようにおれたちを見渡した。
「おけーり」とウソップが小さく声をかける。
ナミさんが「ゾロ」とこぼした。
するとゾロの視線の焦点が、ぱっとナミさんに合わさる。
ナミ、とゾロの口が動いた。
「来い」
唸るようにそう言うと、ゾロは黙って階段の方へと消えた。あんなに乱暴な音を立てて入ってきたくせに、階段を上る足音はほとんどしなかった。
ナミさんがすっと立ち上がる。
「もー命令すんなっての」
軽い口調とは裏腹に、ナミさんの唇がきゅっと締まる。同時にじわっと茶色い目から滲む熱がちりっと空気中に漏れ出して、息を呑んだ。
「ごめんねー、ちょっと」と言って、ナミさんはゾロを追いかけて部屋を出ていった。
彼女が消えた部屋は、一瞬忘れられたみたいにしんと静まり返った。
「お、あっと、すまねぇな、ゾロが勝手言ってよぉ」
ウソップが場を取り持つみたいに必要以上に手をばたつかせて声をあげる。
ロビンちゃんは黙って肩をすくめて、「仕方がないのよ」と身振りで示した。
一体何が仕方がないのかおれにはさっぱりで、彼女が座っていたソファのスペースがぽかりと空いていることにばかり意識が向かう。
「あのふたり、なんかあんのか」
聞きたくもないくせに口をついていた。たぶんものすごく、聞きたかったんだ。
ウソップは「やー、知らん、ほんと、知らね」ともごもご口ごもり、ロビンちゃんも「はっきりと聞いたことがないから」とまたもや肩をすくめる。
「なんかごめんなー、空気こわしちまって」
ウソップが諦めるみたいに肩を落とすので、なぜかおれが慰める形になって「気にすんな」と言った。
相変わらずルフィは部屋の空気を意にも介さず口をあけて寝こけている。
「ほんとにおれたちあのふたりがどうとか、知らねぇんだ。おれは昼間仕事で外に出てるし、ナミは一日家だし。ゾロは日雇いみてぇな仕事で食いつないでるから不規則でさ。おれら仲いいけど、生活リズムは誰一人合わねェんだよ」
「ふーん」
なんの仕事してんの、とウソップに聞いてみる。
「おれ? おれ市役所。そこの公園に入ってるプレハブの仮設図書館。今はあそこにいんだ」
「へぇ。服務規程とかねぇの。そのパーマいいのかよ」
「うっせ、こりゃ地毛だ」
じゃれるみたいにウソップがおれに蹴りを入れ笑うので、ロビンちゃんもおれも笑う。場の空気が少しほどけて、おれはナミさんに渡されたまま開けていないビールをテーブルに置いた。
「飲まないの?」
「夜から仕事でしこたま飲まなきゃなんねェんだ。節制するわけじゃねぇけど、身体もたねぇから」
「もしかして、ホストクラブ?」
耳慣れない単語を舌先に乗せるみたいにロビンちゃんが言う。
おれはにっこり笑い、「店に遊びに来てくれる? ロビンちゃんなら指名がなくてもとんでいくよ」と胸に手をあて一礼する。
ふふ、と鼻先で笑った彼女は「今度連れて行ってほしい」とまんざらお愛想ではなさそうな口調で言った。
そのままおれたちはゆるゆると会話して、結局始まった時みたいな和気藹々とした弾む空気は取り戻せなかったが、三人でのらくらと話すのは案外楽しかった。
「そろそろ行かねえと」
頃合いを見計らって立ち上がる。
ナミさんは戻ってこなかった。
3階の自分の部屋まで行くのに、奴らがどの部屋にいるのか耳を澄ましてしまう下世話なじぶんに嫌悪感を感じる。
ネクタイを締めて階下へ降りると、リビングから挽きたてのコーヒーの香りがした。
顔を覗かせると、律儀に机の上を片した2人が向かい合ってコーヒーを飲んでいる。
「行ってらっしゃい」
ロビンちゃんが怪しく微笑んで、ウソップが爽やかな朝の顔で俺に手を振った。
「がんばれよー」
家を出て、まだ明るい空の下駅まで歩いていると、いつも感じる仕事への億劫さがなぜか上塗りされたようにぼやけて見えた。
それ以上に、「ナミ」と鋭くまっすぐに飛び込んできたゾロの声と、それより早く「ゾロ」と呟いた彼女の声がいつまでもいつまでも耳にこびりついて嫌な余韻を残していた。
一度抱いたくらいで、とナミさんは鼻で笑うかもしれない。
肩をすぼめて笑われるだけの自分が妙にはっきりと想像できて、ますます嫌な気分になった。
一九時の開店と同時にお得意さんがどばっと押し寄せて、彼女たちの隣に座りながら今日のメールを返せなかった言い訳を何度も何度も口にした。
仕事前に送らなければいけない営業用のメールは、彼女たちにとって自分の男からの愛の知らせに他ならない。
それを怠っては、捨てられるのはこちらに決まっているのだ。
お詫びと言ってポケットマネーでボトルを空けるのを数人に繰り返した。二本目からは客の支払いになるものの、数人分ともなればそこそこ大きな金額になる。
メール1つや2つがおれの数週間ぶんの生活費をあっという間に食い尽くして、穴だらけになった身体をおれは彼女たちに笑顔で提供する。
いつかふさがるのだろうかと、あてどない未来を夢想する。
ちっとも具体的な想像がつかないじぶんに、きっと案外今がしあわせなのだと納得するのをここ数年繰り返している。
「サンジくん」
するっと太ももの上を滑った薄い手のひらにハッとした。
その手から腕をたどって顔を見上げると、思い浮かんだ顔とは似ても似つかない別の女性で、一瞬あれ、と戸惑う。
勘違いしたのはその声と薄い手のひらが似ていたというただそれだけで、隣の彼女は太ももからするするとおれの身体を撫であげてぴたりと身を寄せた。
「お店、一時で終わりでしょ? 今日こそ付き合ってよ」
「うん? あー、うん、そうだね、どこ行こっか」
彼女はそんなの決まってると言わんばかりにうふふと笑うだけだった。
早く店じまいになんねーかなーと思う。
それまでにあと半分残ったこのボトルを空けさせて、次のボトルキープの札に名前を書かせ、程よく気持ちよくなった彼女がおれとの約束なんて忘れて店を出て行くのを笑顔で見送る算段をつける。
レディは好きだ。
すごく好きだ。
柔らかく、しなやかでしたたかで、欲望を満たすまでの緻密な駆け引きを楽しむ軽やかな身の施しには惚れ惚れする。
空きそうなグラスに氷を足し、酒を注ぎ、ころんと音を立ててステアリングするその一連の動作に心がこもらないのは、そんなレディが好きだという気持ちとは別の階層に属しているような気がしている。
そしてまた、この数日胸を浸した新しい生活とそこで出会った彼女へのむず痒い思いもまた、同じところにはないのだろう。
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