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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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足、怪我してる。
つま先を指差すと、アンの指先を追ってマルコも目線を下げた。

「ああ」

右足の親指の先からぽっと青い炎が上がり、マルコの丸まった爪の先をちろりと舐めてすぐに消えた。

「気付かなかった?」
「ああ」
「痛くないの」
「まさか」

お前それよりこれ、と10枚ほどの紙の束で鼻の頭をはたかれる。

「字が汚ェのは今に始まったことじゃねェが、計算ミスが多すぎる。あと新入りの隊員が入って何日経ったと思ってる。いい加減情報整理しとっけっつったろい」
「だって昨日はマルコが倉庫の掃除しろって」
「ありゃテメェが12番隊の夜食食い散らかしたせいだろうが。ハルタに謝ったのかよい」

言うことすべて潰して回るように言い負かされて、自然と尖った口のまま頷く。書類を押し付けられ、「書き直したら持って来い」と言い残してマルコは踵を返した。
なんてつまらない捨て台詞だろう。
白いシャツの背中を憎々しげに眼で追うと、ひらりと紙切れが空を舞うようにマルコは地下へ続く階段を降りて行った。

「なにをこわいお顔してんの」

背中側から現れた声に、「こわくないし」としかめ面のまま返事をする。
サッチは回り込んで少し膝を曲げ、アンの顔を覗き込む。ささくれた料理人の指がアンの頬をつまんだ。

「こわいっつってんの。笑いなさい」
「やだよ、もう、なんなのサッチ」
「マルコにまた嫌味でも言われたか」

サッチの手を払うように押しのけ、つままれた頬を擦る。

「嫌味っつーか……あたしが悪いんだけど」
「痴話喧嘩はサッチも食わねェよ」
「けんかじゃないもん」

不意にサッチの手が伸びて、今度は唇を上下で挟むようにつままれる。

「面白い顔してねーで、さっさと仕事片付けちまえよ。そったらデザート用意してやるから」
「……先に食べたい」
「だめ。ご褒美だと思って、ほら、さっさと行け」

構われたと思ったら、しっしっと追い払われる。
なんだよ、とこちらも捨て台詞を吐いてどかどかブーツの底を鳴らして部屋へ戻った。
隠すように握りしめたままだったバンソウコウは廊下のゴミ箱に捨てた。


部屋の隅に備え付けられた古い木の机に書類を放り投げる。
そのままいつものようにベッドに倒れ込もうとして、思いとどまった。
きっと今日も寝こけてやらなきゃいけないデスクワークは明日に持ち越され、今度こそ激しくマルコの雷が落ちる。
いつもなら避雷針になってくれるサッチや隊員たちも、こう毎日のことではさすがにもう庇ってくれないかもしれない。
それより毎日起こられても怒られても仕事をしない隊長って、どうなの。

あーやだやだやだやだ、と腹立ちまぎれに呟きながら、机の前に座り、灯りをつけた。
昨日寝ぼけながら書いたせいで、よれよれとした自分の字に辟易としながら直さなければならない部分を探す。全部書き直した方がマルコは喜ぶだろうが、そんな根気はない。マルコを喜ばせるためだけにがんばるなんてまっぴらだ。
書類にはすべて、マルコが青色のペンで直すべきところにチェックを入れていた。
神経質な男だ。小さな文字で、ちょっと右上がり気味に、アンの間違いを紙の上から指摘する。
本当につまんない男。海賊のくせにこんなちまちましたことにこだわって、ちっとも自由じゃない。
面と向かっては言えないし、本当はそんなふうに思ったことなんてない。でもマルコを非難しようと思えば何か捏造するしかないので、これでもかとマルコのつまらないところを頭の中で取り上げては罵倒して、そのあと少し哀しくなった。



海王類の眠たげな鳴き声が船底から響いてきて、顔を上げたら窓の外は黒く塗りつぶされていた。
ああ夜だ。終わった、とペンを置いたそのとき机の上の子電伝虫が内線のベルを鳴らした。

「おつかれさん。終わった?」
「え、サッチ見てた?」
「なにを」
「あたしを」

電話口の向こうで、けらけらと明るい笑い声がする。
同時に水音が響いていた。

「いータイミングだったみたいだな。デザート、マルコが部屋に持ってったから一緒にお食べなさい」
「はぁ!? マルコが持ってったの!? 取られちゃうよ!」
「イゾウじゃあるめぇし、んなことするほどガキじゃねェよ。アンの分もあるからって言っといてやったから」
「ばか! あほ! アホサッチ! デザートありがと!」
「どういたしまして。おやすみ」

