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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
欄干にもたれて夜の空を見ていたら、ふっと意識を抜き取られそうになる。
眠りに落ちる間際のような、それよりももっと乱暴で一方的に、大きな見えない手によって。
厚い雲が空を覆って、黒々とした夜の空気はいくらか冷たい水分をはらんでいた。
降るかも、と思ったらはらりと風に乗って雪が顔をかすめていき、ちょうど医務室から出てきたチョッパーが階下で「おー雪だ」と嬉しそうに独り声をあげるのが聞こえた。

「遅いのね、チョッパー」

下に声をかけると、小さな耳がぴんとこちらを向く。私を見上げて、チョッパーは「ナミもな」と笑った。

「またそんな恰好でいると風邪ひくぞ」
「うん、もう寝るところ。あんたなにしてたの」
「本読んでたらこんな時間で。寒いと思ったら雪が降ってた」

「ね。この辺は春島の海域なんだけど、もう三月なのに雪が降るのね」

「三月は雪の季節じゃないのか?」


チョッパーが落ちてきた瞼をこすりながら尋ねる。どうだろ、ともう一度空を見上げた。


「風花が舞うくらいならあるんじゃない」
「かざはな?」
「こういう、ここの真上の雲が降らせた雪じゃなくて、どっかで降った雪が流れて飛んでくることを風花が舞うって言うのよ」

ふうん、とチョッパーは興味がなさそうに相槌を打ってあくびをした。
「雪だ」と言ったときにはらんらんと光が宿っていた黒目は、もう夢とうつつでまどろんでいる。

「早く寝なさい」
「うん」

男部屋へと歩き出したチョッパーがふと足を止めて、私を見上げた。

「ナミ、食堂に文房具を忘れてる」
「え?」
「インクのにおいがするぞ」

蹄がまっすぐにダイニングの扉を指す。
おやすみ、とチョッパーが呟いて、とこんとこんという蹄の足音が遠ざかっていった。
忘れてたっけ。確かに夕食後、食堂で書き物をしたけど、ノートと一緒に全部まとめて引き揚げた気がする。でも、言われてみればロビンと話しながらノートだけを持って女部屋に帰ってしまったのかもしれない。
食堂へ足を向けると、またどこかから飛んできた雪の破片が鼻先にぶつかってひやりと溶けた。

食堂の丸い窓は灰色に染まっていた。なんだ、もういない、と思いながらノブに手を掛けたら、曇りガラスの窓はぼんやりと奥の光を映している。そっと扉を開けると、キッチンカウンターの小さなランプだけがぽっと一角を照らしていた。
サンジ君がカウンターで立ったまま書き物をしていた。

「なにしてんの、こんな暗いところで」

ゆっくりと振り向いて微笑んだサンジ君は、もうずいぶん前から私がこちらに近付いてくるのに気付いていたんだろう。

サンジ君は何も言わず、また視線を手元に戻した。

深夜のサンジ君は、特に深夜ふたりきりのときのサンジ君は、昼間より一層穏やかであぶない。

でも、何も言わずに私から視線を外した彼に「おいで」と言われた気がして、私はのこのこと近づいてしまうのだ。

そっと背後から彼の手元を覗き込む。オレンジ色のランプに照らされて、便箋とインクの壺がぴかりと光っている。生真面目な罫線が何本も引かれた紙の上には、いくらかくせのある字が並んでいた。

「手紙?」
「うん」

サンジ君はペンをインク壺に差し込むと、不意に私の腰を抱いてくちびるを舐めた。

「私のかと思った」
「なに?」
「インク。においがするって、チョッパーが」

ああ、とサンジ君は頷いて、あっさりと私を離す。何か作ろうか、とカウンターの内側に回って鍋を手に取った。


「いらないわ。もう寝るから」

「そう?」


おかまいなしにサンジ君は、小さく薄いまな板と包丁を取り出して、壁にかけていた何かを手早く刻む。

「誰に書いてたの」

そんなの分かりきっていたのに尋ねてしまう。
故郷に手紙を書くのは、サンジくんとウソップ、それにチョッパーくらいだろうか。フランキーも一度、クーに何かを渡していたところを見かけたことがある。私は一度も書いたことがなかった。
サンジ君がワインの栓を抜く。とろりと濃くて重たいそれが鍋にしたたる。
サンジ君は一度だけくるりと中をかき混ぜて、湯気が上がったところですぐに火を止めた。
銀色の取っ手がついたグラスに温めたワインを注いで、カウンターの向こうから私に手渡す。
黒々と光った飲み物の上に、白い湯気がとぐろを巻いている。
カウンターの向こうから、サンジ君が手紙を引き寄せた。続きを書くらしい。

「私、いてもいい?」
「いいよ」

サンジ君は静かに、ペンを動かし始めた。
ごとん、と重たい音が響くのは、船室のどこかで積み荷が壁にぶつかるから。揺れる足元をものともせずに、サンジ君は自分だけ少し浮いてるみたいな安定感ですこしずつ便箋を埋めていった。
熱いワインを冷ますためにふうっと息を吹くと、グラスをかすめていった息は向かいにあるサンジ君の前髪を揺らす。
銀色の取っ手の部分ではなくガラスのところを手で包むと、ちりちりと手のひらがやけどする。もう熱くて無理だ、と言うところでぱっと持ち替えては、またガラスのところに触れるというのを何度も繰り返しながら時間が進むのを待っていた。

