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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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低いのによく通るバリトンが、昼ご飯を食べているときも、服を片しているときも、夜ご飯を食べているときでさえアンの耳に住み着いて離れなかった。


「…変なの」


がちゃがちゃと騒々しい音を立てながら食器を洗い、その音に紛れてひとり呟いた。












窓から暗闇が溶け込んでくる。
室内の明かりは窓から外へと溶けていく。
アンはその境目を眺めながら、つくねんとひとり部屋の真ん中に座っていた。


(やっぱり、ちょっと寂しい…かな)



おかずの取り合いをすることも、食器洗いの当番を決めることも、おやすみと言う相手がいないことも。
しかしきっと寂しがりで甘ったれのルフィは、その何倍ものひとりぼっちに耐えているのかもしれない。
そう思うことだけが、これから自分の生活を支えることになるのだろうとアンは身に染みて感じた。


明日から、アンは今まで勤めていたファミレスのバイトに加えて小さな商社への出勤が始まる。
本当に小さな零細企業ではあるが、何かと入り用なアンにとって到底バイト資金だけでやっていけそうにはなかったので、この採用は本当にありがたかった。
仕事は事務であり、基本的に首より上を使うことが苦手なアンにとって向いているかどうかは疑問ではあるが、いまさら向き不向きがどうだとかは言ってられない。
ちなみにファミレスのバイトは夜間に移して続けることにした。

考えていても仕方ない。
明日着ていく予定である、規定された事務服をたんすの扉にかけようとアンは勢いづいて立ち上がった。
が、勢い余って足の指を机の脚にぶつけて目から火花を散らした。



「いたあぁっ!!つぅ~ぁ~っ…!」



つま先を抱えて丸くなり、にじんできた生理的な涙を抑えながら痛みをこらえる。
その様子が不意に滑稽に思えて、可笑しくなってきたアンはふはっとひとり笑いを零したのだった。














翌朝は、初出勤にふさわしい快晴だった。
事務服に着替えたアンは、バイト時代と違って余裕をもって支度をした。
昨日梱包を解いた際に出たビニールひもやらのゴミを袋に詰めると結構な量になり、アンはそれを片手に、もう片方に仕事用のカバンを抱えて家を出た。
もちろん鍵は忘れずに。


「…重っ」


いかん引っ越しなめてた、とひとりつぶやきながらずっしりと質量のあるそれを半ばひきずるようにして階段まで歩いていく。
階段の前までやってきて、一息ついた。
時間は余裕を持って出たからまだ大丈夫だ。
やっぱりふたつに分けるべきだったかな、と少しの後悔と共にアンは再びそのゴミ袋を持ち上げた。
が、その重みはふわりと浮かぶようにアンの手から消えた。


「えっ」


自分の手を確認して、それから心当たりの行ったアンが急いで振り返れば、今起きましたといった顔にお決まりの煙草を咥えた隣人の男。
Tシャツにスウェット姿のマルコはアンに目を合わすこともなく、ただ「持つよい」と言うとアンの返事も待たずに階段を下りだした。
アンが引きずっていたゴミ袋を片手で持ち、あろうことかもう片方の手には自分のゴミらしい小さな袋をもって下りていくその姿を呆気にとられて見ていたアンは、はっとして慌ててその後を追った。

アンが階段を下りた頃には、すでにゴミは集積場に鎮座しており、マルコが折り返し戻ってくるところだった。


「うわっ、ごめん、重かったのに!」
「だからだろい」


気にすんな、と煙草の煙と共に吐き出したマルコに慌ててありがとうを告げておく。

マルコはアンの姿をつま先から頭のてっぺんまでを一瞬眺めると、勝手に何かに納得したらしくよいと呟いた。
一方アンは、いい歳こいたおっさんが朝8時にこんなラフな格好でうろついていることに少なからず疑問を抱く。



「ねぇ、おっさん」
「マルコ」
「あぁ、そう、マルコ…さん」
「…マルコでいいよい」
「マルコは、仕事しないの?ないの?」




無邪気と言ってしまえばそれまでだが、こんなに朗らかに人の職業を尋ねさらには無職かとまで尋ねてしまうのはアンだけがなせる業である。
マルコは一瞬軽く目を開いてから、くつりとひとつ喉で笑った。

