OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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あなたがいなくなり、もうすぐ季節が変わろうとしています。
相変わらず騒がしい僕たちは、騒ぐことであなたがいない穴を必死に埋めようとしているのです。
残響
あなたのいないキッチンは、コック長の怒鳴り声と器具がぶつかる音ばかりが響きます。
見習いの僕はその音にさえ、寂しさを感じています。
コック長は、金曜の夜になると一人で食堂に座り、料理用の白ワインを口にします。
それはいつもあなたとこっそりそうしていたように。
その姿を扉の外から思わず見つけてしまった僕は、声をかけることも立ち去ることもできず、ただ身体だけをそこに置いていました。
コック長は自分のグラスの隣にもう一つグラスを置き、それにもワインを注ぎました。
あなたが大好きだったお酒です。
4番隊の僕は、あなたがいなくなってしまった4番隊隊員の一人として、今でも料理の勉強に勤しんでいます。
僕がこの船に乗るきっかけを作ったのはあなたなのに、そのあなたがおらず僕がいるというのは、なんとも可笑しな話です。
穏やかすぎる、海賊のコックなどやっていけるものかと故郷の人に止められ立ち止まっていた僕を、あなたはいとも容易く攫ってくれました。
確かにこの騒々しさは僕には似つかわしくないでしょうが、それでもこの海が、この船が僕の居場所だと、あなたは教えてくれました。
4番隊のみんなと話していると、いつもあなたの話に辿り着きます。
あんなことで怒られた、こんなことで笑わされた、思い出せばキリがなく、まるで張り合うように僕たちはあなたの話をするのです。
そうして話を終え床に入る頃にはあなたの思い出で一杯で、僕たちは誰一人眠れやしません。
こんな日々に慣れてしまう時が来ると思うととても恐ろしい。
午後2時ごろ、僕たちは耳を澄ます様になりました。
数ヶ月前なら、この時間が近づくと一番隊隊長の彼の怒号が聞こえてきたからです。
以前は気にもしなかった、いいえ当然と思い込んでいたその声が、今は懐かしくてたまりません。
だから僕たちは耳を澄ますのです。
もしかして、とありえない期待をかけて、耳を澄ますのです。
あなたがいなくなって、書類の提出期限を破る人がめったにいなくなってしまったからです。
二番隊隊長の彼は、今この船にはいません。
あなたの敵をと、僕たちが進んできた航路を逆走していたようです。
この船の太陽を一度にふたつも失った僕たちは、あまりの寒さに震えるばかりです。
底抜けに明るい笑い声がどこを探したって見つからないことが、こんなにも淋しい。
一番隊隊長の彼は、あなたがいなくなってからこの船で変わっていないものの一つです。
彼が変わらないことが僕たちの主軸となり、指針となり、そうして僕たちはやっとのことで立っているのです。
でもそんなはずはないことを僕は、僕たちは知っています。
誰よりもあなたに近く、誰よりもあなたを知り、人一倍あなたを愛していたはずの彼が涙一つ流さないことに、僕たちは涙を流しました。
彼の強さに甘えて、僕たちは存分に悲しむことができたのです。
あの日から彼が笑うことも怒ることも多々あります。
それでも時々、何かを探すように彼の視線が彷徨う度に僕は言いようのない感情の波に浚われるのです。
僕にはあなたのように、彼を笑わせることも、あまつ怒らせることさえできません。
そして僕たちの父は、あなたがいなくなったその日だけ、いつもより多く酒を飲みました。
