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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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※他のキャラとの絡みを若干匂わせる表現があります。苦手な方はご注意ください。













頭が痛い。
どうんどうんと鉄球が後頭部のあたりで跳ねている。重い痛みの機嫌を取りながらゆっくりと身体を起こした。
枕元の携帯を引き寄せて時間を確かめると朝の十時。シーツはまだぴんと張って真新しいが、自分のベッドに潜り込んだ記憶がなかった。
カーテンのない窓からさんさんと日がさして、緑の影が揺れている。のどかな午前がこの部屋の外で静かに進行していて、自分だけが取り残されて頭痛を抱えているように思えた。
はたと、ナミさん、と女性の名前が口に出た。
ナミさん、そうだ、ナミさんは。
下半身の倦怠感がじわっとせりあがってきて、昨夜の出来事を断片的に思い出させる。
灯りの消えたリビングで服を脱がせた。舌を絡めて、ソファに押し倒した。
細くてやわらかい彼女の腕がおれの身体にぴったり絡み付いて引き寄せる。
越してきて一日目のおれが周囲の状況に不慣れなのに対し、彼女だけが見知った場所でてきぱきとおれを誘導してすんなりと事を進行させた。
めがねをはずし、挑戦的におれを見上げたこげ茶の瞳を思い出す。
あれからどうしたっけ。
ぬるぬると記憶が少しずつよみがえる。
事を成し、ぐったり重なり合ったまま息を整え、そうだおれたちはそれから「それじゃあおやすみ」と別れて各々の部屋に戻ったのだった。
久しぶりにしたな、セックス。
あけすけな感想と裏腹に、やわらかくて温度の高い彼女の身体は思い出すだけで坐骨の辺りが痺れた。
着替えていたらコミカルな音で腹が鳴り、そういや買い出しから始めねばならんのだったとげんなりする。
調理器具だけあったところで食材がなければ手も足も出ない。
仕事の時間までまだ半日あるので出かけることにして、未だ殺風景な部屋を出た。
三階から二階に下りたところで、ちょうど二階の廊下から階段に差し掛かろうとしている黒髪の女性とはちあった。
ふとこちらに顔を向けたレディは、目を疑うほどの美女である。
「あら」
「こりゃびっくりだ。引っ越し早々家の中でこんな美人に巡り合うなんて」
あらあら、と彼女は言葉を続け、ふふっと短く笑って先に階段を降り始めた。
「あなたが引っ越してきた人ね。昨日」
「あぁ。サンジと言います。麗しの君は?」
「ニコ・ロビンよ。あなたの部屋の斜め下に住んでいるの」
「あぁロビンちゃん、僕はなんて幸運なんだ。君のような美しい人とひとつ屋根の下で暮らせるなんて」
彼女が階段を降りたったところでさっと前に回り、その手を取ってそっと口づける。
ロビンちゃんは慣れた様子で依然として「あらあら」と口ずさむように言ってから、「よろしくね」と笑った。
「今からお出かけかい?」
「いえ、私は珈琲のお湯を沸かしに」
階段を降りてすぐのリビングを、ロビンちゃんがひょいと覗き込む。
そして部屋の中にいるらしい誰かへ「おはよう」と声をかけた。
「おはよー」と闊達としたこの声はナミさんだ。
「会った? サンジ君」
「えぇ。面白い人」
ロビンちゃんがおれを放ってリビングキッチンへと入って行くので、おれもなんとなくあとへ続く。
ソファの、昨日おれたちが絡まり合ったソファの、L字の角の部分でナミさんは昨日のように足を伸ばして座っていた。
脚の上にはノートパソコン。
「おはよ」
ナミさんが言う。
「おはようナミさん。──あぁこの部屋には太陽がふたつもあるね」
眩しくて目が開かないよ、といえば「しっかり開いてるじゃない」とナミさんは笑った。
シュンシュンと、ロビンちゃんが火を入れたケトルが音をたてはじめる。
「どこか行くの?」
「え、あぁ、買い出しに。食料とか家具とかいろいろ、なんにもねぇからさ」
「そ、大事ね」
「いってらっしゃい」とナミさんとロビンちゃんに口を揃えて言われてしまい、おれはガキのように小さな声で「行ってきます」と呟く。
リビングを出かけたところで「あそうだ待ってサンジ君」と今度は呼び止められた。
「今夜たまたまここの住人みんな揃うみたい。顔合わせもかねて、一緒に夕食とらない? サンジ君の料理、また食べたいなぁ。なんて、ゲストはあんたなんだけど」
どう? と可愛く首を傾げられたが、おれは「あー」と不明瞭な声を出した。
夜は仕事だ。
「ごめん、今日も仕事で」
「あそっか。あんたこれからなんだったわね。んーじゃあ昼過ぎからいるやつだけで始めましょうよ。実は歓迎会しようと思って、お酒とかいろいろ注文しちゃったのよね」
ナミったら気が早いのね、とロビンちゃんが遠くで笑う。
「だってルフィが宴だー! って昨日うるさくて。ね、サンジ君どう?」
「あーそりゃ嬉しいよ。喜んで」
「やった。仕事前に騒いで悪いけど、今日だけね」
私も飲む口実ができてうれしい、とナミさんは眼鏡の下で屈託なく笑った。
昨夜おれの首に腕を回した時の魔物的な熱っぽさは微塵もない。
「じゃ、そゆことで。呼び止めてごめんね」
改めていってらっしゃいと送りだされ、きゃらきゃらと続くレディ達のお喋りを背中に受けてアパートを出た。
外の日差しは歌うようにやわらかく、白く空気の中でほどけている。意識を吸い取られそうな気持ちよさに春を感じながら、それと似通う別の種類の気持ちよさを思い出す。彼女の肌の感触は春の空気に似ていた。
昨夜のあれは、夢だったんだろうか。
夢だったとしたらそれはそれで、
「ラッキーだな」

