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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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今日も朝が来た。

明日も、その次も、ずっとずっと、何一つ違うことなく、朝は来るんだろう。






providence of affection














「おっマールコ!おはよっ」
「…エースか」


 


黒く艶を放つ瞳が俺をマルコをとらえて、にかっと笑った。
マルコは曖昧にその名前を呼ぶ。


 


「んだよぉ、相変わらず朝から辛気くせえなぁ」


 


お前を彩る赤は、寝起きのおっさんにはきついんだ。
そんなことを思ってゆるゆると口端をあげると、エースはいぶかしげな顔を見せた。
しかしそのうちキッチンから香ばしい朝飯の香りが漂ってくる。
エースは犬のようにぴくんと反応して顔を上げた。


「おっもうそんな時間か」


ぎゅるぎゅると海王類の鳴き声のように腹を鳴かせて、エースの足はすでにキッチンのほうへと伸びている。


変わることはない。
一緒に飯を食うようになって、馬鹿言って笑うようになってから、何一つ変わっていない。


エースの背中を見送って、マルコは甲板へと出た。
雲が少ない、いい天気だった。
各隊員がせっせと洗濯なり何なりとせわしく働いている。
一人一人のあいさつに適当な返事をかわし、マルコは一番端の手すりに肘をかけた。

ぼんやり過ごすことが増えた。
一瞬何をしているのかわからなくなることも。

白く光る海面を眺めていると、人影がぬっと隣に現れた。


「朝飯の時間だぜー、隊長さん」


サッチはからからと笑って、片手に持ったままのフライ返しをキッチンの方に向けてマルコを促した。
リーゼントの金髪が朝日を反射する。
それがマルコは眩しくて、目を細めた。


「あちぃな」


サッチが海に目をやって、反射する光から隠れるように手をかざした。
マルコは軽く眩暈を感じ、少しの間目を閉じる。
あまりにそうやってじっとしているので、サッチが顔を覗き込んだ。

おいマルコ、大丈夫かよと声がかかる。
ああ、大丈夫じゃないさ。



「・・・エースがキッチンに行ったよい。朝飯早めにしてやれ」
「お!そうかそうか、じゃあオレはエース特製デザートでも作ろうかねぇ」


エース、という単語を耳にした途端に笑顔を取り戻したこいつは、去り際に小さくオレの肩に触れた。
励ましのつもりだろうか。





「…冗談じゃねぇよい」


オレの声はきっと、波にまぎれて聞こえなかっただろう。



















しばらくの間揺れる波間を見つめてから、オレもキッチンへと向かった。
がやがやと騒がしく食器がぶつかる音や話し声が広がるそこは、いつも温かい。
コックが用意したオレ用の朝飯を持って席に着くと、すぐ横にジョズが座った。




「おはようマルコ」
「はよ」
「…目、赤いぞ。ちゃんと寝てるのか」
「…書類が溜まっててな」



心配げなジョズの視線を避けるように、キッチンを見渡した。
先程こちらに来たはずのあの二人の姿はなかった。





















親父がいなくなった船はただの箱で、オレたちはその中身としてただただ転がっていた。
腹の底があの日からずっと冷え切ったようで、オレの感情はびくともしない。



今日も日は沈み、黒が世界を包んだ。
オレは自室のベッドに背から倒れこんだ。



「…なあ、いるんだろい」


天井に投げつけた声は跳ね返ることなくその木の色に吸い込まれていく。
ノックもなく部屋の戸が開いた。
誰かは、見なくともわかる。




「…律儀にドアからかい」


そちらを見ることもなくそういうと、乾いた笑い声が返ってきた。



「育ちがいいもんでね」



つまらない冗談をかますそいつの後ろで、この船の末っ子は頭の後ろで腕を組んで立っているのだろう。
その姿を鮮明にしようと、オレは固く眼を閉じた。




「…いつまでいるんだい」


今朝と同じことを聞いた。
ちなみに昨日の朝とも、その前の朝とも同じことだ。



「さあな」

そっけない返事が返ってきた。

「じゃあ」

息を吸うと、ひゅっと細い音がした。


「なんでここにいる」


ため息と吐き出すように出たそれに、返事はなかった。




ギッとベッドが軋んで、三人分の重みにオレの寝床が悲鳴をあげた。
それでもオレは、目を開けない。
強情だよな、お前って。誰かにそう言われたっけな、と思い、すぐにああこいつだったとベッドに腰掛ける一方の男の姿を思い描いた。






「…マルコが、泣いてないんじゃないかと思って」






何言ってんだ、何言ってんだよい。
ガキのくせに、エース、心配なんかしやがって。くそ、だめだ。





「それがなんだよい」



気を張ってそう言ったら、からからと脳みそが音をたてて揺れたように痛んだ。




そういえば、と今更ながら気づいた。
オレはあの日から一度も、自分の涙というものをお目にかかっていない。
サッチの遺体を前にして、みんなの嗚咽をどこか遠くで聞きながらいろんなことを考えていた。
エースの死を、オヤジの死を、オレは。






