OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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緑色の背表紙は、小さな図書室に目いっぱい詰め込まれた書物の中でもひときわ地味だった。
そもそも古いから。仕方ないわね、と指先を引っかけて取り出す。
ずっしりと持ち重りのするその本は、表紙にとある島の地図が描かれていたはずなのに、何度も何度もそこを触ったせいで掠れて見えなくなっていた。
立ったまま、適当にページを繰った。
赤い線がのたくった箇所がいくつかあり、あーあ、と思う。
せっかく貴重な本なのに、書き込んじゃって。
図書室は眺めがよく、大きな窓から外が見える。
白に近い青の空。真昼の、まじりけのない色をここから見るのをわりと気に入っている。
誰もいないと分かりきっているのに、つい辺りを見渡した。
図書室の扉は閉まっていて、誰かが来る気配もない。
そっと本の紙に鼻を近づけ、匂いをかいだ。
乾いたインクと紙のにおいに、うっすらとあの家のにおいがまだ混じっている。
どきどきした。
いつも、こうやってこっそりこの本に顔を近づけるたびに、言いようもなく胸が高鳴る。
潮騒のざわめきとか、海鳥の声とか、柑橘のかおりとか、そういうものをそっくりまるごとこの船に乗せているのだと思うことができた。
深く息を吸って本から顔を上げたとき、扉が音もなく開くのが目に入ってどきりとした。
ぱっと素早く振り返って、真正面から目が合う。
サンジ君は咥えていた煙草をぴこぴこ動かしながら「ナミさん」と驚いた顔で言った。
「びっくりした。サンジ君か」
「いねェなあと思ったら、ラッキーだ。調べ物?」
「ううん、ちょっと」
サンジ君は、ふっと力を抜くように微笑んで、「お茶淹れて来りゃよかったかな」と言った。
「サンジ君は? 珍しいじゃない、本なんて」
「ん、ルフィのヤツが見たことねェの釣り上げてよ。ちと図鑑を」
図鑑類は重たいので、書棚の一番下の段にずらりとならんでいる。
サンジ君はそこから目当ての一冊を抜き取ると、重たく大きなそれを抱えてソファにどかりと座った。
私は所在なく手にした本をそのままに、書棚を眺める。
と、サンジ君が自分の隣をぽんとひとつ叩いて私を呼んだ。
振り返ると、いつのまにか消された煙草から未だくすぶる紫煙をゆるーくたなびかせたまま、サンジ君は「よけりゃ、ここどうぞ」と微笑んだ。
「座ってもいいけどってこと?」
「失礼。ここに座ってはいただけねェかな」
丁寧なのに不遜な口調で、サンジ君はおいでと私を手招いた。
その手の動きにひらりと仰がれるように引き寄せられて、彼の隣に腰を下ろした。
「ナミさん、いいにおいがする」
「さっきお風呂入ったから」
「真昼間に?」
「真昼間だからよ」
凪いだ明るい海を見ながら湯船につかるのは至福だ。そう言うと、サンジ君は「じゃ、今度ご一緒させて」と笑った。
よいしょ、とサンジ君は図鑑を開く。
海域と水深を目安に、色とりどりの写真からそれらしきものを探していく。
私はルフィが釣り上げたというそれを見ていないから、サンジ君が繰っていくページを目で追うだけだ。
一枚、一枚、サンジ君はゆっくりとした手つきで厚い紙をめくっていく。
あ、あの魚、前にウソップが釣っておいしかったやつだ、と考えていたら突然サンジ君が「あー!」と叫んでバフンと図鑑を閉じた。
その勢いで起こった風が私の前髪を吹き上げる。
「わっ、なによ」
「だめ、もうだめ。ちょっといい?」
いつのまにか腰に回っていた手がぐいと私を引き寄せる。腰骨がぶつかり、どきりとした。
もう片方の彼の手が私のわきの間に滑り込み、抱え込む。
寄せられた顔にあらがう間もなく唇が重なる。新鮮な煙の味がした。
数日ぶりのキスはなんだかよく馴染んだ。
きっと、私がお風呂上りでしっとりと湿っているせいだ。
腰に回った手が背中を這い上がる。ブラの紐に細長い指が絡まる。
ぬるりと舌が滑り込んだとき、たまらず持っていた本でサンジ君の胸をぐっと押し返した。
名残惜しげに離れた唇が、悪あがきのように音を立てた。
「いいなんていってないでしょ」
「えぇー、そのわりにはナミさん乗り気だったくせに」
「うるさい。あとサンジ君けむりくさい」
「それはごめんなさい」
てへ、とかわいこぶった笑い方をして、サンジ君はするりと私の腰から手を離した。
「てか、本なんて持ってたっけ」
「最初から持ってたわよ」
「ナミさんの?」
「そう。家から持って来たの」
見せて、とサンジくんが言うので、まるごと手渡す。