アンが反応するよりも早く、唐突にマルコの顔がアンのそれに近づく。





「そんなことより、昨日ぶつけた所、大丈夫かよい」







またあのときと同じ声が重たく鼓膜を打ち、アンは自分でもわからないうちに弾かれたように顔を引いて耳を手で押さえた。



「だっ、だいじょうぶ!」




叫ぶようにそう言って勢いよく身体を反転させたアンは、なんで知ってるんだていうかなんであんな声出すんだ馬鹿!と、ぐるぐると巡る頭を必死で落ち着かせようと、徒歩五分先にあるはずの会社に二分で着いてしまうほどのスピードで足を動かしたのだった。





2014.01.24 修正

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不意に射抜かれたように見つめられて、アンは鍵穴に鍵を差し込んだまま固まった。
数秒、もしくは一秒にも満たないかもしれないほどの時間を、何分にも感じる。
しかしアンをとらえた重たい瞼の向こう側の瞳は、こちらを向いた時と同様、不意にその視線をはずした。


「あっ、あの!」


行ってしまう、と頭が慌てたせいで唐突な呼びかけをしてしまった。
鍵をかけ終わった男はアンに背を向けていたが、その声でゆっくりと体を反転させる。
薄い青色がアンの視線とぶつかった。


「あの、あたし今日から隣に引っ越してきた…アン、ポートガス・D・アン!」



よろしく!と早口にそういえば、男は細い目をさらに細めてアンを眺めてから、あぁとひとつ頷いた。


「マルコ、だよい」


マルコ?とアンが首をかしげて復唱しているうちに、男はまたアンに背を向けて今度こそ階段を下りて行ってしまった。
その背中を見送ってから、ああマルコって名前のことかとアンは合点がいく。
どこへでかけるんだろうと、ぼんやりと男が消えたあとをみつめていた。

なんにせよ、アンもこれから昼食の調達にいくつもりだったのだ。

最後まで鍵がかかったことを確認して、アンも男がたどった通りに階段を下りた。














米は炊くのにガス代かかるから…まとめ炊きする鍋がいるな…あ、あと肉。

近所のスーパーまで5分愛車を走らせて、アンは今日の昼食に加え夕食、さらに生活必需品を買い揃えた。
無駄にできるような金はないから、できるかぎり切り詰めて。

ルフィには、アンとルフィが二人バイトで貯めた貯金300万のうちの200万近くを持たせた。
ルフィは高校に通いながら、アンはバイトで生計を立てながら、ふたり汗水流して手に入れた金であるからこそルフィが無駄遣いするとは思えないが、誘惑に負ける可能性は大いにある。勿論食への。

だからどうやってやるつもりかは知らないがいずれルフィが稼げるようになるまでは、ある程度の仕送りをしてやろうとアンは決めていた。



自分にはルフィのように突っ走っていきたい夢もない。
ルフィの夢が自分のそれだ。
だから金なんてもののせいでルフィの夢が潰えるなんてことには絶対したくなかった。


アンはレジで金を支払い、片手に収まるよう袋に商品を収納して店を出た。


















自転車の籠に袋を載せて、なだらかな坂道をのぼっていく。
現在時刻は二時。
初めて部屋に入ったのが正午過ぎで、それから埃っぽい部屋を掃除して片づけて買い物して、と何かとあわただしく動いていたせいか、いやに時間の進みが早かった。

時刻を道中の公園に突っ立っていたひょろながい柱時計で確認したアンは、どうりでお腹が鳴るはずだ、とペダルを踏み込む足に力を入れた。






アパートが正面に見えてきて、その裏の駐輪場に回り込もうと一度階段前を通り過ぎる。
そのとき、階段の鉄柱に背中をもたれさせてたばこをふかす姿を、視界の端でとらえた。
ついさっきの記憶を引っ張り出して、駐輪場に引っ込む前にもう一度その姿を確認する。
マルコは片手に煙草、片手に携帯で、どうやら話し中のようだった。
めんどくさそうに眉間に皺を寄せ、まっすぐ目の前の電柱を見たままなにやら話している。


アンは籠から荷物を取り出して階段へと歩いて行った。




「どーも」
「あぁ」
「ずっとここにいた?…んですか」
「いや、さっき戻ったとこだよい」


マルコの視線がちらりとアンの片手に注がれて、あぁと納得がいったようにまた前を向いた。



「なんでこんなとこで電話してんの?…ですか」
「人を、待ってんだい」
「…ふーん」



話すことがなくなったアンは、まあいっか、と階段の一段目に足をかけた。





「お前」
「あたし?」
「あぁ…一人かい」
「うん、あ、はい。弟が、今別のとこにいるけど」
「…へぇ」


緩慢な手つきでマルコが煙草を口元に持っていき、ひとつ吸った。
アンは何となくその動作を目で追う。



「戸締り、しろよい」




へっ?と間の抜けた声が出たが、男は構わずもう一口煙草をふかした。
あぁ、うん、はい、ととりあえず返事をしたアンは、何故か逃げるように早足で階段を上り、二階についたときには駆け込むように自分の部屋へと飛び込んだのだった。








