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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
一歩ずつ歩み寄ってくるように、夜は訪れる。
海よりも薄く淡い青色だった空が、だんだん赤みが増してきて、オレンジと紫と青のグラデーションを描く。
船べりに腰かけて足をぶらんと揺らしているうちにオレンジはどこかへ行ってしまって、気づけば紺一色の空になっていた。
 





覚醒





 
 
オヤジはまだかなあと空を仰げば風がそよいで、港に並ぶ住宅や飯屋から晩飯のにおいが届く。
 
あそこの家は焼き魚だろうか、香ばしいにおいがする。
あっちの飯屋では宴会を開いているらしい。
海の男たちの豪快な笑い声とジョッキがぶつかる音が、港に停泊するこの船の上にまで聞こえてきた。
 
 
 










 
 
とんと足場を蹴って船底へと着地する。
すでにあたりは顔の判別がつかないほど黒く暗くなっているが、あまり油は無駄にできないので灯りはつけないでおこうと、マルコは一度手に取ったランタンにふたをかぶせた。
 
 
 
 
暗闇に慣れてきた目を頼りに船室へと入った。
小さなキッチンが隅っこに備え付けられた小さなダイニング。
部屋の隅に置かれていた樽の栓を開けて、マルコは一杯の水を飲んだ。
 
自分の背丈ほどの高さのそれをマルコは上から覗くことができないので、ふたを開けて中身があとどれくらいかを見ることはできない。
明日にはきっと水の調達にマルコも駆り出されて、オヤジと一緒に街を歩くことになるだろうからあまり惜しまなくてもいいのかもしれないけれど、一応、無駄にはできない。
 
 
真っ暗なキッチンを見渡して、ふうと息をついたマルコは上へと伝う梯子に手をかけた。
 




 
 
ハンモックがひとつ。
そのとなりにも、二回りほど小さなハンモックが、ひとつ。
 
 
部屋の壁にぴったりと寄り添っている机の上には航海術のいろはが書かれた専門書が昨日眠る前の状態のままそこにあった。
 
文字が読めないマルコにとって専門書などどこが図式でどこが文字なのかすらわからない代物で、読み始めてひと月たった今でも本文はわからないことだらけだ。
オヤジがいないと読めないというのはひどく難儀で、時間がかかる。
しかしマルコが一文を一時間かけて読むだけで喜んでくれる人がいるので、苦にはならなかった。
 
 
「…しつどが、70いじょう、おんどが28いじょう…」
 
 
昨日読んだ一節を暗闇の中で諳んじて、マルコは本を閉じた。
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
ふたりの寝室の壁、大きなハンモックの頭側にはこれまたマルコの等身大ほどのサーベルが一本置いてある。
 
触るなと言われているので、触らない。
ただ、少し離れたところから見るだけだ。
 
 
不意にマルコは自分の手のひらを見つめた。
すっかり目が慣れて、ぼんやりと輪郭と共に手のひらが浮かぶ。
小さくて指も短くて、厚みのない手のひら。
この手では両手でサーベルを持ち上げることもできないだろう。
 
 
んっと声とともに力んでみても細い腕は細いままで、すとんと肩から指先まで一直線の腕は頼りない。
陸へ降りて同じ歳ほどの町の子供は、もう少ししっかりと肉がついていた。
自分は細すぎて、弱弱しくて、いっそ気持ちが悪いほど痩せている。
 
 
食べても食べてもいっこうに背は伸びないし、思うように肉もつかない。
だからトレーニングをしたところですぐにばてるので体力もない。
 
 
今までは、食べていないから背が伸びないのだと思っていた。
だから普通の量を食べられるようになればぐんぐんと背は伸びて、街の大人…は無理でも子供はすぐに見下ろせるのだと思っていた。
だってこんなにも大きくなりたいと思っているのだから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ダンッ、と重たいものが船底を叩き、マルコは俯いていた顔を上げた。
急いで梯子を下り、少し高い位置にある取っ手を体重をかけて押し開ける。
甲板には、マルコには抱えきれないけれどオヤジは楽々担げてしまう程の大きさの袋を、ちょうど下ろしたところのオヤジが立っていた。
 
 
「よう、マルコ。船番ご苦労さんだったなあ」
 
「お、おかえり!オヤジ!」
 
 
ああただいま、とマルコの頭上に手を置き、オヤジは船内へと入っていく。
そのあとに続くと、ぱっと室内に灯りが灯った。
 
 
「真っ暗ん中で灯りもつけねぇで、」
 
 
目が悪くなったらどうすると軽くいなされて、マルコは肩をすくめた。
オヤジはテーブルに置いた麻袋をごそごそと漁って、中から数枚の紙幣を取り出すと残りは金庫にしまった。
 
 
「よし、飯食いに行くぞ」
 
「船は?」
 
「グラララ!こんなボロ、誰もとりゃあしねぇよ」
 
 
 
じゃあなんでオレに船番させてたんだと言いかけたマルコを遮るように、オヤジはもう一度マルコの頭の上に手のひらを置いた。
 
 
大きくて、分厚くて、武器を握るから固くなった手のひら。
温かくて、ついでにさっきまで宝石類を触っていたからか少し金属くさい。
 
 
 
 
 
ほんとうは、どうしたらこんな手になれるのか知っている。
 
 
死ぬほど食べても、丸一日寝てても、吐くほどトレーニングをしてもこんな手にはなれない。
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
既に船から港へと再び降りたオヤジは、早く来いと急かすようにマルコを見上げた。
マルコは慌てて船べりに足をかけ、オヤジの隣に着地する。
そして並んで歩きだした。
 
 
 
 
「オヤジ」
 
「あん?」
 
「オレ欲しいものがあるんだよい」
 
「おう珍しいな、言ってみやがれ」
 
どうにもできねぇかもしれねぇがな、とオヤジは口を曲げた。
 
 

 
「言わねぇよい」
 
 


 
そう言えばオヤジは細い目をひとつ瞬かせてから、そうかと呟いてまた笑った。
 
 
「内緒か」
 
「内緒だよい」
 
 
いっちょまえにと頭を軽く小突かれて、へへっと笑い声が漏れてしまった。
 
 
 
 
 
 
 
オヤジ。

オレも守るものが欲しい。

 

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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