買い込んだのは最寄りのスーパーで食材を数日分。携帯で近所を検索すると商店街があったのでそちらへ向かい、肉は肉屋で、野菜は八百屋で、魚は魚屋でといった具合に買い出しを済ませていけばあっという間に両手は重い荷物で塞がってしまった。
まだ煙草のストックも買いたかったのだがもう持てそうにない。アパートのドアを開けるのも難儀なくらいだった。
身体で押し開けるようにして中に入ると、なにやらリビングの方がにぎやかだ。
なにはともあれ食材をしまわないといけないので入って行くと、真正面にいたルフィが机越しに「よーっす!」とおれに手を上げてみせた。
「サンジ! おけーり!」
ただいま、というのを一瞬ためらううちに、立て続けにナミさんとロビンちゃんが「おかえりなさい」と声を揃えてこちらを向いた。
「スーパーの場所分かった?」
「あぁ。商店街も近くていいな」
「そっちの方までいったの? 随分な荷物」
日用品だけ部屋に上げて来るよと言って、食材を置いてリビングを出た。やけに階段がぴかぴかと光ってみえて、おれが出かけている間に掃除をしてくれたんだろうかと思う。管理人だというナミさんがしてくれたのか、ハウスキーピングでも入ってるんだろうかと考えながら部屋に適当に買い出しの品を放り込み、すぐにリビングへ戻った。
ダイニングテーブルにはたくさんの酒やジュースが並び、いくつかはすでに開いているようだった。
ソファの方へ目を遣ると、見知らぬ顔がひとつ増えている。おれと目が合うと「お」という具合に目を丸くして「よっす」と男は言った。
「新入りよろしくな。おれウソップ」
「あぁ、よろしく」
人好きのする顔でにっと笑った鼻の長い男は、「ほんじゃまー主役も戻ったしもう一度乾杯しようぜ」と手元のグラスを握った。
「ばか、もう一度って言ったら先に始めてたことばれるじゃない」
「今更だろうが。ほらサンジもなんか飲めよ」
ナミさんに脇腹をつつかれながら、ウソップが顎で机の上を指し示す。ごったがえしているそこから適当にスミノフの瓶を抜き取った。
 ルフィが「おれもサンジと同じのがいい」と言ってポテトチップスの大袋を抱えながらテーブルの方までやってくる。色違いのスミノフを手渡してやると、さんきゅーと言ってがりっと栓を開けた。
ロビンちゃんが大きな皿にピザ一枚をまるまる乗せてテーブルに運んできてくれた、それを見てルフィがうひょーと歓声を上げる。
ウソップが乾杯の音頭を取った。
「改めまして、はじめましてサンジ君。ようこそおれたちの城へ。仲良くやろうぜ!」
がつん、と勢いよくグラスとボトルがぶつかりあい、ぱんと弾けるみたいに心地よく宴が始まった。
ルフィは始まった途端、手にしていたスミノフのボトルをさっと逆さにしてするすると喉へと流し込んだ。
子どものようなあどけない顔のくせにいける口かよ、と内心驚いていると、しばらくがははがははと笑いながら大口を開けて吸い込むみたいに食べていたかと思えば、三十分もしないうちにソファにこつんと倒れ込んだ。
「おい、おまえ」
慌ててルフィの肩に手をかけて身体をひっくり返す。店でこんなふうに急性アルコール中毒を起こす奴を何度か見たことがある。しかしルフィはすこやかな顔で、口元からよだれは垂らしているものの至って健康そうに少し顔を赤らめて寝ていた。
「いーのよサンジ君ほっといて」
ナミさんがおれの手から空瓶を取り去り、代わりに冷えて結露した缶ビールを持たせた。
「いつもこうなの。人一倍酒に弱いくせに人一倍楽しくなって飲んじゃうから、すぐ潰れるの。転がしといて大丈夫よ」
「へえ」
そういえば随分気の知れた仲間のようだが、いつから一緒に住んでいるのだろうか。浮かんだ疑問をそのまま口にすると、ナミさんが「どうだっけ」というように周りを見渡した。
「私がサンジの次に新入りなのよね。ちょうど3か月前にここへ来たの」とロビンちゃんが手の内のグラスをかわいがるみたいにころころと揺らして言う。
「もともとここ、ルフィのおじいさんの家なの。だから家主の直系はルフィにあたるんだけど、一番初めに住み始めたのは私なの。ルフィのおじいさんがここを破格で貸しにだしてね。初めは姉と二人で住んでたんだけど、姉が仕事の関係で出て行ったからひとりになっちゃって。改修したから今はきれいだけど、当時は相当ぼろかったのよここ。だから私も出ようかなって思ったときに、ルフィのおじいさんがそれならアパート管理しないかって提案してくれて。改修費用とかもだすから、管理人になってくれって」
