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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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         7.5(サナゾ注意)   10

11

勝手に取ることにした長期休暇の前、最後の勤務日。
カルネは始終恨めしそうにおれを睨んでいたが、週休1日で働き続けたおれに労基に飛び込まれてはたまらないのだろう。休んでくれるなとは言われなかった。
これで客が離れたら、自分のせい。収入が減るのも、全て自分のせいだ。
誰に文句をいうこともできないが、誰かや何かのせいと思い悩むこともない。歩合制の良いところだ。
最後の仕事は、まあぼちぼちだった。
土曜日ということもあり、客入りは上々で、しばらく休むことを伝えていた常連が何組か来店したおかげで開店から最後までひっぱりだこだった。
あっちこっちでいい顔をしすぎて緩みきった頬を揉みながら、明かりが落ちた店内のソファに無様に転がった。
やりきった、という思いが満ちてきて妙に心地よい。

「おい、おい」

脇腹を突かれて目を開けると、カルネが青い髭の汚い面でおれの顔を覗き込んでいる。

「お前、このままやめたりしねーよな」
「あー、どうだろ。それもいいな」
「馬鹿野郎、冗談じゃねえ。おめーのじいさんになんて言やあいいんだ」
「なんでクソジジイのツラ立てなきゃいけねーんだ。店にちっとも顔出しやしねぇくせに」

よいしょ、とカルネを避けて上体を起こす。
この酒臭い身体とも、しばらくおさらばだ。
カルネは取り残された子供のようにおれを見上げ、「頼むからよ」と女々しい声を出した。
わかってる、と奴の肩に手を置い立ち上がる。

「大丈夫だ。辞めたりしねーから」

他に食う道もないしな、と言うと、ようやくカルネは少しほっとした顔を見せた。


相変わらず軋む玄関扉を押し開ける。アパートの中は静まり返っている。
各々が部屋にいるのだろうが、寝静まっているのか音一つしない。
リビングも、明かりが落とされていた。
あの日から、ナミさんは夜遅くまでリビングで仕事をしなくなった。
おれが帰ってくる頃にはリビングは真っ暗で、ナミさんの部屋から漏れる薄明かりだけがぼんやりと廊下を照らしていた。
今日も明かりが漏れているが、彼女のタイピングの音が聞こえてきたりはしない。
誰もいないリビングに入り、ひたひたと足音を忍ばせてキッチンで水を飲む。
ぬるい常温がまずく感じられ、冷蔵庫を開けて炭酸水を取り出した。
ボトルに直接口をつけて飲みながら、誰もいないソファを眺める。
もう、彼女はここでおれを待ったりはしないだろう。
日中も、必要最低限の会話しかしていない。誰かに訝しがられるほど人も集まらないし、集まればナミさんはするりとその場から身をかわすように姿を消した。
おれとの会話を避けていることは明らかだった。
そらそうだよな、と思う。半分以上飲んだボトルを冷蔵庫に戻し、暗闇に沈んだソファに脱いだジャケットを投げ出す。
あんなことを言って、大嫌いとまで言われて、おれに会いたいはずがない。
出ていって欲しいだろうな、とまで考えて、波のように後悔が押し寄せた。
あのとき彼女に押された肩が、今になって痛む。
──でも本心だ。
いや、本心だからと口にしていいはずがない。
ましてやおれは、彼女を傷つけるための言葉を正確に選んで、発してした。
嫌われて当然だ。
わかっていて、どうして言いたくなってしまったのだろう。

暗い廊下に出て、風呂場と彼女の部屋が向かい合う空間に近づく。風呂場は水の匂いがした。
彼女の部屋の扉に手のひらをあて、口の中で「ナミさん」と呼ぶ。
部屋の中から物音や彼女の気配を感じられるわけではなかったが、たしかにいる、と思った。

