忍者ブログ
OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 
とろとろ、脳みそが溶けているようなかんじ。
朝だ。
窓から差し込む光が閉じた瞼を刺激してそれを告げているけれど、溶けた脳みそをかき集めてまでして何かを考える気にはならない。
細く高い声の鳥が細かくさえずる。
思考停止、ふたたび。
 
 
──アン。
そうっと、身体を掬い上げるみたいな柔らかい声がお腹に響いた。
──アン。
もういちど。
ゆっくり目を開けると、眩しすぎる光が飛び込んできて一瞬なにも見えない。
白い。
白いのはシーツだ。
しかしすぐ、視界に影が差した。
 
垂れた前髪が掻き上げられる。
乾いた指先がこめかみから頭の後ろまで撫でる。
冷たい温度がアンの目を覚まさせた。
 
 
「先、起きるよい」
「…あたしも」
「まだいい、寝てろい」
「…でも、朝ごはん…サッチ…」
 
 
頭の上にある気配が揺れた。
笑っている。
 
 
「今日の朝飯は残念ながらサッチのじゃねぇよい」
 
 
お前が起きたら外に食べに行こう、とマルコはもう一度こめかみから後頭部への軌跡をなぞる。
 
 
…なんで? と聞き返そうとして、ああそういえばと口を閉ざした。
ここは船の上じゃない。モビーじゃない。
とある島の、小さな宿だ。
たまには揺れないベッドで寝るのもいいんじゃねぇかい、とマルコが言ったから。
 
アンの視界に映るのは、ベッドに腰かけているマルコの脚と、くしゃりと盛り上がったシーツの皺と、向かいに備え付けられたデスクと灯り。
 
マルコはどうして、あたしを起こしたんだろう。
 
 
「ちょいと宿主と話してくるから、出てるよい」
 
 
わかった、とかすれた声を出す。
広いベッドで一人目を覚まし、隣にマルコがおらず、しかもそこは知らない場所で、あれ? と一瞬不安になるアンの胸を先回りして救ってくれたのだと気付いた。
 
窓の外においしい実をつける木でもあるのだろうか。
ぴろぴろと鳥が鳴く。
 
外に出ると言ったのに、マルコは一向に腰を上げない。
あいかわらず手は緩くアンを撫で続ける。
アンはぼんやりと目を開けたまま、撫でられた。
 
 
猫になったみたいな気分だ。
アンの知る猫はだいたいが汚れているみすぼらしい猫で、よく喩えられたりもしたけれど、猫は心地いい場所をよく知っている。
自分が落ち着ける場所をよく知っている。
ほこほこと温まった屋根の上で丸くなって眠る猫を夢想した。
 
あたしは猫よりましだ。
マルコがいる。
 
 
アンの視界には、マルコの太腿あたりしか見えないので、いま、マルコがどんな顔をしているのかわからないのが残念だった。
マルコからはきっと、アンの表情はまる見えなのに。
 
 
「…マルコ」
 
 
ぽつりと呼ぶと、ん、と返事ともつかない返事を寄越してきた。
マルコの声は低い低いと思っていたけれど、平均的な男の声の中で低い方なのかと言われるとわからない。
怒るときは、地を這うような低い声を響かせるけど。
 
 
「…ねこは…あったかいとこに、いるから…あたし…」
 
 
うつうつと、瞼が重くなってきた。
マルコは、「寝ぼけてんのかよい」と笑う。
やっぱりお腹に響いた。
 
マルコってうたうのかな。
ふとそんなことを思って、想像して、にやっと笑ったらマルコの手が一瞬びくっとした。
マルコが、マルコの声で、旋律を辿って、メロディーを奏でるなんて。
海賊は歌うけど、マルコは歌うのか?
がなるように、どなるように、宴のとき家族は歌う。
楽しく明るくなる歌が多く、どの歌も海の素晴らしさやら海賊の楽しさやら男の意地やらを謳っている。
マルコは歌うのか?
 
 
すっと、顔に風が当たる気配がした。
ほぼ同時に前髪が全部掻き上げられる。
ほとんど閉じかけていた瞼を持ち上げた。
 
不意に目の前にマルコの喉が現れた。
陰になって暗いけれど、その中でかろうじて見えるマルコの首。突き出た喉仏。
来た時と同じように唐突にそれは遠ざかった。
額に唇が当てられた感触があとからやってくる。
マルコは立ち上がった。
アンに毛布を掛け直して、もう何も言わずに出ていく。
ぱたんと静かな音がした。
 
開けた視界にマルコがいないので目を閉じる。
うたうマルコが頭をいっぱいにして、ひとりにやにやする。
もう眠くないかもしれない。
暗い中見えたマルコの喉仏が上下して音を奏でるところを想像すると、笑わずにはいられなかった。
しかしあの喉仏が少し震えてアンの名を呼ぶのだとはたと気づく。
マルコの声はお腹に響く。
マルコの声を拾うのに、耳が役立っている気はしない。
いつだって直接、アンのお腹に響いた。
お腹が響くと、お腹のもっと上の辺りが少し震える。
マルコがアンを呼ぶたびにいちいち、震える。
それは嬉しいことなのだ。
 
いつかマルコの喉仏にかぶりついてやろうと心に決めて、アンは再び眠りについた。

拍手[18回]

PR
Comment
color
name
subject
mail
url
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
material by Sky Ruins  /  ACROSS+
忍者ブログ [PR]
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
フリーエリア

 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



我が家は同人サイト様かつ検索避け済みサイト様のみリンクフリーとなっております。
一声いただければ喜んで遊びに行きます。

足りん
URL;http;//legend.en-grey.com/
管理人:こまつな
Twitter


災害マニュアル

プロフィール
HN:
こまつな
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
カウンター