ほら私、ハウスワーカーだから、とナミさんはごきゅごきゅ喉を鳴らしておれに渡したのと同じ銘柄のビールを飲んだ。酒のせいか随分饒舌だ。
「そしたらおじいさんの孫のルフィがまず入ることが決まって、次にゾロ、ウソップ、ロビンとやってきたってわけ。だから私が一番古株で、5年くらい前から住んでる」
「元から知り合いってわけじゃねぇんだ」
「そ。誰一人として知り合いだったわけじゃないの。みんなここで初めましてしたのよ」
「ね」とロビンちゃんと視線を交わし合うナミさんは、上機嫌な様子でソファに腰かけ、ルフィを邪魔そうに押しのけた。
「せっかくだから自己紹介しておく?」
とてもいい悪戯を思いついたみたいな魅惑的な顔でナミさんが顔を上げたとき、ガツンバタンと玄関扉が開く乱暴な音が響いた。足元を揺るがして、また扉が閉まる。みんなが一斉にそちらへ顔を向けた。
あぁ、とロビンちゃんが全てを悟ったみたいな声を洩らすが、なんのことだかさっぱりわからない。
すぐに玄関先に続くドアから姿を現したのは、今この場にいなかったゾロだった。
昨日の昼間初めて出会ったときよりも数倍人相を悪くして、しかもどうやら息を切らしているような切羽詰まった空気さえまとい、ゾロは無言でリビングの入り口に立つと何かを探すようにおれたちを見渡した。
「おけーり」とウソップが小さく声をかける。
ナミさんが「ゾロ」とこぼした。
するとゾロの視線の焦点が、ぱっとナミさんに合わさる。
ナミ、とゾロの口が動いた。
「来い」
唸るようにそう言うと、ゾロは黙って階段の方へと消えた。あんなに乱暴な音を立てて入ってきたくせに、階段を上る足音はほとんどしなかった。
ナミさんがすっと立ち上がる。
「もー命令すんなっての」
軽い口調とは裏腹に、ナミさんの唇がきゅっと締まる。同時にじわっと茶色い目から滲む熱がちりっと空気中に漏れ出して、息を呑んだ。
「ごめんねー、ちょっと」と言って、ナミさんはゾロを追いかけて部屋を出ていった。
彼女が消えた部屋は、一瞬忘れられたみたいにしんと静まり返った。
「お、あっと、すまねぇな、ゾロが勝手言ってよぉ」
ウソップが場を取り持つみたいに必要以上に手をばたつかせて声をあげる。
ロビンちゃんは黙って肩をすくめて、「仕方がないのよ」と身振りで示した。
一体何が仕方がないのかおれにはさっぱりで、彼女が座っていたソファのスペースがぽかりと空いていることにばかり意識が向かう。
「あのふたり、なんかあんのか」
聞きたくもないくせに口をついていた。たぶんものすごく、聞きたかったんだ。
ウソップは「やー、知らん、ほんと、知らね」ともごもご口ごもり、ロビンちゃんも「はっきりと聞いたことがないから」とまたもや肩をすくめる。
「なんかごめんなー、空気こわしちまって」
ウソップが諦めるみたいに肩を落とすので、なぜかおれが慰める形になって「気にすんな」と言った。
相変わらずルフィは部屋の空気を意にも介さず口をあけて寝こけている。
「ほんとにおれたちあのふたりがどうとか、知らねぇんだ。おれは昼間仕事で外に出てるし、ナミは一日家だし。ゾロは日雇いみてぇな仕事で食いつないでるから不規則でさ。おれら仲いいけど、生活リズムは誰一人合わねェんだよ」
「ふーん」
なんの仕事してんの、とウソップに聞いてみる。
「おれ? おれ市役所。そこの公園に入ってるプレハブの仮設図書館。今はあそこにいんだ」
「へぇ。服務規程とかねぇの。そのパーマいいのかよ」
「うっせ、こりゃ地毛だ」
じゃれるみたいにウソップがおれに蹴りを入れ笑うので、ロビンちゃんもおれも笑う。場の空気が少しほどけて、おれはナミさんに渡されたまま開けていないビールをテーブルに置いた。
「飲まないの?」
「夜から仕事でしこたま飲まなきゃなんねェんだ。節制するわけじゃねぇけど、身体もたねぇから」
「もしかして、ホストクラブ?」
耳慣れない単語を舌先に乗せるみたいにロビンちゃんが言う。
おれはにっこり笑い、「店に遊びに来てくれる? ロビンちゃんなら指名がなくてもとんでいくよ」と胸に手をあて一礼する。
ふふ、と鼻先で笑った彼女は「今度連れて行ってほしい」とまんざらお愛想ではなさそうな口調で言った。
そのままおれたちはゆるゆると会話して、結局始まった時みたいな和気藹々とした弾む空気は取り戻せなかったが、三人でのらくらと話すのは案外楽しかった。