「ナミさん」

今度はしっかりと唇を動かした。部屋の中は深海のように静かだ。

「ナミさん、おれ、ここを出てくよ」

^きっとそれがいい。そうするしかないのだろうと、今日仕事前に着替えながら考えていた。
ぴりぴりと互いに見ないふりをして、でも逆にそれが意識していることの表れで、こんな緊張はきっと心が持たない。事務的な会話だけで済ますのもこのオープンなアパートでは限界がある。
なにより、そんな関係を彼女と続けるのも、彼女に続けさせるのも御免だった。

「二週間休みがあるから、ちょっと時間をくれねぇかな。その間に次の……家を探すから」

足元から漏れる明かりが揺らめいた気がした。でも、扉が開くことも、中から声が聞こえることもなかった。

「じゃあ……おやすみ」

好きだよ、と言い訳のように呟いてしまいそうだった。
どうしてだろう。昨夜の嗜虐的な気分とは裏腹に、彼女が恋しかった。




昼の街をぶらついていると、それだけで自分が健康であるような気になる。
朝型の生活には二日で慣れた。朝型というか、ただ日が変わる頃に寝て、眩しくなったら起きているだけだ。
午前中リビングに現れるおれを見て、ウソップやロビンちゃんは目を丸めていたが、休みなのだと言えば口を揃えてそれはいいと言った。
ロビンちゃんには「またブルックのところに行きましょう」と、ウソップには「うめーカレー屋がある」と昼飯に誘われた。さっそく今日の昼前にロビンちゃんとブルックの店に行き、彼女が普段は持ち運べない量のコーヒー豆をたんまり買ってきた。

待ち合わせをした駅前のモニュメントのふもとで、ウソップが帽子を深く被って手元の携帯に視線を落としていた。
近づいて「よお」と声をかける。おーっす、とウソップは携帯をポケットに仕舞った。

「こっちこっち」

ウソップが先導するように歩き出す。おれをちらりと見て、「なんか似合わねーの、お前」と笑われる。

「なにがだよ」
「いっつも真っ黒の服着てさ、昼過ぎに起きてきて。夕方になると出てったろ。どっぷり夜の人間って感じだったのに」
「おれも違和感しかねーよ」
「慣れる慣れる。って、二週間経ったらまた仕事に戻るんだから慣れたらだめか」

まーね、とつまさきを眺めながら適当な相槌を打った。

「ウソップおまえ、どこ行ってたの」
「ああ、パーツ屋。おれ土日しか動けないからさ。あさイチで行かねーと午後は混むんだよ」
「パーツ?」
「パソコンとか、電子機器の」
「なに、おまえそんなのいじってんの」

たしかナミさんが、ウソップは機械やネット設備にうといのだと言ってなかったか。
ウソップはなぜか照れたように笑って言った。

「それがさー、今役所もオンラインだクラウドだっつって新しい設備どんどん入ってくの。そういうのに明るいやつ、うちの部署にいなくてさ。おれが一番若いからっつーので発破かけられて勉強し始めたら面白くなっちまって。今、プログラミングもちょっとかじってんだ」
「へえ……すげーな」

阿呆のような感想がこぼれたが、素直に感嘆してしまった。
やってることがすごいというより、苦手なことに手を付けてモノにした上、興味を持って楽しんでいることが単純にいいなと思った。仕事に活かせていることも。

ここだ、と言ってウソップが扉を開けた小さなカレー屋は、開店したばかりなのか先客は2,3組しかいなかった。そもそもテーブルとカウンター合わせて6組ほどしか入らなさそうな狭い店だ。
しかし、おれたちがカウンターに腰を下ろすとあっという間に次々と客がやってきて席は埋まり、その10分後には外に列ができていた。

「すげー人気なんだな」
「な。開店前に並んでることもあるから、今日はめちゃラッキー」

お、来た、とウソップが顔を上げた。忙しそうな店員がはいはいっ、とおれたちの前にカレーを置いていった。
さらさらしたルーがたっぷりとかかった平たい銀の皿に、色鮮やかな野菜が10種類ほど並んでいる。なぜかこんにゃくも乗っていた。