「座ったら?」サンジくんが言う。

「うん。あんたお風呂はまだなの」
「うん。これから」

ナミさんは、とサンジくんが手を止めないまま深く息を吸い込んだ。

「いい匂いがするね。湯冷めするよ」
「雪が降ってたわ」
「まじ? さみーと思った」
「だからあんたも」

うん、とサンジくんは手を止めない。
サンジくんはよく文字を書く。突然思い立つのか、私に「紙の端っこちょっとちょうだい」と言ってレシピを書きつけたり、立ち寄ったお店の料理をメモしたり。
「まめね」というと「そうかなー」と照れたように笑った。
彼の筆圧の薄い、少し角ばった美しい文字が好きだった。
たくさん文字を書いてきたのだろう。書き慣れた字をなめらかにつづってゆく彼の手の動きを追うように、細かな文字たちが列をなす。
ペン先が紙をこするしゅるしゅるという音が、長くて果てのないリボンをほどき続けるみたいに静かに響く。

「なにを話すの」

手紙で、サンジ君は、遠くにいる家族になんて話しかけてるの。
サンジ君は、「んー」と小さく唸って手を止めない。

「最近作ったメシのこととか」
「うん」
「釣った魚のこととか」
「うん」
「美味かったレシピだとか」
「料理のことばっか」

うわ、とサンジ君が小さく声を上げた。
濡れたペン先からまっくろな雫が滴り、紙を汚した。

「あーあ」

そう言いながら、大して気にしたふうもなく続きを書き始める。

「そればっかだよ」
「うん?」
「料理のことくらいしか話すことねー」

そう、と言って彼の前髪に触れた。
少し脂っぽくて、束になった髪をめくって隠れた目を覗き込む。
サンジ君はやっと私をちらりと見て、「恥ずかしいよ」とちっとも恥ずかしくなさそうに言った。

「私のことは?」
「うん?」
「私のことは、書かないの」
「書かないよ」

サンジ君はペンを置き、前髪をめくり上げる私の手を取って自分の頬に持っていった。

「ナミさんのことは、帰ったら話すよ」

こっち来てよ、とサンジ君が言う。
あんたが来たら、と彼の冷たい頬から手を引き抜くと、サンジ君はにっこり笑ってカウンターを回ってこちら側にやって来た。
私をふわりと抱き上げてスツールに座らせると、私の太ももに両手を置いて、彼より高くなった私の顔を見上げる。

「ナミさん遅いから。待ってたんだぜ」

サンジ君はちらりと調理台の方に視線を走らせる。
つられてそちらに目をやると、花のように飾り切りされたフルーツがお皿に盛られていた。
ふふっと俯いて笑うと、少し背伸びした彼の鼻と鼻先が触れ合った。私の髪が、サンジくんの肩に乗る。

「自分のぶんも自分で用意しなきゃいけないから、不憫ね」
「自分のぶんだろうと、ナミさんが食べてくれるならなんだっていいよ」
「お風呂が混んでたの。あいつらが珍しく入ってるのと重なっちゃって」

うん、とサンジ君が私を見上げ、くちびるをつける。
彼の顔を両手で持ち上げると、それに合わせて私の太ももに置かれた手にぐっと力がこもった。

「手紙はいいの?」
「いつでも書けるし。書かなきゃおれのことなんざ思い出さねーで楽しくやってるだろうし」

そう、と笑うと、サンジ君は嬉しそうに私の頭を引き寄せて、反対の手で脚をなぞって腰
を撫でた。

私もサンジ君もわかっている。
今日は、少なくとも絶対に今日だけは、彼の家族は彼のことを思い出すだろう。
はるか遠くに行ってしまった、小さなかわいい自分たちの男の子のことを思い出すだろう。

手紙は、本当は私たちこそ書かなければいけないのかもしれない。
あなたたちのかわいい男の子は、私たちのそばで元気に楽しくやっていますと。
ときどき大きな怪我をして、死んじゃったかなってくらい大きな怪我をしていることは内緒ですけど、と。

でも大丈夫です、生きてます。

彼は素敵な仲間と一緒に、毎日ご飯を食べて、笑って、怒って、飲み過ぎては吐いて、口説いてはふられ、それはとても楽しい日々ではないでしょうか。
側で彼の毎日を見ることができないのは、彼が大好きなあなたたちにとってはとても歯がゆいことでしょうけど、私たちが代わりに見ています。
何かを得てはほころび輝くその顔も、失っては傷つくその顔も、余すことなく見ています。
なぜなら私たちも、彼のことが大好きだからです。
あなたたちに負けないくらい、大好きだからです。

船が波に揺さぶられ、ランプの灯りが大きく揺らめく。
傾いた体をそのままサンジ君に預けて、耳のそばでおめでとうと囁く。
どうかたくさんの嬉しいことがこの人にありますように。
ありがとうと答える彼の額にくちびるをつけて、吹き込むように祈った。

*2018 Sanji Happy Birthday !

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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