「そろそろ行かねえと」

頃合いを見計らって立ち上がる。
ナミさんは戻ってこなかった。
3階の自分の部屋まで行くのに、奴らがどの部屋にいるのか耳を澄ましてしまう下世話なじぶんに嫌悪感を感じる。
ネクタイを締めて階下へ降りると、リビングから挽きたてのコーヒーの香りがした。
顔を覗かせると、律儀に机の上を片した2人が向かい合ってコーヒーを飲んでいる。

「行ってらっしゃい」

ロビンちゃんが怪しく微笑んで、ウソップが爽やかな朝の顔で俺に手を振った。

「がんばれよー」

家を出て、まだ明るい空の下駅まで歩いていると、いつも感じる仕事への億劫さがなぜか上塗りされたようにぼやけて見えた。
それ以上に、「ナミ」と鋭くまっすぐに飛び込んできたゾロの声と、それより早く「ゾロ」と呟いた彼女の声がいつまでもいつまでも耳にこびりついて嫌な余韻を残していた。
一度抱いたくらいで、とナミさんは鼻で笑うかもしれない。
肩をすぼめて笑われるだけの自分が妙にはっきりと想像できて、ますます嫌な気分になった。

一九時の開店と同時にお得意さんがどばっと押し寄せて、彼女たちの隣に座りながら今日のメールを返せなかった言い訳を何度も何度も口にした。
仕事前に送らなければいけない営業用のメールは、彼女たちにとって自分の男からの愛の知らせに他ならない。
それを怠っては、捨てられるのはこちらに決まっているのだ。
お詫びと言ってポケットマネーでボトルを空けるのを数人に繰り返した。二本目からは客の支払いになるものの、数人分ともなればそこそこ大きな金額になる。
メール1つや2つがおれの数週間ぶんの生活費をあっという間に食い尽くして、穴だらけになった身体をおれは彼女たちに笑顔で提供する。
いつかふさがるのだろうかと、あてどない未来を夢想する。
ちっとも具体的な想像がつかないじぶんに、きっと案外今がしあわせなのだと納得するのをここ数年繰り返している。

「サンジくん」

するっと太ももの上を滑った薄い手のひらにハッとした。
その手から腕をたどって顔を見上げると、思い浮かんだ顔とは似ても似つかない別の女性で、一瞬あれ、と戸惑う。
勘違いしたのはその声と薄い手のひらが似ていたというただそれだけで、隣の彼女は太ももからするするとおれの身体を撫であげてぴたりと身を寄せた。

「お店、一時で終わりでしょ? 今日こそ付き合ってよ」
「うん? あー、うん、そうだね、どこ行こっか」

彼女はそんなの決まってると言わんばかりにうふふと笑うだけだった。
早く店じまいになんねーかなーと思う。
それまでにあと半分残ったこのボトルを空けさせて、次のボトルキープの札に名前を書かせ、程よく気持ちよくなった彼女がおれとの約束なんて忘れて店を出て行くのを笑顔で見送る算段をつける。

レディは好きだ。
すごく好きだ。
柔らかく、しなやかでしたたかで、欲望を満たすまでの緻密な駆け引きを楽しむ軽やかな身の施しには惚れ惚れする。

空きそうなグラスに氷を足し、酒を注ぎ、ころんと音を立ててステアリングするその一連の動作に心がこもらないのは、そんなレディが好きだという気持ちとは別の階層に属しているような気がしている。
そしてまた、この数日胸を浸した新しい生活とそこで出会った彼女へのむず痒い思いもまた、同じところにはないのだろう。



拍手[38回]

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「誰だオメェ」

仕事の出がけに玄関ではちあった。
真っ黒な髪をぼさぼさ伸ばした、男。ていうかガキだ。
片脇に大きなボール紙をひと巻き抱えている。

「──サンジ。お前は」
「おれはルフィ! なんだ、誰の友だちだ?」
「あ? 誰のっておれは」

あ、と呼び止める声といっしょに、パタパタ軽い足音が背後から駆けてきた。
ナミさんは眠たげに眼鏡の下に指を入れて目元をこすりながら、よっとルフィに片手を上げてみせた。

「おかえり」
「おうっただいま。こいつナミの友だちか?」
「ちがう。サンジ君。新しい住人よ」

おっ、と声をあげたルフィは、すぐさまおれの肩をばしんと叩いた。

「なんだよ新しい仲間かー、よろしくな! おれはルフィ!」
「さっき聞いたよ。あーおれ仕事遅れるから」
「んだ、今から仕事か、なんの仕事だ?」
「またゆっくりな。マジで遅れる」