「これこれ、あー久しぶり。いただきます」

ウソップがすぐさまスプーンで食らいついた。うまそうに頬張る顔を見るだけで口内に唾が溜まる。
野菜をよけてまずはルーだけを口に運ぶと、スパイスの香りと一緒に野菜の甘さが突き抜けるように広がった。そのすぐあと、薬膳のような舌慣れない味が鼻から抜ける。

「なんだこれ、うま」
「だろ、だろ!いやーよかった、気に入ってもらえて」

揚げ野菜はジューシーで、さっくりとした香ばしさがありながらカレールーを吸って旨味が増している。
なんで、と思ったこんにゃくも歯ごたえのアクセントになっていた。
カレー皿に覆いかぶさるような勢いでスプーンを動かすウソップを、ちらりと見る。

「お前、うめー店知ってんのな」
「男一人だとさ、やっぱ外食増えるじゃん。安くて手軽な店で済ませがちだけど、たまの休みにこういうとこ探すのが楽しいんだよな」

それからはお互い喋ることなく、無心でカレーと格闘した。あっち、と呟いて汗を拭き拭き食べた。
店を出る頃、待ちの列は店をぐるりと囲むように伸びていた。
男も女も子供も老人も並んでいる。鍋を持って並んでいる男女がいたのでそれを口にすると、「鍋持ってくると、ルーだけテイクアウトできるんだよ」とウソップがしたり顔で言った。

「あー腹いっぱい」
「量も多いからな。サンジ、細いのによく食うのな」
「レディにはきつい量かもな」
「だろ。だからロビンやナミは誘いにくくて。ゾロは時間合わねーしルフィはなかなか家にいねーし」

どちらともなくアパートまでの道を辿り始めた。
以前おれが作ったカレーを、ナミさんがはふはふと頬を膨らまして食べていた様子を思い出した。

「……ナミさんカレー好きじゃん」
「そうだっけ。でもまー、あいつ、家から出ねーし」

なんでもないことのようにウソップは言う。どうしてこのアパートの住人たちは、彼女が外に出ないことを当たり前のように受け止めているのだろう。

「なんか事情知ってんの、お前」
「ナミの? いや、知らねぇ。でも」

ウソップが言葉を切ったので奴の顔を覗き込むと、何度か首をひねりながら「ん? 関係ねぇのか? あれ」などと一人でぶつぶつ言っている。

「なんだよ」
「いや、しっかりとはおれも知らねぇから。でもなんかルフィのじーさんが関係してるとかなんとか」
「ルフィ?」

しかもそのじーさんとは。

「じーさんって、アパートの所有者なんだっけか」
「そうそう。ルフィのじーさんが持ってたボロアパートを改装して、ナミを管理人として住人の募集を始めたらしいのよ。その最初の頃に、なんか事情があったんじゃね」

ナミさんとルフィのじーさん。二人の結びつきにちっとも想像がつかない。

「どういう関係なんだよ」
「全然知らねぇ。本人に聞いたら?」
「……前に、はぐらかされたからな」

あー、とウソップは苦笑しながら足元の石を軽く蹴った。ナミってそういうとこあるよな、と言いたげだった。
少し考えるような間を空けて、ウソップが口を開いた。

「うちのシェアハウスってさ、結構居心地いいじゃん。っておれは思ってるんだけど」
「あぁ」
「ルフィやゾロみたいな変わりモンもいるけど、いいやつだし、適度に生活リズムもバラバラで、なんだかんだみんな大人だから仲良くやれてるっつーか」

相槌を打ちながら、ウソップが何を言いたいのか少しずつ見えてきた。

「その居心地の良さって、まぁナミがうまく管理してくれてるからってのが大前提なのよな。それもあって、あんまり個人の事情に口突っ込むのも野暮だなって気がしてて。だから、誰もなんにも言わねーんじゃねぇかな」