表紙を一枚捲ってから、一枚ずつ紙をつまみあげるようにやさしくページを捲る。
「……難しい内容?」
「航海術の学術書だから。あんたは興味ないでしょ」
「興味以前の問題というか……にしても随分古いほんだな。紙も日焼けしてら」
「8歳のときから持ってるから」
「8歳!? んなときからこんな難しいの読んでたのナミさん」
「好きだったし」
へえぇ、と感嘆の声をあげてサンジ君は本を閉じた。
布を張った表紙を指で撫でて、「掠れてる」と小さく言った。
「──その本ね」
「うん?」
「万引きしたの。村の本屋から」
「えぇ? ……ま、ナミさんらしいっつーか」
「どうしても欲しくて、でも新刊なんて買えなくて。店出た瞬間ゲンさんに見つかって捕まえられて、そのままベルメールさんのところに連行」
猫のように首っ玉を捕まえられた私を想像したのか、サンジ君は小さく吹き出した。
「結局、本はベルメールさんが買い取ってくれたけど、死ぬほど怒られたわねー」
サンジ君は何も言わず、私を見つめてゆっくり目を細めて笑った。
この本のことを今日、彼に言えてよかった。
あの日あの村で私の何かがたくさんそこなわれたけど、こうして今でも手元に残っているものがある。
「ナミさんが世界中の地図を描いたら、多分すげぇたくさん本が出るから、もっと広い図書室がいるな」
「船、改築してもらう?」
「ん、それもいいけど。いっそどっかの島に図書館でも建てちまうか」
ゾロの名刀百選も、ウソップの冒険譚シリーズも、サンジ君のレシピ本もチョッパーの医学書もロビンの歴史を紐解くミステリーも、ブルックの古臭い恋愛小説も。
その頃にはルフィも本の一つや二つ読むようになるかもしれないし、まとめてフランキーの造った図書館にずらりと並べる。
ずっとみんな一緒なんて子供みたいに信じちゃいないけど、私たちの手垢がついた本だけがぎゅっと押し固まってひとところにあることを想像すると、思った以上に心が安らいだ。
サーンジー! とルフィのがなり声が下から響いた。
「ほら、呼んでる」
「あぁ、せっかくナミさんとのしあわせな未来を思い描いてたのに……クソが」
「はい行った行った」
あしらうように手を振ると、サンジ君はまだぶつぶつ言いながらも立ち上がった。
重たい図鑑は持ち出すことにしたらしい、手に持ったままだ。
サンジ君は反対の手で、「ありがとう」と私の本を返した。
受け取ると、本に彼の体温がほんのり移っている。
その温度が、いわゆる未来とやらを感じさせた。
そもそも古いから。仕方ないわね、と指先を引っかけて取り出す。
ずっしりと持ち重りのするその本は、表紙にとある島の地図が描かれていたはずなのに、何度も何度もそこを触ったせいで掠れて見えなくなっていた。
立ったまま、適当にページを繰った。
赤い線がのたくった箇所がいくつかあり、あーあ、と思う。
せっかく貴重な本なのに、書き込んじゃって。
図書室は眺めがよく、大きな窓から外が見える。
白に近い青の空。真昼の、まじりけのない色をここから見るのをわりと気に入っている。
誰もいないと分かりきっているのに、つい辺りを見渡した。
図書室の扉は閉まっていて、誰かが来る気配もない。
そっと本の紙に鼻を近づけ、匂いをかいだ。
乾いたインクと紙のにおいに、うっすらとあの家のにおいがまだ混じっている。
どきどきした。
いつも、こうやってこっそりこの本に顔を近づけるたびに、言いようもなく胸が高鳴る。
潮騒のざわめきとか、海鳥の声とか、柑橘のかおりとか、そういうものをそっくりまるごとこの船に乗せているのだと思うことができた。
深く息を吸って本から顔を上げたとき、扉が音もなく開くのが目に入ってどきりとした。
ぱっと素早く振り返って、真正面から目が合う。
サンジ君は咥えていた煙草をぴこぴこ動かしながら「ナミさん」と驚いた顔で言った。
「びっくりした。サンジ君か」
「いねェなあと思ったら、ラッキーだ。調べ物?」
「ううん、ちょっと」
サンジ君は、ふっと力を抜くように微笑んで、「お茶淹れて来りゃよかったかな」と言った。
「サンジ君は? 珍しいじゃない、本なんて」
「ん、ルフィのヤツが見たことねェの釣り上げてよ。ちと図鑑を」
図鑑類は重たいので、書棚の一番下の段にずらりとならんでいる。
サンジ君はそこから目当ての一冊を抜き取ると、重たく大きなそれを抱えてソファにどかりと座った。
私は所在なく手にした本をそのままに、書棚を眺める。
と、サンジ君が自分の隣をぽんとひとつ叩いて私を呼んだ。
振り返ると、いつのまにか消された煙草から未だくすぶる紫煙をゆるーくたなびかせたまま、サンジ君は「よけりゃ、ここどうぞ」と微笑んだ。
「座ってもいいけどってこと?」
「失礼。ここに座ってはいただけねェかな」