ひらっと手を振ると、ルフィはあっさりと「おうまたなー!」と手を振った。
玄関を出る間際、そうだ忘れてたと振り返り、奥へ引き返そうとしているナミさんを呼び止める。
さっと手を取ろうと腕を伸ばしたら、それより早く手をひっこめられた。

「キスはいいから。遅れるんじゃないの」
「そうだった。失礼」

彼女の方が一枚上手だったことに苦笑して、アパートを後にした。



最寄りの駅まで送迎が来る。おれは襟元とネクタイ締めて突っ立っているだけだ。
黒塗りのセダンを運転するのはまだ18にいったばかりのガキで、おれは偉そうに運転席の真後ろに座ったが別に偉いわけでもない。このあとまだふたりを拾って店へ行くのだ。
開店は19時。明後日の締日までボルテージを上げていかねばならん夜だ。
既に煙草で視界のけぶった控室で仕事前の一服を済ませた。
黒服の従業員が呼びに来て、オーナーに稼げよとどやされて、レディのお出迎えだ。

開店から22時頃までは、仕事終わりのレディ達が羽根を伸ばしに来るにすぎない。
ほぼ水に近く薄めたウイスキーを飲みながら、焼酎のハーフボトルをひとり一本開けさせながら楽しくおしゃべりするだけだ。
だけだが、これがなかなか骨が折れるのだ。
レディとお喋りするのは願ったりかなったりだが、仕事となるとまた別であるというのは働き始めて初めて知った。
望まれればときおり手を握ったり、膝を撫でたりするのも、下心があっては仕事にならないということもまた初めて知った。
22時から1時までが勝負で、ボトルを入れてもらったりカラオケしたり、ほかの奴のシャンパンコールを聞いたりでどちゃどちゃと時間は過ぎていく。
最後のレディを送って、笑顔で腰を折って礼をする。頭を上げるとそのまま後ろに倒れ込んだ。ボフンと厚い革のソファに受け止められ、身体が跳ねる。
「相変わらず弱ェな」と他のホストにからかわれるが、仕事終わりはいつも答える元気もない。
そのままズブズブ眠りかけた頃、また車に放り込まれた。
一緒に放り込まれた野郎二人はぺちゃくちゃと元気に喋り倒していたが、中でも最高齢なおれはガーガー車の中で寝て、はっと起きたときには車内にひとりだ。
窓の外に目を凝らしたらいつもの景色だった。

「ん、あっ、おい! だめだおれぁ引っ越したんだ! こっちじゃねェ」
「はァ? 先言ってくださいよ」
「悪ィ」

車は大通りでUターンし、携帯に登録していた新住所に向かって走り始めた。
最後の一人だったので、迷惑ついでに家の手前の路地まで送ってもらう。
ドアを閉める音が静かな住宅地にやけに響いた。
斜め前の家の庭で、音に反応した犬がわんと1度だけ吠える。

未だ使い慣れない鍵をおぼつかない手先で鍵穴に差し込んだ。
ギュウーと妙に高い音で扉が軋んだのでおいおいと思う。
廊下は暗く、静かだ。
ただしリビングに通じるドアから灯りが漏れていた。
まだ誰かいる。
思えば時刻は夜中の二時半で、起きてるやつがいてもおかしくはない。
水、と思い、灯りに向かう羽虫の様にふらふらと歩いた。

右手に見えるリビングは明るく、左手のキッチンは暗がりに沈んでいる。
一直線にシンクへと向かい、適当なコップを借りてざばざばと水を汲み、煽るように飲んだ。
はぁはぁと息が上がる。飲み過ぎたわけでもないのにいつもこうだ。
この仕事はおれには向いていない。
カタカタと心地よいビートが一定の速度でどこからか走ってくる。
シンクに手をついて、肩で息をして、目を閉じてそのリズムを追いかけた。

「おかえりなさい。大丈夫?」

振り返ると、ナミさんが昼間と全く同じ場所にゆったりともたれ、足に置いたノートパソコンから顔を上げてこちらを見ていた。

「あ、あァ、びびった。ナミさんか」
「家に帰ってきてびびったはないでしょ。それより顔色悪いけど本当に平気なの」

ナミさんは眼鏡を外し、ソファの横に置いてあるカップから一口何かを飲んだ。

「あぁ、ごめん、酒くせぇかも」
「それより煙草くさい。どうやって帰って来たの? 電車?」
「や、送りの車がある」

へぇ、と物珍しげにナミさんはひとつ相槌を打つと、すっと壁に向かって指を差した。

「昼間言い忘れてたけど風呂場はこの裏。一階廊下の突き当りを左に曲がったところよ。シャンプーとか石鹸とか、私たちは自分のを使ってるけど、男たちは共有してるみたいだからあんたも借りれば」
「んあ、じゃあそうさせてもらおっかな」

げほ、と一口むせて口元を拭った。立ちのぼる酒とたばこと香水のにおいに頭がガンガンする。
コップを軽く流してもとあった場所に戻し、部屋を出る間際に「ナミさんは」と尋ねた。

