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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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「今晩メシ食いに来ていいか」と言われたとき、惰性で「勿論」と答えかけて思いとどまった。
息を止めるように言葉を吸い込んだ私に、彼が怪訝そうに振り返る。
結びかけの靴紐が、玄関に座り込んだ彼の肩越しに見えた。

「用事あんならいいぞ」
「──えぇ、そうね、今日はちょっと」

ゾロは少しだけ目をすがめ、返事もせずにまた俯いた。
何を考えただろう。
私と誰の予定を想像したのだろう。
今夜はナミたちと飲みに行く予定があるだけで、大した事情じゃないのに。
彼が想像した何かを私もまた想像し、彼の中で膨らんだいろんな思惑を夢見て私はわくわくする。

立ち上がった彼は、上り框からおりたせいで私より15センチほど背が低くなる。
私を見上げて「じゃあな」と言った。
今度いつ来るとか、今日はどうだったとか、そういう言葉は一切なく、別れのキスすらない。

「えぇ、じゃあ」

本当は「また」と言いたいのを堪えて、出ていく彼の背中を見送った。

16時ごろになるまでだらだらと掃除をしたり化粧を直したりして過ごし、たいして時計も見ずに適当に家を出て駅に着いたのは16時半を少し回った頃だった。
駅前にはすでにビビが待っていて、私を見つけて小さく手を振った。

「早いわね」
「ロビンさんも早いわよ。私はそこの本屋さんにいたんだけど、混んできたからでてきちゃった」

ふとビビの肩越し、50メートルほど向こうの柱の下でまるで人を待つようなさりげなさで佇む黒衣の男が見えた。
さりげないとは言って、その目は鋭い。私と目が合い彼は小さく会釈した。

「どうして離れて立ってるの?」
「なあに?」
「彼と。一緒に待てばいいのに」
「さあ。私が『じゃあ』って言ったからかしら」

ビビは私を見上げて、「どうしてそんなことを聞くの?」と言いたげな顔をした。
その無邪気さに、私は信じられない思いで微笑む。
いっときたりとも離れたくないとは思わないのかしら。
この50メートルの距離が死ぬほど欲しくなるときが、いつかやってくるとも知らずに。

「ロビンさんはどこかに出かけてらしたの?」
「いいえ、家にいたわ」
「そう、なんだか今日はお洒落だから」

そうかしら、と私は足元を見下ろした。
ベージュ色のパンプス、紺色のワンピース、レースのかぎあみショールと、パールのピアス。
どれもお気に入りではあるけど、特別お洒落をしたつもりはない。
ビビは含み笑いをして「デートだったのかと思った」と言った。

「デートねぇ」
「ふふ、ちがった?」

デートはしてない。セックスはしたわと言いかけて、ビビが私の肩越しに手を振った。
振り返ると、小走りでカヤがこちらへ向かっていた。

「す、すみません、お、お、おそく、なって」
「遅くないって、まだ時間前だから。カヤさん息切れすぎよ、大丈夫?」
「ご、ごめんな、さい、ちょっと走、ると、すぐ」

つるんと白い頬がほんのすこし血色良くなる。
はぁはぁと苦しそうに、しかし嬉しそうにカヤは顔を上げた。

「あとはナミさんだけね」
「えぇ、いつも通りってかんじね」

ナミは時間通りにしか来ない。
待つのが嫌いと言うより、そういう時間を節約するのが好きなのだ。
ぽつぽつと午前中なにをしていたかなど話していたらいつの間にか17時が近づき、駅の人ごみに紛れてナミが「お待たせー」と姿を現した。
今日はナミの知っている店に行く。
私たちはぞろぞろと横並びに連なって、人波を縫って歩いた。


薄暗い店内で、四人の爪と氷のつまったグラスだけがキラキラ光っていた。
丸い円卓を囲んで背の高いスツールに座り、光るグラスをぶつけて乾杯する。
がやがやと騒々しく、声を張り上げなければ仲間内の会話すらままならない。
そのぶんどんな話をしたってかまわないのだという気安さがあった。
ナミのおすすめと他数品を注文し、突き出しのマリネをつまむ。
「今度の休みはどっか行くの?」とナミが誰にともなく尋ねた。

「3連休になるんだっけ」
「学会の準備で全部潰れちゃうわ、私」
「カヤさん相変わらず忙しいのねー」
「でも社会人に比べたら気楽なのよ、きっと」
「ナミはどこか行くの?」

んーそうねぇと、ナミはまんざらでもない顔を作って箸を動かしている。

「まだ未定。でも仕事お休み取れたしどっか行きたい。ロビンは?」
「そうね、私も未定だけどどこか遠出したいわ」
「誰と?」

真顔のナミと視線がかち合い、すぐにナミはにやっと笑った。

「誰と遠出するんだって?」
「──イヤな子ね」
「え、なになになに?」

ビビが身を乗り出して私を見つめてくる。

「ロビンさんやっぱり彼氏いるの? 全然教えてくれないんだもの」
「どんな人? 年上?」
「待って待って、私も順番に聞きたいから」

ナミがビビとカヤを制するように彼女たちに手のひらを向け、私に向き直った。

「こないだ夜たまたま会ったとき、一緒にいた人とどうなったの? その前に会った人と違う人だったけど」
「どうって、どうもなってないわ。あの日一緒にいただけ」
「一緒に薄暗い怪しい店に入ってったじゃない!」
「怪しくなんかないわよ、普通の飲み屋さん」
「うそうそうそ、んじゃあその店の後どこに行ったのか言ってみなさいよ」

