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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です

 

“血”












その日は抜けるような晴天で、海をずっと薄く引き伸ばしたような青が空高くどこまでも続いていた。
エースは見張り台の上、狭いスペースではあるが壁に背中を預けて空を仰いでいた。
 
 
(…すっげぇ、あったか…)
 
 
じんわりと体温が上がっていく。
温かいと眠くなる性質は誰だって子供の頃から変わらず、勿論エースもそれに洩れない。
重たくなってきた瞼に逆らわず目を閉じようとしたそのとき、今その瞬間までエースを包んでいた日差しが一瞬だけ消えた。
 
 
「お?」
 
 
ぱちりと目を開けば、ひゅんと鋭く風を切る音が後ろから聞こえた。
それが導くままに振り返れば、大きな青が金色を反射させながら後甲板の方へと羽ばたいていく。
 
 
 
(…マルコだ)
 
 
 
 
次の島への偵察は、たいてい単体行動の効くマルコかエースが行くことになっていて、今回はマルコの番だった。
そのマルコが帰ってきたらしい。
 
 
 
 
金の尾がふわりと波のように浮かんで、それから透き通るような、それでいて深い青色の羽が再び上下する。
 
 
 
エースは身を起こしてその姿が船の上を旋回しながら高度を落としていくのを見ていた。
 
相変わらず、綺麗だ。
以前、本当にそう思ったから『綺麗だなマルコ』と言ったら何故か殴られたからもう言わないが、本当は出し惜しみすること自体もったいないと思うほど、綺麗だと思う。
 
マルコは不死鳥で、それは誰もが知っていて、それがあいつの強みであって。
美しく、気高く、強く。
 
それなのに、本当にたまにだが、マルコが炎に変わった自身の腕を眺めているときにその瞳が無機質な色を宿すことがエースは気がかりだった。
 
 
 
「…綺麗なのになあ」
 
 
誰にともなくそう呟いて、揺れる金の尾を眺めていれば、後甲板へと降りていくマルコが突如一気に高度を落としたように見えた。
 
(!)
 
エースは思わず身を乗り出したが、すぐにマルコが何事もなかったかのように形成を立て直すので、気のせいかと詰めていた息を吐き出した。
それから見張り台の手すりに足をかけ、エースはとんと軽くその足場を蹴る。
ひゅんと甲板床に下り立ったエースは2週間ぶりに帰ってきたマルコを労わろうかと後甲板へと駆けだしたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「マールコッ」
 
 
甲板に下り立つと同時に人の姿に戻っていたマルコは、エースの声に素早く振り返った。
その様子にエースは首をかしげる。
 
「? おかえりマルコ」
 
「…あぁ、エース…ただいま、」
 
 
テンガロンハットのてっぺんを押さえてエースがにっと笑えば、マルコもいつものように少しだけ口角を上げて応えてくれる。
 
 
「…オヤジに、報告行くよい」
 
「ああそっか、じゃあ今日は宴だなっ!一番隊の奴ら喜ぶぞ!」
 
「…あぁ、じゃあ…」
 
 
朗らかに笑うエースにもう一度笑い返して、その横を通り過ぎる。
だがそれは、マルコがエースの隣に一歩を踏み出す前にマルコの身体が崩れ落ちたことによって叶わなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…え…?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ぐしゃりと、音もなく崩れ落ちたその身体を、エースは数秒の間呆然と見下ろしていた。
重なるように倒れた体はぴくりとも動かない。
白いシャツの下から盛り上がった肩甲骨がやけに目についた。
 
 
 
 
 
 
 
「…マ、ルコ…?っ、マルコ!!」
 
 
 
我に返ったエースが慌ててその肩を揺すり、俯いたマルコの顔を上向かせる。
 
 
「っ!!」
 
 
 
赤黒く酸化した血液がマルコの口から滴り甲板を染めていく。
一度大きくその身体が波を打ったかと思えば、またどろりとした血液を吐き出した。
 
 
 
 
 