多かったのはその日だけで、次の日からはむしろほんの少しだけ、飲む量が少なくなった気がします。
それはあなたが作るつまみがないからか、息子が生きるはずだった時間を少しでも長く味わうためか。
僕にはわかりません。
隊長。
もうすぐ戦争が始まります。
2番隊隊長の彼を救いに行くのです。
この戦争でどれだけの命を失うことになるのでしょう。
自分たちの命を失わないために人のそれを奪うことは、正義なのでしょうか。
大多数の、陸に生きる人間のために海に浮かぶ僕たちが死ぬことが、正義なのでしょうか。
僕にはわかりません。
ただ血統のために彼を殺すことが、正義なのでしょうか。
失うことはとても恐ろしい。
僕たちは失うかもしれないという恐怖に慄きながら、彼のもとへと進んでいます。
そんな今だからこそ、あなたの暖かい笑顔が必要だと、僕は思うのです。
どうか僕たちに、あなたのいない未来を生きる力を。
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「サッチだ。仲良くやれよ」
そう言ってオヤジがオレともう一人の頭の上にポンと手を落とす。
そいつが嬉しそうに笑う一方、オレはこれでもかというほど顔をしかめたのだった。
柱に刻まれた思い出
「オヤジっ、オヤジっ!」
「ああん?」
「なんだよい、さっきの奴!誰だよい!」
「グララッ、さっき言ったじゃねぇか。サッチだ」
「そうじゃなくてっ!なんでこの船に乗ってんだよいっ」
「そりゃああいつもオレの息子だからだ」
息子。
それはオレのことであって、あいつのことじゃない。
「…なん、で」
「グララララ!てめぇたちゃぁ兄弟だ。仲良くやれよ。あいつにいろいろ教えてやれ」
豪快に笑ってそういうオヤジは、何処かいつもよりも機嫌が良さそうで、それがあいつのせいかと思うとまた腸がぐつりと音を立てた。
「あんたがマルコ?おれ、サッチってんだよ!よろしくな!」
にかりと笑うそいつに返事は返さず、オレはじとりと睨み返す。
しかしサッチというそいつはまったく気にした風もなく、船縁に寄りかかって海を眺めるオレの隣に同じ様に寄りかかる。
「おれさぁ、さっきの島の飯屋にいたんだけどさぁ、飯屋のくせにオレに飯食わせてくんなくてさぁ、そったらオヤジが一緒に来いって言ってくれたんだ!あ、オヤジって言うのなんかいいよなぁ。おれ自分のオヤジ知んねェからさぁ、なんか最初は照れ」
「オヤジはオレのオヤジだ」
奴の方に視線を向けることなくそう零すと、サッチは一瞬キョトンとしたがすぐに、おう!おれのオヤジもあの人だ!と屈託なく笑った。
気に入らない。
オヤジはオレのオヤジで、オレだってオヤジが誘ってくれたからここにいるんだ。
なんで。
オレがいるのに、なんでこんな奴連れてくるんだよ。
オヤジ。
「あぶねぇっ!!」
ぐんと全身に重みがのしかかり、二人一緒に後ろへともんどり返る。
オレが今しがた居た場所には、それはもうぶすりと、ナイフが一本刺さっていた。
オレの上にのしかかっていたサッチは素早く立ち上がり、オレと背中を合わせる。
オレたちの周りには、オレたちよりも当然背丈のある大人が数人。
「んだぁ、ここにゃあガキしかいねぇのか」
「うるせぇ、人の船に乗り込んできて何のつもりだよい」
「おれたちゃぁ、エドワード・ニューゲートの船に乗り込んだつもりだったんだがなぁ、」
ひっひっ、と耳触りの悪い笑いをあげる。
ぐっと唾を飲み込んだ。
その音が背中にいるこいつに聞かれたらどうしようとも思った。
オヤジは今換金に島へ下りている。その隙に他の海賊に乗り込まれたのだ。
オレとサッチは食堂で待機中だった。
「おい、お前戦えるのかよい」