丁寧なのに不遜な口調で、サンジ君はおいでと私を手招いた。
その手の動きにひらりと仰がれるように引き寄せられて、彼の隣に腰を下ろした。
「ナミさん、いいにおいがする」
「さっきお風呂入ったから」
「真昼間に?」
「真昼間だからよ」
凪いだ明るい海を見ながら湯船につかるのは至福だ。そう言うと、サンジ君は「じゃ、今度ご一緒させて」と笑った。
よいしょ、とサンジ君は図鑑を開く。
海域と水深を目安に、色とりどりの写真からそれらしきものを探していく。
私はルフィが釣り上げたというそれを見ていないから、サンジ君が繰っていくページを目で追うだけだ。
一枚、一枚、サンジ君はゆっくりとした手つきで厚い紙をめくっていく。
あ、あの魚、前にウソップが釣っておいしかったやつだ、と考えていたら突然サンジ君が「あー!」と叫んでバフンと図鑑を閉じた。
その勢いで起こった風が私の前髪を吹き上げる。
「わっ、なによ」
「だめ、もうだめ。ちょっといい?」
いつのまにか腰に回っていた手がぐいと私を引き寄せる。腰骨がぶつかり、どきりとした。
もう片方の彼の手が私のわきの間に滑り込み、抱え込む。
寄せられた顔にあらがう間もなく唇が重なる。新鮮な煙の味がした。
数日ぶりのキスはなんだかよく馴染んだ。
きっと、私がお風呂上りでしっとりと湿っているせいだ。
腰に回った手が背中を這い上がる。ブラの紐に細長い指が絡まる。
ぬるりと舌が滑り込んだとき、たまらず持っていた本でサンジ君の胸をぐっと押し返した。
名残惜しげに離れた唇が、悪あがきのように音を立てた。
「いいなんていってないでしょ」
「えぇー、そのわりにはナミさん乗り気だったくせに」
「うるさい。あとサンジ君けむりくさい」
「それはごめんなさい」
てへ、とかわいこぶった笑い方をして、サンジ君はするりと私の腰から手を離した。
「てか、本なんて持ってたっけ」
「最初から持ってたわよ」
「ナミさんの?」
「そう。家から持って来たの」
見せて、とサンジくんが言うので、まるごと手渡す。
表紙を一枚捲ってから、一枚ずつ紙をつまみあげるようにやさしくページを捲る。
「……難しい内容?」
「航海術の学術書だから。あんたは興味ないでしょ」
「興味以前の問題というか……にしても随分古いほんだな。紙も日焼けしてら」
「8歳のときから持ってるから」
「8歳!? んなときからこんな難しいの読んでたのナミさん」
「好きだったし」
へえぇ、と感嘆の声をあげてサンジ君は本を閉じた。
布を張った表紙を指で撫でて、「掠れてる」と小さく言った。
「──その本ね」
「うん?」
「万引きしたの。村の本屋から」
「えぇ? ……ま、ナミさんらしいっつーか」
「どうしても欲しくて、でも新刊なんて買えなくて。店出た瞬間ゲンさんに見つかって捕まえられて、そのままベルメールさんのところに連行」
猫のように首っ玉を捕まえられた私を想像したのか、サンジ君は小さく吹き出した。
「結局、本はベルメールさんが買い取ってくれたけど、死ぬほど怒られたわねー」
サンジ君は何も言わず、私を見つめてゆっくり目を細めて笑った。
この本のことを今日、彼に言えてよかった。
あの日あの村で私の何かがたくさんそこなわれたけど、こうして今でも手元に残っているものがある。
「ナミさんが世界中の地図を描いたら、多分すげぇたくさん本が出るから、もっと広い図書室がいるな」
「船、改築してもらう?」
「ん、それもいいけど。いっそどっかの島に図書館でも建てちまうか」
ゾロの名刀百選も、ウソップの冒険譚シリーズも、サンジ君のレシピ本もチョッパーの医学書もロビンの歴史を紐解くミステリーも、ブルックの古臭い恋愛小説も。
その頃にはルフィも本の一つや二つ読むようになるかもしれないし、まとめてフランキーの造った図書館にずらりと並べる。
ずっとみんな一緒なんて子供みたいに信じちゃいないけど、私たちの手垢がついた本だけがぎゅっと押し固まってひとところにあることを想像すると、思った以上に心が安らいだ。
サーンジー! とルフィのがなり声が下から響いた。
「ほら、呼んでる」
「あぁ、せっかくナミさんとのしあわせな未来を思い描いてたのに……クソが」
「はい行った行った」
あしらうように手を振ると、サンジ君はまだぶつぶつ言いながらも立ち上がった。
重たい図鑑は持ち出すことにしたらしい、手に持ったままだ。
サンジ君は反対の手で、「ありがとう」と私の本を返した。
受け取ると、本に彼の体温がほんのり移っている。
その温度が、いわゆる未来とやらを感じさせた。
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