「なに?」
「や……仕事?」
「えぇ。宵っ張りなの。でもそろそろ寝るわ」
「あ、そう」
「起きてた方がいい?」

え? と聞き直すと、ナミさんはぱたんとパソコンを閉じて、噛んで含めるみたいに一字ずつはっきりと言い直した。

「あんたが戻るまで、起きてた方がいい?」

こち、と突然どこからか時計の針の音がした。
責めたてるみたいに針の音が近づいてくる。
口を開くと酒臭い息が漏れ、ゲホッとまたむせた。
ナミさんはクッと小さく笑って、「あんまり遅いと寝ちゃうから」と言った。

「──じゃ、急ぎで」
「あんたが最後だから軽く洗ってきてくれる?」

了解と言いながらリビングのドアを閉めた。
階段目の一段目を踏み外し、ドンと大きく床を踏み鳴らした。
3階まで上がってからおれの部屋はどこだっけと一瞬迷い、廊下の電気を手探りで探してつけると突き当りのドアに見覚えがあった。
ノブを回すと鍵がかかっていて、当然か、とケツのポケットに突っ込んでいた鍵を取り出す。
やけに手汗をかいていた。
引っ越しの荷物の中から着替えとタオルを取り出し、ふたたび階段を降りる。
一階の廊下の電気は消えていたので、リビングからこぼれる灯りがぽかっと浮かんで見える。
しばらく見入って、彼女に言われた通り一階奥の左手に進むと脱衣所と風呂場があった。共用の洗濯機もある。
浴室は広く、清潔で、色とりどりのボトルがいくつか置いてあった。
野郎のものと思われるものを拝借し、ざばざばとかき鳴らすようにシャワーを浴びた。
酒臭さは依然として体の中から染みだすようだったが、香水のにおいは排水溝に惜しげもなく流れていった。



脱衣所を出ると廊下に明かりがついていて、代わりにリビングの明かりが消えていた。
間に合わなかった。
タオルを肩に掛け、早いところ自分用の食器を買わねェとと考えながらリビングのドアを引いたら、暗がりからぽんと飛び出すようにナミさんが出てきた。
ぶつかる寸でのところで互いがハッと立ち止まった。

「わっ」
「あ、ごめ」
「お風呂、使い方分かった?」
「あぁ、うん、ありがとう」

ナミさんはTシャツの首回りに眼鏡をかけていた。少し引き下がったその布の先に自然と目が行く。

「電気、消えてるけど」
「あぁ、うん、寝ようかと」
「あ、そう、君の部屋は?」
「一階の右手。風呂場の斜め向かいよ」

あぁ、とクソつまらない返事をしたら、ふふっとナミさんが笑った。

「間に合わなかった、って思ったでしょ」
「あー……うん」
「どうかしら」

くらっと、本当に揺さぶられるようにくらっときたのだ。

腰をかがめると肩に掛けたタオルがずるりと落ちた。
肩を掴むと思いのほか細く骨ばっていて、手のひらに余るほどだ。
ナミさんが少し背伸びをしたおかげで、思いのほかすぐに唇が合わさった。
かくっと頭が引き寄せられ、そのままよろよろと暗いリビングに引きずり込まれる。
引きずり込まれるというか、おれが彼女を押し込んだというか、どっちつかずなところだ。
ただ、ばかでかいソファまでおれを誘導したのは確実にナミさんの方で、重力に任せて倒れ込むとその衝撃でナミさんが小さく「うっ」と呻いた。
服を脱がしたあと、ナミさんがおれの頭を抱えたまま小さな声で「泥酔してるんだと思った」とささやいた。

「覚めたよ」
「風呂場で?」
「君で」
「あっそ」

後頭部を撫でていた手がするりとおれの顔を掴み、自分のところまでもっていく。
全部、彼女が求めるがままだ。

今この家に何人の人間がいるだろう。
ナミさん、おれ。
ゾロとルフィは自分の部屋にいるのだろうか。
彼女は奴らの風呂上りをひっそりとリビングで待つことがあるのだろうか。
食卓にはあと二つ席がある。
まだ見ぬ誰かとも、あるいは。

「サンジ君、サンジ君。持ってる?」
「え、あ、ねぇかも」
「ん、わかった」

突然むくりと身を起こした彼女は、おれがずりさげたハーフパンツをみずから上げると、ぺたぺた足をならしてリビングを出て、すぐに戻ってきた。

「はい」

アホのようにぽかんとするおれの手にゴムを乗せ、よいしょとソファに両足を乗せて座り込む。

「いるでしょ」
「あ、うん、ありがと」

おれがチリチリと袋を破くのを、ナミさんはじっと見ていた。




拍手[17回]