「…まともにやったことねぇけど、あ、そこの包丁二本取ってくれ」
こいつ包丁で戦うつもりかよとも思ったが、とりあえず言われた通りサイドテーブルに置いてあった果物ナイフと刃渡りの大きい包丁を手に取りサッチに渡す。
サッチは長さの違うそれを手の内でくるりと回した。
「お前強いの?」
「強いよい」
「そりゃいいや」
にひっと笑い、肩が揺れたのが背中越しに伝わった。
オレたちが2人で会話していたのが気に食わなかったらしい大人は、なにかを叫びながら一斉に斬りかかってきた。
(攻撃をかわせばこいつに当たる)
何故だか本能的にそう思い、近くにあったイスを持ち上げ攻撃を受け止め、その隙に男のすねを蹴り上げる。
うっと屈んだヤローの顔に一発拳をめり込ませると、鼻血を吹いてあっという間に伸びた。
背中からは同様にサッチが戦っている様子が振動で伝わる。
どこか妙な安心感があった。
はじめ感じていた違和感も、やりあっている内にそれはまるでダンスでも踊っているかのように息が合っているのが自分でもわかった。
「このガキっ…!」
放たれた弾丸は手元にあったステンレスの盆で受けとめはたき落とす。
そのままその盆を男に投げつけたとき、オレの後ろから別の男が飛んできてそいつの上に重なり落ちた。
すぐに二本包丁が飛んできて、重なったそいつらに突き刺さる。
そして男たちは動かなくなった。
「おーわりっ」
ぱんぱんっと手を払う音が聞こえ、すぐに食堂は静けさを取り戻した。
ふたりぶんの息遣いだけが伝わる。
「はぁ、オレ初めて戦ったよ!海賊ってすげぇな!てかお前本当に強いのな!」
「…っ、当たり前だろい」
お前もな、と言おうとしてやめた。
「おれさぁ、毎日飯屋のオヤジと戦争してたんだよ。包丁で。初めて役に立った」
へへっと鼻を鳴らすと、サッチは高々と片手を上げた。
「?」
「おつかれだぜ!兄弟!」
にっと笑うそいつの顔は、どこかオヤジの笑顔と重なった。
だからだろうか。
知らず知らずのうちにオレも同様に片手を上げ、互いの手を打ち鳴らしたのだった。
「なぁ、ここなんかやたら傷ついてねぇ?」
エースがリスのように口を膨らませたまま、食堂にある一本の柱をさすった。
「ああ、そりゃ前の船で使ってた柱ぁそのまんま使ってんだよい」
「前の船なんてあったのか!!」
「エースが生まれるより前の話だぜ」
「へぇ、時代を感じるぅ」
「「喧嘩売ってんのかクソガキ」」
エースは口の中のものを精一杯咀嚼して飲み込んだ。
「にしても傷ついてんなぁ。戦闘でやったみたいな傷だ」
ちらりとサッチに目をやると、サッチも然り。
くっと笑いが漏れた。
「…なに笑いあってんだよ。気持ちわりぃおっさんたちだなおい」
「よし、エースくんは言葉遣いから覚え直そうか」
サッチにヘッドロックをかけられて絶叫する末っ子を目の端に映しながら、オレはグラスの酒を大きく仰ぎ、喉に流し込んだ。
その傷は、オレが初めて背中を預けるということを覚えた証。
エースの成敗を終えたサッチは、にっと笑って片手を上げた。
オレは片眉を上げながら、その手に自身の手のひらを叩きつけたのだった。
オレのすべてを賭けた。
賭けていいと思った。
だがあんたは、最期の最期に、オレの手を拒んだ。
そういう人だった。
いつか去る場所
「グララララ!今日はいい日だ!なぁマルコ!!」
「あぁっ!オヤジっ!今日はオレひとりで敵倒したよいっ!」
「グララッ!やるじゃねぇかぁ!おめぇももう立派な海賊だなぁ!!」
分厚い手のひらが乱暴にオレの頭を撫で回す。
はじめこそ慣れなかったが、いつのまにかそれは心地いいものになっていて。
むしろオヤジに褒めてもらいたくて、撫でてもらいたくて、オレはただ強さを目指した。