「マルコ」


サッチの低く通った声がしんとした部屋にやけに響いた。


「もう何も護らなくていいんだぜ」




護る?何言ってんだ、この馬鹿野郎は。
おれには、守るものしかない。
すべて、この船の仲間のすべてが大切すぎて。
強さを求めて何が悪い。

目の前で、目の前でだぞ。
死ぬほど愛しい命を三つも、失ったんだ。
もうあんな思いは、ごめんだ。





下唇を強く噛み締めると、うっすらと鉄くささがにじんだ。


「わかってんだろ」



わかってるさ。
オレのこの回転のいい頭が憎いほど、分かっている。



「みんながお前を思ってる」



知ってるよ。



ジョズは毎朝おれの顔を覗き込んで、オレの顔色を確認する。
この浅黒い肌じゃたいしてわかりゃしねぇだろうに。
それでもそのたびに、少し眉をしかめる。
そんなにひどい顔をしているだろうか。

コックはもともと小食なオレがさらに小食になったがために、少ない飯で十分な栄養がとれるよう、毎日頭をひねっていることを知っている。

他人から言われると神妙に考えてしまうもので、そんなことを思い出しながら、ああだめだと思った。



このまま寝そべっていたら布団の中に沈み込んでしまいそうで心もとなくて、オレは上半身をゆっくりと起こした。
オレを挟むように、二人は座っていた。
そいつらの視線を痛いほど感じるが、顔をあげることができない。






「…いきなり、現れやがって」
「…うん」
「幽霊のくせに、朝しかいねぇし」
「うん」
「触れねぇくせに、触れるふりしたり」
「うん」
「…オレを、オレだけ、置いてきやがって」
「…うん」




零れてきた何かを抑えこむよう頭を抱えると、小さくなったオレを温度のないぬくもりが二人分、包んだ。
大の男をこれまた大の男が二人も抱きこむ図など寒すぎて想像したくもないな、と頭の隅で考えながら、オレは久しぶりに涙の味を感じた。






「…ちくしょ、…勝手に、死にやがって」


ごめん、ごめんな、マルコ


「…絶対ぇ、許さねぇ…」



マルコ、







オレは一人ではない。
ジョズが、ビスタやイゾウやほかの隊員も、オヤジが残したこの船もすべてがオレを支えている。

だけど。

この胸に開いた風穴に冷たいものが流れ込むたびに、オレはどうしようもなく一人を感じた。
この年になって一人はさびしいなど思うものかと、意地も張っていられないほどに。




(マルコ)


エースの声が、オレの名を呼ぶ。
オレはその少年が残る声に幾度も、笑い声も怒鳴り声も返した。
無邪気でムカつくとか言ってごめん、今も少しムカつくよい。



(マルコ)



サッチが、オレの名を呼ぶ。
お前と初めて出会った時なんか、もう忘れちまった。
覚えておく隙もないほどお前は目まぐるしく、オレの記憶を塗り替えていった。





(一人にして、ごめんな)



馬鹿野郎、と呟いた。
思いのほか小さな声しか出なかった。



(でも、)




ぎゅっと、二人分の腕の力が俺をとらえて離さない。






(あんたはもう少し、生きて)







ああ、お前たちがそういうのなら、いくらだって生きてやろう。
なんたってオレは不死鳥だからな。

お前たちが見ることのなかった世界を飽きるほど見て、エース、お前が食いきれなかった分の飯も飽きるほど食って、サッチ、お前が生きてたって飲めねえような高い酒も飽きるほど飲んで、笑って、笑って、本気で生きることに飽きたなら、その時オレはお前たちのもとへ行こう。
その時はヨボヨボんなったオレを好きなだけ笑ってくれ。
だがそのあと一発ずつ殴らせろ。
ああ愛しくてたまらない。



右側からサッチが、はっ、と小さく笑った。
左側からエースが、うへへと笑った。
両側から、聞きなれた声が俺の鼓膜を震わせた。





(マルコあいしてる!!)









顔をあげるとそこはただのオレの部屋で、程よく散らかった服や書類が目に入った。
シーツはオレの重みに皺を作っていたが、もう二人の男が腰かけていた跡など微塵もなく。
だが妙に生々しく、腕は温かかった。


「うわっ…!押すなっ!!」

突然オレの部屋のドアが勢い良く開いた。
どさどさと船員たちがなだれ込んでくる。そいつらは次から次へと押し寄せる後ろからの力に押されて、ドアの前にこんもりと人山を作った。
オレは突然のことに目を剥いてそちらをみやる。 



「…何だよい、人の部屋にノックもなく」


ジョズが山のような男たちの下から巨体を引っ張りだし、照れたように頭をかいた。


「いや、な、その」
「マルコ隊長!」


よく見れば、後ろのほうに一番隊の奴らも控えている。



「今夜は飲みましょう!御一緒させてください!」


そう叫ぶと、全員が一本ずつ酒びんを掲げた。

ジョズが少し笑いながら

「マルコ最近あんまり寝てないみたいだし、飯もくわねぇし、すぐ部屋戻っちまうから…一番隊の奴らが淋しがってるんだ。ついでにおれの隊も参加させてくれよ」

に、と笑う3番隊の奴らに目を移して、しばし呆然とする。
だがすぐに笑いがこみあげ来た。



きっとこの胸の風穴が埋まることはない。
だがオレは生きている。
仲間がいる。
十分じゃねぇか。




「・・・は、よし、オレも飲みたい気分だ。甲板行くよい」


オレの言葉に、皆が弾けるように笑った。








ぞろぞろと男どもが甲板へと移るさなか、自室の中を一瞥した。
相変わらず殺風景な部屋だ。
オレは部屋の中へと呟いた。





「オレもだ」



あいしてる。


 

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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