もっともだ、とおれは黙ってうなずいた。
相手を知りすぎることは、知ろうとむやみに深入りすることは、人間関係のバランスを崩す。
おれが犯したのは、そういうことだ。

「なぁ、お前これからちょっと時間ある」
「え、あるけど。もう帰るだけだし」
「ちょっと付き合ってくれねぇ。二時間くらい」
「いいけど、なにに」
「物件探し。おれ、アパート出るわ」

え、と口を開いたまま固まったウソップに、おれは下手だと自分でもわかる顔で笑った。
足を止めたウソップの肩を抱き、駅前の繁華街へと方向転換させる。

「役所の人間ならこの辺詳しいだろ。なるべくにぎやかな場所がいいな」

待てよ、おい、なんで、と泡を食って言い募るウソップを無視して、肩を抱いたまま歩いて行く。
そうだ、今の家とはまったく異なる場所に行こう。仕事場にもっと近いところにしたっていい。
さいわい荷物はたいして持っていないのだ。家さえ決まればすぐに出ていこう。

「新しい家が決まったら、近くのうまい店教えてくれよ」

そう言うと、ウソップは分厚い唇を歪ませて、なぜか泣きだしそうな顔をした。




おれが引っ越すらしいという話は、あっという間にアパートの住人たちに広まった。噂ではなく事実なのだから、別にいいが。
ナミさんにもその話は届いただろうが、おれに何も言ってこなかった。やっぱりあの夜、扉の前で話した声は聞こえていたらしい。
今月中に部屋は引き払うことになるが、満額の賃料を彼女のレターボックス(玄関前に各住人のものが設置されている)に入れておいた。
そうしておけば、彼女に食い下がる理由は一切ないだろう。
もしかしたら彼女のほうが金を払ってでも、おれに出ていってもらいたいくらいかもしれないが。

新しい部屋はまだ見つかっていない。
ウソップに部屋探しを協力してもらっているが、奴が存外口うるさいのだ。
おれは最低限の条件(家賃と、風呂付きであること)さえ整えばどこでもいいのだが、ウソップは「ここは治安が悪い」だとか「幼稚園が隣りにある。お前が周りをうろうろしてたら怪しい」だとか「なんかくせぇ」だとかそのたびにちくちく言って、おれの出鼻をくじいた。

「お前もういいわ、一人で探す」
「ばか言え、この街はおれの庭なんだ。いいところ見つけてやっから」

そう言ってはおれの不動産屋廻りに休みのたびに付いてきた。
ウソップが仕事の日に一人で回ることもあったが、もともと職業柄、居住に難色を示されることも多く、ほとんどの物件が大家の返事待ちで即決することはできなかった。
今日も二件内見に行ったが、目ぼしい部屋の大家がおれのプロフィールを見た途端敷金と礼金を吊り上げたので(不動産屋が電話口で話しているのが、漏れ聞こえたのだ)、腹が立って帰ってきてしまった。

アパートの中に入ると、なにやらリビングが騒がしい。男にしては高いルフィの声がにぎやかに響いている。
扉を開けてリビングを覗くと、案の定ルフィがばかでかい箱を抱えてナミさんと話しているところだった。
おれを目に留めて、黒目がちな丸い瞳が光った。

「おお、サンジ! お前久しぶりだなあ!」
「いやそりゃこっちのセリフだ。ひと月以上帰ってこなかったじゃねぇか」

ナミさんがふいと顔を背けてソファに向かったのを視界の端に感じながら、なんだその箱、とルフィの手元を覗き込む。中はがらくたにしか見えないプラスチックのパーツががらがらと放り込まれていた。ルフィの仕事道具だろう。

「なーサンジ腹減った。なんか作ってくれよ」

なあなあなあ、とまとわりつかれ、「わかったわかった」とルフィを押しのけてキッチンへ向かう。
ナミも食うだろ、とルフィが当然のように言った。

「うん」

平坦なその声に、思わず振り返った。ナミさんはおれの方を見向きもせずめがねを掛けて、よいしょとソファに腰を下ろしたところだった。
彼女がおれの存在を認め、「うん」と一言返事をしただけのことに、打ち震えるくらい感動した。
きっと、ここで料理をするのはもう数えるほどしかないからだろう。
一つひとつの工程を味わうように、おれは手を動かした。