「しかしマルコはいつまでたってもちいせぇなァ!」
「・・・そりゃあオヤジに比べたらちぃせぇよい」
「グララララ!違いねェ!オレァ思ったよりでかくなりそうだ!!」
豪快に笑い、杯から酒を水のように流し込む。
「・・・でもオレサッチよりはでけぇよい」
「グラララ!かわんねぇよ!!」
「変わる!!こんくらいオレのほうがでかかった!!」
指でその差を示すと、親父はこれでもかと言うくらい目を細める。そんな隙間から物が見えるのかどうか。
「でっかくなれよ」
とんと大きな指先がオレの頭を小突く。
オレはくしゃりと顔をゆがめて、オヤジの膝へと這い登った。
「なぁオヤジ」
「あぁ?」
「この旅が終わったらどこ行くんだい?」
「・・・そうだなァ、好きなところに行けばいい」
「オヤジはどこ行きてぇんだい?グランドラインはこれから行くから、他の海に行きてぇよなぁ。
オヤジは東の海とか行ったことあるんだろい?グランドライン一周したら連れてってくれよい」
見上げるようにしてそう言ったが、オヤジからの返事はない。
ただ、酒がのどに通る音ばかりが聞こえる。
「オヤジ?」
「・・・てめぇが、そのときの仲間と決めりゃあいい」
「そのときって、」
「グララララ!オレがいるたァ限らねぇしなァ!」
ちゃぷん、と杯から酒が零れ出る。
俺の左側に落ちた滴が跳ね上がってオレの頬を濡らした。
「・・・なんだよい、それ」
「マルコ?」
「意味わかんねぇよい!なんでオヤジがいねぇんだよい!一緒に行くに決まってんだろい!!」
はぁっ、と肩で息をする。
オヤジは静かにオレを見下ろした。
「マルコ、オレァいつかいなくなる。あたりめぇだろ、オレァ人間だ。
もしかしたらオメェが出て行くときも来るかもしれねぇ。理由がどうであれ・・・」
「そんなこと!!」
っく、とつばを呑み込む。
こんなことで泣きたくないのに、かっこわりぃのに、涙は止まってくれなかった。
「そんなこと、言うなよい!オレはずっとオヤジといるよい・・・!」
服の袖でぐしぐしと目元を拭う。ひりひりと痛かったけど、それよりも、怖かった。
考えられない。
考えたくない。
「だから・・・そんなこと言わないでくれよい・・・」
ふわりと臓器が浮かび上がる独特の感覚。
オレを包む温度に、今親父の腕の中にいるのだとわかった。
「・・・なぁマルコ・・・オレたちぁ海賊だ。
何時死んでもおかしいことはねぇ。
明日かもしれねぇ、その次かもしれねぇ。もしかすると数十年たってもまだピンピンしてるかもしれねぇ。
・・・そういう命の賭けに出る代わりに、オレたちぁ自由を、得るんだ」
「・・・じゆう」
「笑って歌ってメシ食って好きなことをして、仲間と愛する海の上で暮らせるんだ。
・・・グララララ、こんな楽しいこたぁねぇ・・・」
「・・・」
「だからなァ、マルコ。てめぇも自由が欲しけりゃ、覚悟決めろ。
いつ死んでもいいように、生きろ」
「グララララ!心配しねぇでもオレの次はテメェの番だ!!死んだってじきに会える!!」
「ああ・・・!」
すり、とその腕に頬を寄せると、それは嬉しそうに小さく震えた。
風にはためくのは、長いあいだ彼の人の背中を守り続けたコート。
その隣には眩しいほど白く光るオレンジのテンガロンハット。
「・・・マルコ、行こう」
ジョズが控えめにオレを呼ぶ。
オレは手を上げてそれに答えた。
「・・・すぐには、いけそうにねぇなぁ」
次に会うときまで、どれだけの日々を過ごさねばならないのだろう。
きっと、またひとり、またひとりとオヤジとの再会を果たす仲間は増えていく。
「・・・オレァ、しばらく会えなさそうだよい」