ぷつり、と小さく電伝虫が鳴く。
サッチはいつも受話器を置くとき、さきに通話ボタンを押して切る癖があったなと思いだした。

机の上の書類は、アンとしては完ぺきにできあがっている。一個や二個や三個くらい計算ミスや誤字脱字はあるかもしれないけど、まあ読めるものではあると思う。
マルコに言われた新人の情報カードもまとめたし、作業中に少し舐めたラムがこぼれた跡はきれいにふき取った。
書類を束ねて、とんとんと机にぶつける。
マルコの部屋は廊下の突き当たり、船内の同じフロア、一番遠い場所にある。
置時計は10時少し前を差していて、耳を澄ますと海鳴りの向こうに毎夜の宴の騒ぎ声が聞こえてくる。いつもなら一も二もなく仕事をほっぽりだして隊員たちの部屋に乗り込み一緒に騒ぎ立てるところ、今日は幸いそんな衝動もない。
あれ、とアンは手を止めた。
そういえばない。どうして今日は、騒ぎたくて仕方がない気持ちにならないんだろう。

部屋を出ると、隊員たちの喧騒はひとまわり大きくなった。大部屋の前を通り過ぎると、わかりやすく音量が絞られていく。
船の廊下を歩くと、部屋にいるときよりもたしかに波の揺れを感じた。古い木の床は歩くたびに遠慮なく大きな音を立てて軋み、アンの重たいブーツに抗議の声をあげた。
マルコの部屋の扉にこつんとつま先がぶつかるくらいちかづいて、肩で扉を押し開ける。謎の切り傷が、けさがけに大きく木製のそれを横切っている。
アンの部屋と同じ広さの空間が広がって、そのつきあたりにマルコのデスクがある。たいてい、10回に9回はマルコはそこに座って扉に背を向けていた。
誰かが扉を開けて部屋に入ってきたことも、それがアンであることもわかっているはずなのに振り向きもしない。
マルコ、と声をかけようと息を吸い込んだそのとき、古い紙やこびりついた潮やたまったほこりっぽいにおいを押しのけて、もったりと甘い香りが鼻に滑り込んできた。

「いいにおい!」

たまらず叫んだアンに、マルコの肘がかくんとデスクから落ちた。
ギギッと使い古した椅子が床をこする。

「その前に」

振り返ったマルコの顔はいつものように良い顔色とは言い難いうえ、目を開けるのも億劫そうだ。でもどこか毒気を抜かれて、口元は少し笑っていた。
アンが書類を差し出すと、マルコは指先で弾いて中身をぱーっと20枚くらい一気に見た。それが紙束であることしか確認できないような速さだ。内容なんてもはやどうでもいいんじゃないの、とアンは顔をしかめた。

「おつかれさん」

部屋の隅の空いた椅子を、マルコは顎で指し示す。アンがガラガラと椅子を引っ張ってくると、マルコは膝に丸い皿を乗せていた。なにそれ、と言おうとして、またあの濃い香りが鼻の中を埋め尽くす。
皿の上には小さな果実が4つ、ころんころんと乗っていた。
赤紫色で、ふくらみかけの球根みたいでちょっと気味悪い。
手に取ると、皮がぴんと張りつめていて少しでも力を加えたらぶにゅりと潰してしまいそうな柔らかさが内側にあるのがわかった。

「な、なにこれ。食べられる?」
「いちじくだってよい。食べたことねェのかい」
「ない。初めて見た」

果実を鼻に近づけて、フスフス鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。やっぱりあの甘いにおいの正体はこのいちじくだ。
つんと先がすぼまった球根型の、すぼまっている方は赤紫から徐々に鮮やかな緑色に染まっている。一方ふくらんだおしりの方は、赤黒く裂けていた。
奇妙な外見に反してこのかぐわしいにおい。おいしいはずだ。
ぱっと大きく口を開いていちじくをまるごと放り込みかけたとき、マルコが黙ってアンを眺めているのに気付いた。
じっと見てくるその目は絶対面白がっている。

「──もしかして、皮剥いて食べるもの?」
「あぁ」

大半が口の中に入ったそれを、そっと取り出す。セーフセーフ。
「マルコの馬鹿野郎、先に言え」と毒づくと、「お前も一瞬ぐらいためらえよい」とマルコは笑ってひとつを手に取った。
 緑色の方から指先ですっと皮を引っ張ると、ふくらみへ向けてやわらかく服を脱ぐように皮が捲れていく。果肉はえぐみのある外側とちがって、乳白色にきらきら光っていた。