「っあっ…!!だ、誰か!!マルコが!マルコが!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
じゃがいもが所狭しとひしめき合う籠を二つ両手に抱えて倉庫から出てきたサッチは、薄暗い倉庫に目が慣れていたため、一気に収縮する瞳孔に一瞬痛みすら覚える。
 
 
(おーおー今日もいい天気ってか)
 
 
 
グランドラインもやるじゃねぇかと言わざるを得ない青空ににやりと笑って、サッチはじゃがいもの籠を抱えなおす。
 
今日の昼飯用にこのジャガイモ全部を湯剥きして、家畜小屋から鳥四羽裁いて…と頭の中で今後の算段をしていると、ひらりと、ひと際眩しい光が目を刺した。
その方向へ顔を向ければ、大きく広がった羽がちょうど太陽を隠すところだった。
 
 
 
 
本日も無事不死鳥様ご帰還っと、
一人呟いたサッチは鼻歌を歌いながらマルコが飛んで行ったほうに背を向けキッチンへと歩き出す。
 
 
 
 
 
 
(…そういやあいつ、なんでわざわざ後甲板に)
 
 
 
普通偵察から帰ればすぐにオヤジに報告に行くわけで、それならば表甲板に降り立てば早いわけで。
たとえそうでなくてもわざわざ遠回りして後甲板に降り立つ意味はない。
それは、合理的なマルコの行動にしては不似合いなように思えた。
 
 
 
(…いっちょお迎えしてやるか、)
 
 
 
 
 
 
昔から、それはもう本当に昔から。
兄弟が帰ってきたならば出迎えるのが当たり前となっていた。
それは十年経っても二十年経っても、いつまでも当たり前であり続けたし、そうすることがサッチも好きだった。
 
 
 
おかえりと言えば、ただいまと言う。
こんなにも簡単に幸せになる方法が転がっているのだ。
捨てていてはもったいない。
 
 
 
 
 
 
 
 
くるりと身体を反転させたサッチは、籠の中のじゃがいもたちが落ちないよう軽く揺すりながら後甲板へと足を向けたのだった。
 
 
 
 
その数秒後引き攣った悲痛な声が進む方向から聞こえ、一瞬で宙に浮いたじゃがいもはサッチが跳ぶように駆け出すその後ろで雨音のような重たい音を立てて落ちた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ナースと船医の足音が重なり合う騒音は、いつの間にか止んでいた。。
その部屋の中にはひとりナースがいたが、他のナースに呼ばれて部屋を出ていく。
その際部屋の中にいたエースはじゃあマルコ隊長をよろしくと言われたが、何をどうよろしくすればいいのかわからない。
エースの脳内には未だ慌ただしい船医たちの悲鳴のような声が飛び交っていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
「エース」
 
 
座っていた回転椅子を少し回して振り返れば、膳をふたつ抱えたサッチがドアの傍に立っていた。
 
 
「マルコ、どうだって」
 
「…わか、ない…言ってること、よくわかんなくて…」
 
「…そか、」
 
 
まぁ食え、と差し出された膳の上にはまだ湯気をのぼらせるスープとピラフ。
半ば条件反射でスプーンを掴みそれを口へと運んだが、味なんかなかった。
サッチが珍しく失敗している。
 
「…なんか、まじぃぞ」
 
「…そりゃオレのせいじゃねぇよ」
 
 
確かに今砂を食べても同じ味がする気がする。
もう一つ椅子を持ってきたサッチは、エースと並んでベッドの前に座った。
その膝の上には、エースと同じ膳が置かれている。
二人は黙々と手を動かした。
 
 
「…ほんと、まじぃな」
 
「…だろ、」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
カツン、とスプーンがさらにぶつかった音がやけに響いた。
 
 
 
 
 
 
 
「…マルコの奴、帰ってきたとき、傷なんかなかったんだ」
 
「…」
 
「…外からじゃ、全然、普通の身体で…」
 
 
 