ゆっくりでいい、と凪いだ風がコートを揺らした。
大切なものはオレが守ればいいと思っていた。
身を削るつもりなんてさらさらないが、こいつらのためならそれもいいかと思うのだ。
幸福運び人
「マルコ隊長!この書類エース隊長がさっきそこに捨てるように置いてったんすけど…いりませんか?捨てていいっすか?」
「…いるよい。捨てんな」
「あっ、じゃあエース隊長に」
「いい、いい。オレが代わりにもらっとくよい」
そういいクルーの一人からぴっと書類を受け取った。
きっとまたエースのところに戻ったところでこの書類の運命は紙飛行機かなんかだろう。
ありがとうございますっと元気に礼を述べたクルーはきびきびと執務に戻った。
俺はくるりと反転し、書類に目を通す。
(…なにからやろうかねい…)
ジョズから書類にサインを貰い、換金のリストを作り、オヤジの定期健診の結果を聞きに医務室へ…
それからエースの説教とサッチのアホの書類をまとめて…
ああ、そういやイゾウが次の島の件で話あるっつってたねい…
んで次は…
「…コ、マルコ!」
「おわっ!」
考えに熱中しすぎて声が耳に届いていなかったらしい。
ビスタが背を丸めてオレを覗きこんでいた。
「マルコ、お前おかしいところないか?」
おかしいところ?はて、そんなものあっただろうか。
強いていうならば、思考中の頭が多少クラクラするくらいだろうか。
クラクラ?
あ、やべぇ。
そう思ったときにはすでに俺の脚は身体を支えることをやめていて。
情けなくもビスタの胸に倒れかかる瞬間オレは意識を手離したのだった。
夢を見た。
真っ暗闇の中俺は1人立っていて。
足を動かしても進んでいるのかなんてわからない。
ふと、横に人の気配。
…ああ、お前かい。
んっ?と片眉を上げオレに視線を送るサッチは行こうぜとオレを促した。
どこへ行くんだい?
決まってんだろ。
そんなやりとりがあって、またふいに横に人の気配を感じる。
日の光の匂いがした。
エースはオレを見上げにししと声を上げて笑う。
早く行こうぜとオレを誘った。
またひとり、またひとりと。
確実に増えて行くオレを囲む仲間たち。
見知った顔が一様に何処かを目指して歩いて行く。
暗闇の中ぼんやりと浮かび上がる大きな背中。
ああ、来るべき場所はここだったと、納得したオレはさらに早く歩を進めた。
しかし見える背中はすぐそこなのに、なかなかたどり着かない。
もう既に到着した奴らもいるのに、オレだけがついていけない。
やたらと息が切れる。
サッチもエースも、と目指す場所に行ってしまうのに。
何故オレだけがこんなにも疲れている?
サッチのように飄々と行けない。
エースのように軽やかには走れない。
おれ一人、必死で何を背負ってるってんだ。
向こうでみんなが早く来いよとオレを呼ぶ。
無理だ。背負うものが重過ぎて、お前たちと一緒には行けないんだ。
突如、グララララっと慣れ親しんだ笑い声が身体を包んだ。
ぱち、と瞼が開いた。
頬に暖かな何かが添えられている。
1番に目に入ったのは、見慣れた天井だった。
「起きたか」
「...オヤジ」
俺の頬を滑っていたのはオヤジの大きな指先で。
オヤジは実を屈めるようにして俺が横たわるベッドの横に腰を下ろしていた。
「風邪と、疲労だ」
無理させちまったようだなァと、オヤジは眉をすがめた。
ああ、あの朦朧とした頭は熱のせいだったのかと思いあたる。
ふと、オレの左側に熱を感じた。というか気づいた。
「...こいつ…」
「グララララ、エースの奴、自分が仕事サボったせいでマルコがぶっ倒れたと思いやがった。責任持って添い寝するんだとよ」
すやすやとムカつく程心地良さげな寝息を立てるエースを横目に捉えてから、ふと右側にも違和感を感じる。