ルフィが買ってきたというさまざまな肉(羊だったり牛だったり、ワニだったり)に下味をつけて焼いただけのグリルと、ありあわせの野菜のサラダをテーブルに並べる。
誰でもできるような料理になったしまったのが悔やまれるが、ルフィは歓声を上げて肉に食らいついた。
おれの斜向かいに座ったナミさんも、小さく「いただきまーす」と呟いて静かに食べ始める。
うめ、うめ、と言いながら口の中を一杯にして食べ続けるルフィがいるおかげで、どうにか間が持っていた。ナミさんはおいしいとも言わずにフォークを動かし続けている。
ふいにルフィが顔を上げておれを見た。

「サンジ、仕事は?」
「あー、休みなんだ、しばらく」
「ふーん、辞めたのかと思った」
「辞めねぇよ」
「こんなにうめーメシ作るんだから、サンジはさ、ここでコックすればいいのに。なぁナミ」

なぜ彼女に聞く。
背中に妙な汗をかいた。
白羽の矢が立った彼女は、つと顔を上げてルフィを見て、肩をすくめて視線を落とした。

「無理よ、そんなの」
「なんでだよぉ」
「誰がお給料払うのよ。住んでるみんなだって、毎食ここで食べるわけじゃないでしょ」

真正面から突っぱねられて、ルフィはふてくされた顔でおれを見る。なんとも言えずに、おれも彼女の真似をして肩をすくめた。

「それに」

ナミさんが言う。

「サンジくん、もうここ出てくから」

そうよね、と言うかのように、ナミさんが今日はじめておれと目を合わせた。
えぇー! と大げさに叫ぶルフィがおれに詰め寄る。なんでだよ、とぱんぱんの頬のまま迫られて、それを押しのけている間にナミさんが立ち上がった。

「ごちそうさま」

皿をシンクに運び、彼女はそのまますうっと滑るように部屋を出ていった。
その背中を目で追いかけながら、「近ぇよ」とルフィの肩を押して離れた。
ルフィはすねたように唇を曲げている。

「んだよ、つまんねぇな」
「仕事もあるし、近場にするつもりだから」
「じゃあ引っ越す必要ねーじゃん。なんで出てくんだよ」

なんでだろう。ナミさんと気まずくなったから。誰かに説明する言葉を探すと、とてもチープな理由に聞こえる。

ああ、そっか。ルフィが呟いた。

「だからナミ、機嫌わりーのか」

ルフィがぶちっと引きちぎった肉の切れ端が、テーブルに飛んだ。すかさずルフィがつまんで口に運ぶ。

「──おれが出てくから?」
「そうじゃねーの?」

おれの皿の肉まで食い尽くしていくルフィの頬が上下するのを、ぼんやりと眺めた。
ナミさんがおれを引き止めるわけがない。
わけがないのに、今日、彼女がおれの料理を食べたのは、などと考えても詮無いことが、ぐるぐると頭を巡った。

その日の夜、着信を知らせたスマホの画面を見て一秒ほど動きが止まった。
一、二年ぶりではきかないだろう。実家からだ。

「一度帰ってこい」

しわがれた、低い老人の声が有無を言わさぬ調子で言う。
おれが黙っていると、返事も聞かずに電話は切れた。数年ぶりの会話だというのに、情緒のかけらもない。
だけど、おれは行くのだろう。
カルネがなにか言ったのだろうか。休暇を取っていることをわざわざ咎めるために、家まで呼んだのか。
不可解なもやつきが胸に残ったまま、おれはベッドに倒れ込んで眠った。

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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一声いただければ喜んで遊びに行きます。

足りん
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管理人:こまつな
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