 
半分以上なくなった膝の上の食べ物を見つめたまま、エースがぽつりぽつりと零し始めた。
カランッ、と皿の上にスプーンが放り出される。
 
 
 
「…ッこいつっ、再生追いつかなかったくせに、外側だけ治して帰ってきたんだ…!
オレらに、気づかれねぇようにっ…!
だから傷口がどこかわかんねぇって、船医たちが焦ってて…
…だけど腹開けてみたら、内臓破れて、血の海だったって…!
…オレ、オレッ…全然気づかなくて…!!」
 
「当たり前だ馬鹿。しょうがねぇよ」
 
「…っどうしよう、サッチ…!マルコが死んだら、オレ…!!」
 
 
 
マルコは死なねぇよと、以前ならもっと軽く言えたのだろう。
だけど今、虫の息の兄弟を目の前にしてどうしてもその言葉が出なかった。
 
 
 
 
 
 
「…不死鳥も、不死身じゃあねぇんだな…」
 
 
息とともに吐き出すようにそう言ってから、その言葉が形になると想像以上に重たくてサッチは顔をしかめた。
 
わかっているはずのことだった。
マルコは不死鳥だが、不死身ではない。
傷は治るが痛みは残る人間の身体だ。
 
 
 
不死鳥の能力を手に入れて、無茶をするようになったマルコを何度もたしなめた。
 
 
 
 
(お前あんま突っ込んでくなよ、いくらなんでも危ねぇだろ)
 
(…オヤジのためなら、オレにしかできねぇこと、したいんだよい)
 
 
 
いいんだよいすぐに治るから。
そういってマルコは不敵に笑った。




 
 
いつだってそうだ。
今日のように外から見える部分の傷は綺麗に治して、痛みの形で残った傷は静かに蓄積させて、ひとりのときそれに耐える。
 
 
 
 
賢いフリしたとんだ馬鹿野郎の鳥頭は、わかっていない。
マルコが血を流せば痛いように、オレたちだって痛いんだ。
その血が繋がってなくても、たとえ赤の他人だろうと、苦しいときはいつだって一緒だ。
 
 
 
隠さないでほしい。
馬鹿げた矜持なんて腐らせて捨てちまえ。
いつだって一緒に苦しむ準備はできている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…エースほら、泣くな」
 
 
自分の髪をひっつかんでぎゅっと固く閉じた目の隙間からほろほろと涙をこぼすエースを、サッチが椅子ごと抱き寄せた。
目の前のコックコートにしがみつき、エースは恐怖に堪えるように震えながら泣いた。
 
 
 
そのとき、エースが鼻をすする音の隙間からごそりと布擦れの音が唐突に耳を打つ。
 
 
 
 
「…ん…」
 
 
 
ぴくっと眉を動かしたマルコは、いつものように眉間に皺を寄せてうっすらと目を開けた。
 
 
 
 
 
 
 
「…マルコ…?マルコ!!」
 
 
 
エースが飛びつくようにベッドの端に手をつくと、そこに寝そべっている当のマルコはいつものごとく鬱陶しそうにぐちゃぐちゃといろいろ入り混じったエースの顔を見上げた。
 
 
「なんだよい…きったねぇ顔しやがって…」
 
「きっ…!お前なぁ!」
 
 
絶句したエースがマルコに食って掛かろうとしたそのとき、唐突に部屋の扉が開いた。
 
 
「あ、マルコ隊長置きました?」
 
 
先ほど出て行ったナースは、目の前の出来事に特に動じることもなく間延びした声で良かったですねぇと笑った。
 



 
 
「…っておいおい、いいのか!?オヤジに知らせたり、その、なんかまだどっか診たりしなくて」
 
「え?はい、船長さんには知らせましたし」
 
「知らせましたって…」
 
 
ナースのあまりの冷静ぶりにサッチが言葉を失っていると、ナースは固まった二人の隊長を前に首をかしげる。
 
 
 



 
 
「私エース隊長に、マルコ隊長はそのうち起きますよ、って言いましたよね?」
 
 
 