床に座り込み、リーゼントをベッドに突っ伏したままこれまた寝息を立てる男。
「オレが来たときにゃァサッチの奴寝てやがった。オレがマルコの看病するんだ!っつって張り切ってたんだがなァ」
眉根を寄せて、それでも愛し気にオヤジはサッチの肩に乗せられた毛布を掛け直した。
しばらくそんなオヤジの顔を眺めていたのだが、ふと重大なことを思い出した。
「オヤジッ!オレまだ仕事がッ…」
がばりと身体を起こすとだるさが全身を駆け巡り、また目眩のような靄が視界を覆う。
そんなオレをオヤジは小突くようにして寝かせた。
「グララララ、窓見てみろ」
言われたとおりそちらに視線を送ると、そこはもう黒一色で。
オレからしたら一瞬のうちに、夜になっていた。
「・・・仕事は・・・」
「心配しねェでも、ハルタやらイゾウやらが張り切ってたぜェ。やっとお前の分の仕事ができるっつってなァ」
不覚だ。
自分のやるべきことを人にやらせて自分は一日ぐうすかしていたとは。
なぁマルコ、とオヤジが視線を下ろした。
「・・・おめェは・・・なんでも一人で背負いすぎるきらいがあるなァ・・・他の野郎どもが寂しそうだぜ」
「・・・オレは別に・・・」
「もうちょっと周りを見てみろ。他の奴の仕事ぶりを見るんじゃあねェ。お前が頼ってくれるのを待ってる奴ァ腐るほどいるんだ」
よっとオヤジが腰を上げた。
「熱が下がるまで休暇だ。仕事すんじゃねェぞ」
そういい小さな笑い声を上げてから、オヤジは部屋を出て行ってしまった。
隣で寝息を立てるエースの手には、先ほど(厳密には朝の話だが)俺が持っていたはずの書類が握られていた。
ベッドに突っ伏すサッチの横にあるローボードには、蓋をされた膳が置いてある。
仕事机へと目をやると、朝にはなかったはずの書類が綺麗に整理されて積んであった。
(・・・なんて贅沢もんだい・・・)
苦痛だなんて思ったことはなかった。
だが少し重石を外してみると、肩はありえないほど楽だった。
きっと体が回復したら、オレは今までと同じように同じだけ働くのだろう。
それがオレで、これからも変わることはない。
だがたまには融通の利かないことも言ってみようと思う。
理性と論理でガチガチのオレをほどいてくれる奴が、オヤジの言うとおりこの船には腐るほどいるのだから。
久しぶりに、夢も見ないで眠った。
身を削るつもりなんてさらさらないが、こいつらのためならそれもいいかと思うのだ。
幸福運び人
「マルコ隊長!この書類エース隊長がさっきそこに捨てるように置いてったんすけど…いりませんか?捨てていいっすか?」
「…いるよい。捨てんな」
「あっ、じゃあエース隊長に」
「いい、いい。オレが代わりにもらっとくよい」
そういいクルーの一人からぴっと書類を受け取った。
きっとまたエースのところに戻ったところでこの書類の運命は紙飛行機かなんかだろう。
ありがとうございますっと元気に礼を述べたクルーはきびきびと執務に戻った。
俺はくるりと反転し、書類に目を通す。
(…なにからやろうかねい…)
ジョズから書類にサインを貰い、換金のリストを作り、オヤジの定期健診の結果を聞きに医務室へ…
それからエースの説教とサッチのアホの書類をまとめて…
ああ、そういやイゾウが次の島の件で話あるっつってたねい…
んで次は…
「…コ、マルコ!」
「おわっ!」
考えに熱中しすぎて声が耳に届いていなかったらしい。
ビスタが背を丸めてオレを覗きこんでいた。
「マルコ、お前おかしいところないか?」
おかしいところ?はて、そんなものあっただろうか。
強いていうならば、思考中の頭が多少クラクラするくらいだろうか。
クラクラ?