「ん」

バナナのように皮を剥いた果肉を差し出され、素直に受け取って顔の高さまで持ち上げた。白い果肉の部分に触れると、ぬるりとした。
ひとくちで食べようとしていたくせに、アンはこわごわと果肉を口に運ぶ。
完璧に熟した果肉は形を保っていたことが不思議なくらい柔らかく溶け、唇だけで噛み切ることができた。

「な、なんだこれ」

なんだこれ! ともう一度叫んで、口の中でジュクジュクと存在感を示す甘さに目を瞠った。つぶつぶとしているのは種なのか、果肉の一部なのかわからないけど下で触れるたびに弾けるようにぶつぶつと言うのがわかる。
なにより、頬にツーンとくるほど甘いのだ。こってりとした甘さがたっぷりの水分を含んでアンの口いっぱいに広がる。
ごくりとのみこんで、続けて残りを放り込む。剥き残った皮が舌に触れるのも気にならなかった。

「め、めちゃくちゃおいしい! 甘い! おいしい! ウソみたい!」
「ウソみたいってなんだよい」

鼻を鳴らしてマルコは笑い、いつのまにか剥いたいちじくをひとくちで頬張った。

「変なの……こんな気持ち悪い色してるのに。はちみつに砂糖足したくらい甘い」

でもくどくなくて、何も考えず皿の上のもうひとつに手を伸ばしていた。
マルコがしていた通りに皮を剥いて、今度は一口で頬張る。
さっきとは比較にならない迫力で甘い液体が口をいっぱいにして、舌で押し潰してしまいにはごくごくと飲んだ。
 口の中が空になると、思わずぷはーっといいたくなる。

 「アホサッチとか言ってごめん……すごいおいしい」
「気にすんな」

マルコが二個目の皮を剥くのを、思わず目で追ってしまう。
つるんと白い果肉が現れると、アンの口は自然とほんの少し開く。

「ん」

おもむろに、くちびるにぶちゅっと果肉がぶちあたった。
ぎょっとしてつい身を引いて、でもすぐにおそるおそる噛り付く。
弾けた果汁がぬめりを帯びて、いちじくのへたの部分を持ったマルコの指を流れて落ちる。マルコはそれを舐めとって、残りを自分の口に放り込んだ。

「美味い」

ぽつりと呟いたマルコが不意に腰を上げた。
ぼんやりとその動きを目で追っていると、突然猛禽類のかぎづめのようなマルコの手がアンの顔を掴んだ。親指が口のすぐ横の頬にめり込み、残りの4本の指はアンのうなじをがっちりと掴む。
は、と短く息を吸い込むことすらままならず、がつりと唇が重なる。その様はまるでむしゃむしゃと食らいつくようで、アンが驚く間さえなかった。
マルコの舌が口内に入り込むと、そこに残ったいちじくの甘みに反応して唾液が出る。口の端から洩れそうになるたび、マルコの親指がそれを拭った。

とんでもないことになった、とアンは思う。何か掴むところが欲しくて、マルコのひじと手首の間くらいの張りつめたところを握った。
アンの舌がマルコの咥内に吸い込まれると、舌の先の筋がはちきれそうになる。やばいやばい、と抗議の意を込めて爪を立ててもまるきり無視されて、むしろより強く吸われた。酸素が薄くなり苦しさのあまり声が漏れると、マルコが喜ぶのがわかった。尖った鼻梁がアンの頬に食い込む。
じゅっと音を立てて唾液を吸われると、悔しい気持ちになった。恥ずかしいよりも、悔しい。マルコのくせに、と意味もなく思う。
やっと唇が離れ、果汁と唾液でいっしょくたになったもので顎のあたりまでが濡れているのがわかった。乱暴に手の甲で拭い、マルコを睨みあげる。
息が上がり、言葉が出ない。アンの呼吸が落ち着くまでの間に、マルコはさっさと煙草に火をつけた。
ちらりと見られた気がしたので、「なに」と整ってきた呼吸で問う。

「別に」

マルコの吹き出した煙で、せっかくの甘い香りが覆われていく。
ばかやろう、とすねのあたりをブーツの底で蹴ったとき、サンダルの先から出た親指にバンソウコウが貼ってあって、ちょっと笑った。

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