黙って肩をすくめると、ビビとカヤは顔を寄せ合って息を呑み、ナミは鼻にくしゃっと皺を寄せた。

「ほらね! どうせそれから会ってないんでしょ」
「そうねぇ」
「ちょ、ちょっと待って、ロビンさんの彼氏の話は?」
「彼氏なんかいないわ」

えーっ、とビビが音にならない声で叫んだ。
隣のカヤはなぜか熱いとも言える視線を私に送ってくる。

「だって私好きな人がいるもの」

濡れたグラスに指で線を書いていたナミの手がぴたっと止まった。
えーっ、とまたビビが今度は声に出して叫ぶ。

「すきなひと、好きな人!?」ナミの声は張り上げても張り上げても周りのざわめきと一緒に天井に吸い込まれていく。

「えぇ、半年くらい前からずっと」
「聞いてないけど」
「言ってないわ」
「ずるい!」

思わず笑うとナミはますます嫌そうに顔をしかめた。
それでそれで、とビビがますます身を乗り出す。

「どんな人?」
「年下ね」
「えーっ意外! いくつ?」
「あなたたちくらいかしら、もう少し上かも」
「知らないの?」
「そういえば」

ナミが空のグラスをゴンとテーブルに置き、すかさず店員におかわりを頼んだ。

「で、どこで知り合った馬の骨なのよ」
「ナミさん言い方」
「うちの大学の学生ね。もう卒業したけど」
「ど、どんな人?」

どんな人。

「鉄の球みたい」
「は?」
「無口で愛想もないし、感情の起伏もほとんどないみたい。身体もちょっと不気味なくらい硬くて丈夫」
「……それどうなの、一緒にいて楽しいの?」
「勿論」

無口だけど要らないことは何一つ言わないし、言うべきことをきちんと選んで口に出す。
愛想はないけど冷たいわけじゃない。
そしてときおり爆発するみたいに声をあげて笑う。
そういうところが好きなのだ。彼女たちには言わないけど。

はー、と感嘆のようなため息のような声をあげて、ビビはからからとグラスを揺らした。

「でも、まだお付き合いには至ってないのね。好きって言った?」
「いいえ」
「言わないの?」
「機会があれば」
「相手の人はロビンさんの気持ち知ってるのかしら」
「さあ」

柳に風、とナミが肩をすくめた。

「ロビンが本気出したら堕ちないわけないじゃん。怖いなぁもう」
「そんなことないわ、全然うまくいかないもの」

「そうなの?」とビビが声を潜めた。
ぜんぜんよ、と私は繰り返す。
好きだなんて言ったら彼はなんて言うだろう。なにも言わず、いつもみたいに黙って出ていってしまうんだろうか。
そんなことになるのなら何も言わず何もしない方がいい。

「うまくいかないって、例えば?」

ナミが枝豆を手で摘み取りながら尋ねた。
鮮やかな黄緑色を目で追いながら、「たとえば」と私は考える。

「名前を呼んでもらった覚えがないわ」
「え、それって一方的にあんただけが知ってる人ってわけじゃないんでしょ?」
「そうよ。それに誘ってもすぐに帰ってしまうし」
「すぐにって、ごはん食べ終わったらさっさと帰っちゃうみたいな?」
「とか、セックスが終わればすぐに服を着てしまうとか」

突然カヤの手から小エビのフリットに刺さっていたつまようじが跳ねとんだ。
慌ててそれを拾い上げる彼女に「大丈夫?」と声をかけてから顔を上げると、ナミは眉間に二本の指を当てて難しい顔をしていた。

「待って、待って」
「なに?」
「あんたたちどういう仲なの」
「付き合ってないわ」
「友達なの?」
「いうなれば」
「でもエッチはするの?」
「するわ」

出た、とナミは目を瞠った。

「あんた相変わらず面白いことしてるのね」
「なんにも面白くないわ。上手くいってないって言ったでしょう」
「と、年下なんでしょ? 遊び人なの?」
「ばかねビビ、転がしてるのはロビンの方に決まってんじゃない」
「そんなのじゃないわ」