あ、やべぇ。
そう思ったときにはすでに俺の脚は身体を支えることをやめていて。
情けなくもビスタの胸に倒れかかる瞬間オレは意識を手離したのだった。
夢を見た。
真っ暗闇の中俺は1人立っていて。
足を動かしても進んでいるのかなんてわからない。
ふと、横に人の気配。
…ああ、お前かい。
んっ?と片眉を上げオレに視線を送るサッチは行こうぜとオレを促した。
どこへ行くんだい?
決まってんだろ。
そんなやりとりがあって、またふいに横に人の気配を感じる。
日の光の匂いがした。
エースはオレを見上げにししと声を上げて笑う。
早く行こうぜとオレを誘った。
またひとり、またひとりと。
確実に増えて行くオレを囲む仲間たち。
見知った顔が一様に何処かを目指して歩いて行く。
暗闇の中ぼんやりと浮かび上がる大きな背中。
ああ、来るべき場所はここだったと、納得したオレはさらに早く歩を進めた。
しかし見える背中はすぐそこなのに、なかなかたどり着かない。
もう既に到着した奴らもいるのに、オレだけがついていけない。
やたらと息が切れる。
サッチもエースも、と目指す場所に行ってしまうのに。
何故オレだけがこんなにも疲れている?
サッチのように飄々と行けない。
エースのように軽やかには走れない。
おれ一人、必死で何を背負ってるってんだ。
向こうでみんなが早く来いよとオレを呼ぶ。
無理だ。背負うものが重過ぎて、お前たちと一緒には行けないんだ。
突如、グララララっと慣れ親しんだ笑い声が身体を包んだ。
ぱち、と瞼が開いた。
頬に暖かな何かが添えられている。
1番に目に入ったのは、見慣れた天井だった。
「起きたか」
「...オヤジ」
俺の頬を滑っていたのはオヤジの大きな指先で。
オヤジは実を屈めるようにして俺が横たわるベッドの横に腰を下ろしていた。
「風邪と、疲労だ」
無理させちまったようだなァと、オヤジは眉をすがめた。
ああ、あの朦朧とした頭は熱のせいだったのかと思いあたる。
ふと、オレの左側に熱を感じた。というか気づいた。
「...こいつ…」
「グララララ、エースの奴、自分が仕事サボったせいでマルコがぶっ倒れたと思いやがった。責任持って添い寝するんだとよ」
すやすやとムカつく程心地良さげな寝息を立てるエースを横目に捉えてから、ふと右側にも違和感を感じる。
床に座り込み、リーゼントをベッドに突っ伏したままこれまた寝息を立てる男。
「オレが来たときにゃァサッチの奴寝てやがった。オレがマルコの看病するんだ!っつって張り切ってたんだがなァ」
眉根を寄せて、それでも愛し気にオヤジはサッチの肩に乗せられた毛布を掛け直した。
しばらくそんなオヤジの顔を眺めていたのだが、ふと重大なことを思い出した。
「オヤジッ!オレまだ仕事がッ…」
がばりと身体を起こすとだるさが全身を駆け巡り、また目眩のような靄が視界を覆う。
そんなオレをオヤジは小突くようにして寝かせた。
「グララララ、窓見てみろ」
言われたとおりそちらに視線を送ると、そこはもう黒一色で。
オレからしたら一瞬のうちに、夜になっていた。
「・・・仕事は・・・」
「心配しねェでも、ハルタやらイゾウやらが張り切ってたぜェ。やっとお前の分の仕事ができるっつってなァ」
不覚だ。
自分のやるべきことを人にやらせて自分は一日ぐうすかしていたとは。
なぁマルコ、とオヤジが視線を下ろした。
「・・・おめェは・・・なんでも一人で背負いすぎるきらいがあるなァ・・・他の野郎どもが寂しそうだぜ」
「・・・オレは別に・・・」
「もうちょっと周りを見てみろ。他の奴の仕事ぶりを見るんじゃあねェ。お前が頼ってくれるのを待ってる奴ァ腐るほどいるんだ」
よっとオヤジが腰を上げた。
「熱が下がるまで休暇だ。仕事すんじゃねェぞ」
そういい小さな笑い声を上げてから、オヤジは部屋を出て行ってしまった。
隣で寝息を立てるエースの手には、先ほど(厳密には朝の話だが)俺が持っていたはずの書類が握られていた。
ベッドに突っ伏すサッチの横にあるローボードには、蓋をされた膳が置いてある。
仕事机へと目をやると、朝にはなかったはずの書類が綺麗に整理されて積んであった。
(・・・なんて贅沢もんだい・・・)
苦痛だなんて思ったことはなかった。
だが少し重石を外してみると、肩はありえないほど楽だった。
きっと体が回復したら、オレは今までと同じように同じだけ働くのだろう。
それがオレで、これからも変わることはない。
だがたまには融通の利かないことも言ってみようと思う。
理性と論理でガチガチのオレをほどいてくれる奴が、オヤジの言うとおりこの船には腐るほどいるのだから。
久しぶりに、夢も見ないで眠った。
マルコ、元気か?