シルバーの綺麗な鍵だった。
これ以上ないくらいシンプルで完璧なそれを、管理人を名乗る女性から受け取る。

「メインドアもその鍵で開くわ。一応0時から朝の6時まで共用スペースでは静かにね。まぁ時々うるさくなることもあるんだけど……あんたの部屋は三階、突き当たり」

バルコニーのある東向きのいい部屋よ、と彼女は扉を開けた。
何度も塗り重ねた跡の残る白いドアが、軋みながら内側に開いた。

白樺を模したような白い床に、ドアと同じく何度も塗り重ねた白い壁。バルコニーに続く小さなドアが向かい側にあった。

「なかなか広いでしょ。どう?」
「……あぁ、いいね。最高だ」

手の中の鍵を弄ぶように転がすとチャリリと鳴った。
彼女は猫のように目を細めて笑い、手を差し出す。

「ナミよ。改めて、これからよろしくね」

小さな手を取ると、ぎゅっと握られた。
だからそのまま持ち上げて、細い3本の指先を唇まで持っていく。
ぎょっとした様子で彼女が手を引きかけたが、握って離さなかった。

「サンジです。君のような可愛い管理人さんがいるアパートメントに住めて嬉しいよ」
「あ、そう、はい」

ナミさんはぱっと手を引っ込めて、くるりときびすを返して部屋の外まで歩いて行った。

「引越しの荷物はいつ届くの?」
「昼すぎに」
「じゃあ今いる住人に挨拶だけ済ませて、手伝わせましょう」

彼女の姿が廊下に消えたので後に続こうとしたら、ひょこりと彼女が顔だけ覗かせた。

「でも着いたばっかりだから少し休むといいわ。適当に降りてきて」

そう言い残して、ととんととんとリズミカルな足音が遠ざかっていった。
一人暮らしには少し贅沢な広さの一間をぐるりと見渡す。
ベッドがひとつ備え付けてあった。
清潔そうなシーツがたたんで置いてある。
部屋は静かで、向かいや階下から物音や話し声が聞こえない。
平日の真昼間のせいか、空気はのどかで少しだけほこりっぽい。
収納の場所を確認して、バルコニーのドアを開け放った。
半畳分のスペースを細長く伸ばしたみたいなせまいスペースに出て下を覗くと、小庭に整理された花壇があるのが見えた。
遠くから車の音が聞こえる。
真向かいは隣家の茶色い壁で、塀の上を鯖みたいな柄の不細工な猫が歩いていた。
タバコに火を付けたが、この建物は禁煙だろうか。

階下に降りて、玄関すぐ左のメインリビングらしい部屋に入る。
大きなカウンターキッチンと6人掛けのダイニングテーブルが一番に目に飛び込んできた。
ワインレッドのランチョンマットが6人分、お行儀よく敷かれている。
右に目を移すと、大きなL字型カウチソファの角の部分にもたれてナミさんが膝に置いたPCを睨んでいた。
細い茶色のフレームのメガネをかけている。

そして部屋にはもう一人、ソファの長辺の端に尻を引っ掛けるように座る男の背中が見えていた。

「あら」

ナミさんはメガネを外し、腕を上に突き上げて伸びをしながらおれを見上げた。

「少しは休めた?」
「あぁ、ありがとう」
「ほらゾロ、新しく入った人よ。サンジ君ていうの」

呼ばれた男はちらりとおれを振り仰ぎ、おうと短く誰にともなく言った。
愛想のない野郎の相槌などとるにたらないので、こちらも黙ってひとつ頷くのみだ。
ナミさんは少し肩をすくめてからPCを退けて立ち上がった。

「紅茶飲む? キッチンの使い方説明するわ」
「あーじゃあ頂こうかな。それか自分で淹れるよ」
「そ? そこにケトルがあるわ。基本的にキッチンにあるものは共用だから好きに使って。冷蔵庫の中はプラスチックのボックスで分けてあるから、あんたのスペースもあるわ。開けてみて」

ナミさんはその場に立ったまま大きな冷蔵庫を指差す。
扉を開けると、黄色い光の中は彼女の言う通り6つのプラボックスで分けられており、名前の書いた白いメンディングテープが貼られていた。

「何も書いてないのがあんたのよ。……んーとでも、そこの冷蔵庫の中はわりと無法地帯だからあんまり信用しないで」
「無法地帯?」
「その冷蔵庫の中の食べ物は全部自分のだと思ってるバカが一人いるのよ」

はは、と笑って扉を閉める。
足元にまとわりつく冷気を蹴り払うように歩いてケトルに水を足した。
ナミさんはまたソファに腰掛け、PCを開く。

「そっちのカウンターの上にかごがあるでしょ。ちょっとしたお菓子とかティーバックが入ってるからご自由に。一応私が補充してるけど、気付いたら足してくれたりしたら嬉しいな」
「了解」

シュンシュンとケトルがせわしい音を立て始める。

「そろそろ荷物届くかしら──サンジ君お昼ごはんはまだよね」
「あぁ」
「どうしよっかなー、ゾロあんたは?」
「腹減った」

訊かれた男は手元の本から顔も上げずに言った。
そういやこの二人は平日のこんな昼間になぜ家にいるんだろう。
ナミさんは呆れ顔というより若干目を吊り上げて「そうじゃないわよバカ、家でごはん食べるのかって訊いてるの」と口調を尖らせた。
「食う」と男が短く答える。