2014.01.24 修正

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*現代パロディー注意!更新履歴等ブログのほうで連載していたものです。




























ルフィが、家を出た。



別に言葉通りの家出とかじゃない。
オレは探検家になるんだと子供のころから言い続けていて、高校を卒業した昨日ついにその夢を実現すべく、バックパックとその身一つで旅に出たのだ。





ルフィと二人住んでいたボロ屋は、ルフィの旅立ちを狙ったかのように底に穴が開いた。

天井はもとから穴だらけで雨漏りもひどかったので、下に穴が増えたくらいアンとしてはどうってことなかったのだが、大家のダダンが改装するから出て行けといって、アンをそこから追い出したのだ。





たしかにボロイ家ではあったけど、土地はあったので広い部屋だった。

だからアンひとり住むには確かに広すぎたし、空いた空間にルフィの面影を探してしまいそうだったアンに引っ越しの提案はちょうどよかったとも言える。



アンはバイトで貯めた数少ない貯金と自分の衣服、それにルフィと集めたくだらないキャラクターのシールやルフィの卒業式で撮った写真などをうちにあった一番大きなカバンに詰めて、安アパートに引っ越した。













「ここ、か」


玄関前に立ち止まってその建物を見上げた。

4階建て、家賃月3万8千円風呂付アパート。
壁が薄く駅から遠いのが難点でこの値段、らしい。

壁が薄いのなんて知ったこっちゃないし、バイトには愛車(チャリ)があるので駅も必要ない。


「よしっ、今後どうぞひとつよろしく」


アンはぺこりと90度に腰を曲げてそのアパートに一礼すると、やたらと音を響かせる鉄筋の階段を上ったのだった。








アンの部屋は二階、階段から二つ目の部屋だ。
閑散とした部屋の真ん中に荷物を下ろしたアンは、ふうと一息ついた。

前の家で使っていた冷蔵庫はルフィの友人、ゾロが運んでくれると言っていた。
今日は剣道の試合があるから明日来てくれるらしい。
洗濯機は、アンの引っ越しを見計らったかのように壊れたが、もう一台買う余裕もないので、どうせひとり分だけだしと割り切って手洗いすることにする。

何もない部屋の真ん中にとりあえずぺたんと座り込み、ぐるりと視線を一周させてから天井を見上げる。
今日からここで一人暮らしが始まる。
寂しくないと言えば嘘だけど、どこかでルフィが頑張っているのだと思えば苦ではない。

よしっ、とアンが新生活に気合を入れたその時、壁の向こうからどん、と物音が聞こえた。

そういえばこの建物、壁薄いって言ってたっけとアンが思い出し、はたと気づいた。

こういう引っ越しの時って、隣の家の人に挨拶とか行かなきゃなんないんだっけ。
さすがに挨拶に手ぶらで行くわけにもいかないということはわかるが、だからといって持っていけるものなどないしそれを買う余裕もない。
どうしようかとひとしきり悩んだ末、いつか偶然廊下とかでばったり会ったらそのとき挨拶すればいいやと、あっさり決めてしまった。


「じゃ、今日の昼ごはん買いにいこ」


結論が出てひとりすっきりしたアンは途端に空腹を感じ、それを満たすべく出かけようと立ち上がる。
冷蔵庫がない今、とっておけるものを買いだめしたほうがいいかな、などと考えながら脚にサンダルをひっかけて重たい扉を押し開けたそのとき、同じようにして隣の扉がゆっくり開いた。

なぜか、思わずまた扉を閉めかけたアンだったが、挨拶しなければならないことを思い出してとどまる。

(…どんな人だろ)


ゆっくりと扉の向こうから人の影が現れる。
さっと部屋の外に出て、しっかりと鍵をかけながら目の端でその姿を確認した。


縦に長いその影は、男だった。
細身で、背が高い。
頭は…とにかく言い表しにくい形をした金髪。



細い煙草をめんどくさそうに咥えた顔が不意にアンのほうに向けられ、眠たげに細まった目の奥の瞳がしっかりとアンを捉えた。











2014,01,24 修正

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