オレは元気だ。
お前が元気なのはわかっているが、手紙ってのはこうやって始まるもんだろ?
拝啓不死鳥様
オレは今アラバスタという砂漠の国を出たところだ。
ティーチの情報は何もなかった。
まあ今までの流れでそう簡単に掴めそうじゃないことはわかっていたけど、ちょっとショックだ。
それよりオレが今一番言いたいことは、なんとその国でオレは弟に会ったんだ。
話したことあっただろ?麦わらのルフィだ。
背も伸びてたくましくなっててな、まあおれよりはちいせえんだが、かっこよく育ってたよ。
ルフィにはしっかりした仲間がちゃんといてな、オレは嬉しかった。
別れ難かったんだが、まあルフィがいつか新世界に来る時がきたらまた会えるだろう。
そっちの様子もすげえ気になる。
オヤジの身体は大丈夫か?
ステファンはちゃんとメシ食ってるか?
他の隊長たちも元気か?
オレの2番隊はオレがいなくてもちゃんと働いてるか?
きっとお前がいれば、すべて大丈夫なんだろう。
心配なことが多すぎるが、そっちから連絡してもらう術が何もないのが残念だ。
いつかどこかで電伝虫捕まえたら連絡を入れようと思う。
マルコ、お前はちゃんとメシ食ってるか?
オレの分のメシはとっておかなくていいから、ちゃんと食えよ。
サッチのメシじゃなきゃいやだよいとか我が儘言うんじゃねえぞ。
砂漠ってさ、すっげえ星がきれいなんだ。
高い建物もなくて、まっ黄色の砂と真っ青の空しかなくて、夜は真っ暗で。
んで夜すっげえ寒いんだ。
オレでも寒いんだからマルコだったら息できねえよ多分。
でも仕方ねぇから砂漠の岩場で寝てたんだけどさ、上見るとすげぇの。星が。
いっぱい光っててさ。
船の上から見る星もすごかったけどさ、船は明るかったから。暗いところで見る星は半端じゃなかった。
お前にも見せてやりてぇ。
オレは「人は死んだら星になる」とかは信じてないけど、そのつもりだったけど、一瞬考えちまった。
このいーーーーーーーっぱいあるやつのどれかひとつが、サッチじゃねぇのかなって。
おかしいよな。
サッチは海に還ったのにな。
もしサッチが星なんかになってたら、オレすげぇ困る。
ろくなことできねぇよ。マルコにチクられそうで。
他にもいっぱい書きたいことはあるが、もう拾ったペンのインクが終わりそうだ。だからおしまいだ。
オヤジやみんなにお前の口からオレが元気なことを言っておいてくれ。
ところでオレがこの手紙を託すクーは少し顔がオレに似ているから、もしかするとちょっと馬鹿かもしれない。
だから着くのが遅いかもしれない。しょうがないよな。
じゃあおわる。本当におわる。
じゃあな。
これだけ。
はやくあんたにあいたいよ。
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麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
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