 
 
 
サッチが答えを求めてエースの方を振り向けば、エースは呆けた顔でサッチを見つめて、それからナースを見つめた。
 
 
 
 
「…言われたっけ、」
 
「はい、『あぁ』って返事されましたよ」
 
「・・・」
 
「お前呆けてて聞いてなかっただろ!!」
 
 
つ、と一本エースの額に汗が流れた。
 
 
 
「…じゃあマルコは、」
 
「えぇ、はい。それも一応言いましたけど、もう大丈夫ですよ。マルコ隊長、私たちが治療してる傍からボウボウ燃えだして勝手に再生してくんだもの」
 
 
そうやってできるなら最初っからそうしてくださいよねぇ、と尻込みすることもなくあっけらかんとそう言い再び部屋を出ていくナースに、すまねぇよいとマルコが礼を返す。
 


 
淡々と進んでいく目の前の話に、サッチとエースはただ立ち尽くして目を丸めた。
 
 


 
 
 
「…こんの、バカマルコがぁ!!オレの美しい涙を返せ!!」
 
「痛っ!」
 
エースの平手がばしっとマルコの腹を叩くと、マルコは大仰に顔をしかめた。
 
 
「おまっ…!怪我人に手ぇ上げるんじゃねぇよい!それにてめぇが大事な話聞かねぇで、どうせ勝手な想像したただけだろい!」
 
「そうだとしても許さん!」
 
 
 
未だ寝ている状態のマルコの腹をびしばしと遠慮なく叩くエースに、マルコは軽く上体を起こして、その額を押し返したりそばかすの乗った頬をひっぱったりと怪我人らしからぬ応戦を始めた。
 
だがそれは、マルコがある一点に目を止めたことでぴたりと終わった。
 
 



 
 
 
 
 
「…サッ、チ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
下がり気味の眉をいつも以上に頼りなく下げたまま、それでも口はぎこちない笑みを浮かべるサッチの顔には、安堵に交じって未だ少しの恐怖が滲んでいた。
 
 
いつもふざけた風なサッチの初めて見る顔に、マルコもエースもぴたりとその動きを止めた。
 
 
 
 
「…サッチ、」
 
「…へへ…んとに、なんだってんだよ…」
 
 
 
カツ、と一歩踏み出したサッチは、唐突にマルコの額にチョップをかました。
あまりの不意打ちにマルコの上体は再びベッドへと沈む。
 
 
 
 
「痛ぁっ!!サッチてめぇ!!」
 
「アホウドリが!心配かけおって!反省なさい!!」
 
 
 
 
倒れ伏したマルコが額を押さえる手の隙間からサッチを除くと、その顔はいつものようで。
 
 
 
 
(…あぁ、嫌なもんを見た)
 
 
 
 
あんな顔をしたコイツなど二度と見たくないと、マルコは手のひらの下でこっそり笑う。
 
 
 
「…悪かったよい」
 
「ほんとにだぜ!」
 
「まったくだ」
 
 
偉そうに憤慨するエースとサッチを見上げて、マルコはいつものごとく口角を上げた。
 
 
 
 
「オレァそう簡単に死なねぇよい」
 
 
「はっ、どうだか」
 
 
 
今日のその姿じゃ説得力がねぇですぜマルコさん、と吐き捨てにやりと笑うサッチに、マルコも確かにと笑い返した。
 
 
 
 
「ま、一回くらい死にかけるのもいいんじゃね、マルコは」
 
「違いねぇ」
 
 
 
一瞬の間があいて、ふっと三人が同時に笑いを漏らす。
さっきまでの凍りついた空気が嘘のようで、あまりに嘘っぽすぎて今この時さえも嘘か、はたまた夢なんじゃないかと心配になる。
 
ただこの時が現実であることを、今さっき触れ合った場所からリアルに伝わる体温が告げていた。
 
 



 
 
 






(((・・・あぁ、)))









失いたくないと、心の底から叫んだ。 
 

 

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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