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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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日付が変わる10分前、マルコの机に未提出書類をすべて叩きつけてきたアンは、軽い足取りで食堂へと向かった。
思えば昼に少し食べただけで、今日は食事らしい食事をしていなかったことを思い出す。
べこりとお腹がえぐれてしまうんじゃないだろうかという恐怖と闘いながらもなんとか書類を仕上げた自分を心の中で盛大に褒めながら、船内を進んでいった。
 
 
 
 
食堂の扉を少し開けて、中に人がいないことを確かめる。
しかしアンはこっそりと覗き込んでいる今の自分の姿を想像して、せっかくマルコがかばってくれると言っていたのにこれじゃ水の泡なんじゃ、と不意に動きを止めた。
現にいま、盗み食いをする気満々である。
 
 
(…ま、いっか)
 
 
あっさりと天秤が空腹の方に傾き、サッチに怒られるとかそういう嫌なことは得意の『後で考える』を発動することにした。
 
 
 
 
 
この船で一番大きな空間である食堂には、縦に4つの大きなテーブルが並んでいる。
誰もいないとは知りつつなんとなく雰囲気で息を詰めたアンは真ん中の二つのテーブルの間を進んでいき、正面にあるカウンターまで近づいた。
はじめ真っ暗だったそこも、次第に目が慣れてきてぼんやりと風景の輪郭を描き出す。
カウンターを乗り越えて厨房へと入り込もうとしたアンは、ふと自分が足をかけているそこから少し離れたところに鎮座する背の高い物体を目に捉えた。
 
 
(・・・なにこれ)
 
 
行儀悪くカウンターテーブルについていた膝を戻し、その物体の方へと歩み寄る。
しかし一歩そちらへ踏み出した瞬間それが何であるか気づいたアンは、飛びつくようにその物体の方へと駆け寄った。
 
 
大きな皿の上で山、もしくは塔のように積まれたパスタは、乾くことのないようしっかりとラッピングされてそこにいた。
スパイスの効いたその香りが鼻腔をくすぐり、そわそわとアンはパスタに手を伸ばす。
 
 
(これ、食べていいかな、いいかな)
 
 
よしいい、と自分にゴーサインを出したアンはちょうどその皿の横にあったフォークを掴みとってラッピングを外し、折り重なるように積まれたパスタをフォークに絡ませた。
拳骨ほどの大きさでパスタがフォークの先端に絡まりつき、明らかに口より大きなそれを事もなげに口の中に押し込む。
 

 
 
(んまい)
 
 

 
もぐもぐと、ヒトに備わっているはずのない頬袋を盛大に活用して咀嚼し、パスタを口へと運ぶ動作を何度も繰り返した。
 

 
 
「んまい」
 
「おう、そりゃサッチ様の愛が入ってっからな」
 
「ほっかなるほど・・・・・・・!?」
 
 
驚きのあまりパスタが口からはみ出しそうになり、アンは慌てて手でそれを封じ込めた。
声の方へと顔を向けると同時に大きな灯りがともり、眩しさにアンは目を細める。
 
 
「ふぁっ・・・ふぁっひ!」
 
「おうよ」
 
「ひょ、ひょっとまって…!ほれは…!」
 
 
口の中のもとを慌てて飲み下そうとするが、焦りすぎて絡まったパスタが上手に呑み込めずもがもがと一人あがく。
そんなアンを見て小さく笑ったサッチは、アンが腰かけるカウンター席の隣に腰を下ろした。
 
 
「んな慌てねぇでも逃げねぇよ」
 
「…ん?…怒らないの?」
 
 
口の端からぴょろりと飛び出た麺をもう一度口の中に押し込みつつ恐る恐るそう言えば、サッチはカウンターに肘をついたまま手の甲でアンの額を小突いた。
 
 
「お馬鹿さんかお前は」
 
「んなっ」
 
「アンのためじゃなかったら誰がこんなとこに山積みのパスタにフォーク添えて置くかよ」
 
 
ごもっともな科白に、確かにと納得したアンは、初めから遠慮なんかしてなかったくせにじゃあ遠慮せずと呟いて、再びバキュームよろしくパスタを口に詰め始めた。
その様子をサッチは肘をついた手の上に顔を乗せて満足げに見遣る。
 
 
「サッチ何しに来たの?」
 
「ん?オレァずっとここにいたけど」
 
「!?うそ」
 
「うそじゃねぇよ、残りの食料の確認してた」
 
「ふーん…こんな遅くに?」
 
「…おうよ」
 
 
白ひげさんちのサッチ君は働き者だからねぇ、と冗談っぽく言ってアンが笑ったのを確認してから、サッチも少し笑う。
まさかマルコの部屋に行ったっきりの妹が心配でキッチンで待ち構えていたなんて言えない。
 
 
 
 
 
それからしばらくもきゅもきゅと口を動かしていたアンが、唐突にあ、と声を漏らした。
 
 
「ねぇサッチ」
 
「はいよ」
 
「あたしのことすき?」
 
 
ぱちくりと丸くなった目でアンを見つめれば、てらてらと光る口元のままアンも見つめ返す。
 
 
「…あー…そりゃあいつかの科白を思い出して大変心苦しいんですが」
 
「?」
 
「…まぁいいや、」
 
 
何の最終確認なのか知らないが、答えの出ていること、それに本人もわかっているはずのことを聞いてくるのは、アンにもそれなりに考えるところがあるのだろう。
減るもんじゃない、何度だって言ってやる。
減ったって出し惜しみなんてするもんか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あいしてるぜアン」
 
 
 
 
 
 
 
 
汚れた口元を手の甲で拭ったアンは、フォークを口にくわえたままにしゃりと笑った。
 
 
 
 
 
 
「だいすき」
 
 

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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