「あそう。んじゃああんたの分はツケとくとして、サンジくんは初日だから歓迎も兼ねて特別に無料ね。今からごはん作るけどよかったら一緒に食べない?」
「ナミさんが作ってくれるんだ?」
「えぇ、男の一人暮らしは食事偏るでしょ。材料費と手間賃を出せば私が作るときに一緒に作ってあげてるのよ」
「そりゃあ嬉しい。あーでも」

キッチンを振り返る。
小さなミルクパンから深くて広い厚手の鍋まで、わりと幅広く調理器具は揃っていそうだ。

「材料だけご馳走してもらえる? よけりゃおれが作るよ」
「作れるの?」
「こう見えて」

へぇ、とナミさんは少し珍しそうに顔を上げた。

「嬉しい、今ちょっと手がかかる仕事してて。じゃあお願いするわ。冷蔵庫の中は私とゾロのを好きに使って。乾物や缶詰は横の緑の棚ね」

よろしく、と軽く手を上げて、ナミさんは猛烈にキーボードを打ち込み始めた。
在宅ワークね、と彼女の美しい眉間を眺めてから、冷蔵庫を開けた。
新鮮なセロリと唐辛子、冷凍庫のシーフードミックスをナミさんのボックスから頂戴する。
ゾロのボックスにはリンゴが3つと水のボトルが転がっているだけだった。
乾物の棚には目当ての1.7mmスパゲッティが入っていてナミさんの名前がマジックで書いてあった。
お得意の辛口海鮮パスタといこう。

キッチンカウンターに立つと、目の前の小窓からアパートの前の垣根が見えた。
緑色がすりガラス越しに震えるように揺れている。
キッチンの掛け時計に目をやると時刻は12時10分。
いつもならそろそろ起きようかという時間だ。
今日の出勤は午後6時。昼を食べたら出勤までにまた無数のメールをレディたちに送らなくてはと思いながら、セロリを細かく刻んだ。



「おいっしー! プロみたい!」

ナミさんが目を輝かせてくれるので、おれも同じものを頬張りながら目で礼を言う。
ゾロも片手で皿を押さえてばくばくと子供のように食べているので、どうやらお気に召したようだ。

「冷凍のシーフード、こんなにぷりぷりになるなんて」
「冷凍のまま火ィ通しちまうと水が出て縮んじまうんだ。塩水につけて解凍するといーぜ」
「やだ、ほんとにプロ……じゃなかったわよね」

苦笑しつつ、趣味みたいなもんさと答えた。
彼女にはおれのプロフィールを渡してある。
プロフィールを踏まえた審査に通らなければ、アパートメントは借りられないのだ。

「ごっそーさん」

パンッと勢いよく手の平を鳴らすので何かと思ったら、ゾロは空になった皿を持ってシンクに向かった。

「はや」

ナミさんがまさに他人事のように呟く。
ゾロはたくさん水を流してガチャガチャ言わせながら皿を洗うと、そのままリビングダイニングを出て行った。
ナミさんはちゅるりとスパゲッティを吸い上げて、唇を舐めてから小さく肩をすくめた。

「無愛想だけど、悪いやつじゃないから」
「あぁ、皿も洗ってたしな」
「あれは私の教育の賜物」

ナミさんは歯を見せて笑ってから、ケトルを指差し「沸かしてそのまま忘れてるわね。あとで私の分もお願い」とかわいらしく首を傾けた。



荷物は2時ごろ届いた。
宅配便でダンボールが2つ。
ナミさんは「これだけ?」と何故か不満げだ。

「家具はここのを借りられるからさ」
「それにしても少ないわね、ま、でもこれなら手伝いは必要なさそうね」
「あぁ、色々ありがとう」
「いーえ、それじゃね」

ナミさんはマグカップに口をつけながら部屋の前から立ち去った。
彼女にはさみを借りればよかった、と思いながら手で無理やりダンボールをこじ開ける。
冬服、夏服、仕事用の一張羅。その下にケース入りの包丁が一式。
服をダンボールから出してハンガーにかけ、収納スペースに仕舞う仕事は5分で終わった。
携帯のアラームをセットし、シーツが畳まれたままのベッドに横になった。
楽しくなりそうだ、と口元が緩んだがそれが皮肉なのか本心なのか自分でもわからなかった。






***

力尽きた\(^o^)/
一度やってみたかった麦わら一味ルームシェア!
今のところ考えている設定は、

ナミ アパート管理人、ライター 24
サンジ ホスト 26
ルフィ 大学生(バスキング) 21
ゾロ ? 26
ウソップ 市役所職員 24
ロビン 元CA、無職(株など投資家) 30
フランキー アパートの修理屋 36
ブルック 近所の中古楽器屋主人 ?
チョッパー 医者 ?

てきとうすぎる^^

その気になったら続くかもしれない感じのやつです。
そんなことより原稿ォォ

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白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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