私の反駁に耳もかさず、ナミは深くため息をついた。

「で、なにが上手くいってないんだっけ」
「セックスのあとすぐに服を」
「そうじゃなくて、なんでそこまでして付き合ってないのよ」

薄っぺらいローストビーフをフォークの先に引っかける。
カーテンのように揺れながら持ち上がった。

「付き合おうとも付き合ってとも、言ったり言われたりしていないからかしら」

ふむ、とナミは腕を組む。
ビビはずっとカラカラとマドラーを回して、カヤは終始うつむき加減だ。
しかしそのカヤが、ぽつりと口を開いた。

「うまく、いくといいわね」
「え?」
「その人と、ロビンさん。好きな人って言ったじゃない」
「──えぇ、そうね」
「迷わず好きだって言えるの、すごいと思うの」

すごいかしら、と尋ねると、カヤは思いのほか力強く頷いた。
そのとき携帯がぶるぶると震え、その振動がスツールに伝わって飲み物が小刻みに揺れた。

「私ね、ごめんなさい──あぁ」
「もしかして」

ナミが携帯の画面を覗き込もうと首を伸ばす。
着信はゾロだった。
昼間会ったばかりなのに珍しいと思いながら椅子から降り立った。

喧騒から遠ざかりながら、電話に出る。

「もしもし?」
「どこにいる」
「私? 外だけど」

ざわめきは電話の向こうにも伝わっているのだろう、ゾロは少し口をつぐんだ。

「どうしたの? なにか」
「酒飲んでるのか」
「えぇまぁ」

それきりまた沈黙が続く。
通話独特の電子音がサーっと鳴りつづけている。
店を出て扉を閉めると少し周囲の音が落ち着いて、ゾロの息遣いまで聞こえるようになった。
彼が出ていく背中を見送ったときの気持ちを思い出し、落ち着かせようと自分の鎖骨を撫でた。

 「なにか忘れ物? 今外だから帰ったら」
 「一人か」
 「今? いいえ、人と一緒だけど」
 「──場所、どこだ」
 「駅のすぐ近くだけど」

店名を告げると、ゾロのいる方がにわかに騒々しくなった。大通りを歩いているのだと分かった。

「今から行くから待ってろ」
「え?」
「すぐ着く。いいな、動くなよ」

小動物ならその一声で殺せそうなほど凄味のある声を残し、唐突に電話は切れた。
つい通話口を見下ろしてしまう。

ゾロ。
私の想像が現実になって彼の胸を浸したのだと思うと、叫びたくなるほどうれしくなった。
私が誰と一緒だと思ったの、誰と一緒に何をしていると思ったの、それを想像してどう感じたの、全部聞きたい。
目を閉じて深呼吸し、再び目を開くと通りの向こうから走ってくる姿が見えて、言った通りの速さに笑いがこぼれた。

「ゾロ」
「帰るぞ」

軽く息を切らしながら、武骨な手が私のそれを掴む。
待って、と腕を引いた。不満げな顔が振り返る。

「どうして来てくれたの」
「お前が──」
「他の誰かといると思ったから?」

ゾロの切れていた息はすぐにも落ち着いていて、黒くて静かな目で私を見つめた。

「わかってんなら訊くな」
「じゃあどうして昼間そう言わなかったの」
「言われたかったのならテメェも態度で示せ」
「私の態度が良くなかったのかしら」

大きく口を開いて何か言いかけたゾロは、少し考えてから「ちがう」と言った。

「ちがうが、お前も悪ィ」

がしがしと頭を掻いて、またゾロは私の手を引いて歩き出した。

「帰るぞ」
「待って、帰るって言わなきゃ」
「何律儀なこと言ってんだ!」
「でもお金も払ってないし」
「アホか、ソイツに払わせとけ!」
「でもみんな私より下の女の子だし」
「は?」

ゾロが急に立ち止まったので、固い背中にぶつかりかける。
思わず彼の背に空いている方の手をついた。

「危ないわ」
「待て、お前誰と一緒に飲んでたっつった」
「友達よ。あなたと同じくらいの歳の女の子3人」

立ち尽くすゾロと私の沈黙を埋めるように、携帯が音を立てて震えた。
電話に出ると、さっきまで聞こえていた喧騒がわっと飛び出してきて、同時にくすくすと可愛らしい3人の笑い声が聞こえた。
その中からとびきりよく通る声で、ナミが「ガラスからまる見えなんだけど。帰るか連れてくるかどっちかよ」と言った。
「帰るわ」と迷わず答える。

「そうね、その方がよさそう」
「ごめんなさい、一旦戻って」
「いーわよ鞄持って出たんでしょ? 一杯しか飲んでないし私たちからのお祝いてことで」

じゃがんばって、と電話は無慈悲なほどあっさり切れた。

「帰っていいって」

するりと離れかけたゾロの手を慌てて掴み直す。
「ゾロ?」と覗き込むと、不機嫌と言うよりいっそ不健康そうに目を眇めた顔が振り返った。
「やっぱり全面的にお前が悪い。ややこしい言い方すんな!」
「そうね、ごめんなさい」

笑うつもりはなかったのだが我慢しきれずふっと笑うと、すかさず「笑うな」と叱られた。
ゾロは私の手を引いて、猛烈にガツガツと歩き出す。
少し心配になって口を開いた。

「ゾロ、ごめんなさい、怒らないで」
「怒ってねェ」
「すきよ、ゾロ」
「んなこた知ってる」
「セックスのあとすぐに服を着ないでいてくれたらもっとすき」

呆れた顔で振り返った彼は、「今んなこと言うな、襲うぞ」とさも馬鹿馬鹿しいとでもいうように呟いた。

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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